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0092.見えない敵
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黒い毛むくじゃらは巨体なので、健達はすぐにその姿を見つけることができた。遠くの円柱の上で追っかけっこをしている。黒い毛むくじゃらは、その巨体に見合わず、かなり俊敏なのだが、なかなか相手を捕まえられないようだ。
ただ、相手の姿は見えない。見えない相手に抱きかかえられた銀髪の女の姿だけが見えるのだ。冷静に考えてみると、銀髪の女を抱えながら円柱を次々と移動して俊敏な巨体から逃げ回っているのだから、とんでもないことをしている。
「ほえー、二人とも高い柱の上でヒラリヒラリとすごいね。」
健は、火の精の言葉を聞いてハッとした。二人か。確かにティアラと父ちゃんの二人しか見えていないな。待てよ。健は何がまた閃いた。見えているのが二人ってことは、ひょっとするとひょっとするぞ。
健は、先程身に付けたばかりの技術を使うことにした。銀髪の女の上だけに超感覚を集中する。
「見えた。やはり、そうだ。」
健は、魔法の短剣を握り締めて光の刃をゆっくりと伸ばす。今回はタイミングが重要だ。銀髪の女と黒い毛むくじゃらの距離を見極めないといけない。追いかけっこをしているうちに、追う方の黒い毛むくじゃらが銀髪の女の下になった。
「今だ。」
健は、魔法の短剣から伸ばした光の刃で銀髪の女の上の空中を薙ぎ払った。すると、不思議なことに見えない何者かに抱きかかえられていたはずの銀髪の女が真下に落下し始める。下にいた黒い毛むくじゃらは、銀髪の女を両手で受け止めた。
「あれ、どういうこと。」
火の精は目の前で何が起こったのか理解できていない様子だ。
「ティアラは見えない糸で操られていたんだよ。だから、相手は見えない敵じゃなくて、あそこにいるはずだ。」
健は天井を指差した。部屋の天井はとても高く、薄暗いので上がどうなっているのか分からない。だが、健は敵が天井に隠れていることを確信していた。魔法の短剣を握り締めての光の刃を天井まで伸ばすと敵の姿が光の中に浮き上がる。その正体は、天井に巣をはりめぐらせた巨大なクモであった。
健が魔法の短剣の光の刃で斬りつけると、巨大なクモは必死に避けようとするが、意外に動きは鈍かった。本体の動きが鈍いからこそ、天井に隠れて上から糸で相手を襲っているのだろうか。健は、魔法の短剣で難なくクモを切り刻んで倒すことができた。
「うひゃっ。何か落ちてきたよ。」
火の精が走って逃げ回る。切り刻まれたクモの体から落ちてきた液体だった。液体の落ちた床は溶けて穴が空いている。
「何か酸のようなヤバそうな液体だ。早くこの部屋から出よう。」
健達が天井からの液体を避けながら黒い毛むくじゃらのところに行くと、銀髪の女は意識を取り戻していた。
ただ、相手の姿は見えない。見えない相手に抱きかかえられた銀髪の女の姿だけが見えるのだ。冷静に考えてみると、銀髪の女を抱えながら円柱を次々と移動して俊敏な巨体から逃げ回っているのだから、とんでもないことをしている。
「ほえー、二人とも高い柱の上でヒラリヒラリとすごいね。」
健は、火の精の言葉を聞いてハッとした。二人か。確かにティアラと父ちゃんの二人しか見えていないな。待てよ。健は何がまた閃いた。見えているのが二人ってことは、ひょっとするとひょっとするぞ。
健は、先程身に付けたばかりの技術を使うことにした。銀髪の女の上だけに超感覚を集中する。
「見えた。やはり、そうだ。」
健は、魔法の短剣を握り締めて光の刃をゆっくりと伸ばす。今回はタイミングが重要だ。銀髪の女と黒い毛むくじゃらの距離を見極めないといけない。追いかけっこをしているうちに、追う方の黒い毛むくじゃらが銀髪の女の下になった。
「今だ。」
健は、魔法の短剣から伸ばした光の刃で銀髪の女の上の空中を薙ぎ払った。すると、不思議なことに見えない何者かに抱きかかえられていたはずの銀髪の女が真下に落下し始める。下にいた黒い毛むくじゃらは、銀髪の女を両手で受け止めた。
「あれ、どういうこと。」
火の精は目の前で何が起こったのか理解できていない様子だ。
「ティアラは見えない糸で操られていたんだよ。だから、相手は見えない敵じゃなくて、あそこにいるはずだ。」
健は天井を指差した。部屋の天井はとても高く、薄暗いので上がどうなっているのか分からない。だが、健は敵が天井に隠れていることを確信していた。魔法の短剣を握り締めての光の刃を天井まで伸ばすと敵の姿が光の中に浮き上がる。その正体は、天井に巣をはりめぐらせた巨大なクモであった。
健が魔法の短剣の光の刃で斬りつけると、巨大なクモは必死に避けようとするが、意外に動きは鈍かった。本体の動きが鈍いからこそ、天井に隠れて上から糸で相手を襲っているのだろうか。健は、魔法の短剣で難なくクモを切り刻んで倒すことができた。
「うひゃっ。何か落ちてきたよ。」
火の精が走って逃げ回る。切り刻まれたクモの体から落ちてきた液体だった。液体の落ちた床は溶けて穴が空いている。
「何か酸のようなヤバそうな液体だ。早くこの部屋から出よう。」
健達が天井からの液体を避けながら黒い毛むくじゃらのところに行くと、銀髪の女は意識を取り戻していた。
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