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0091.大蛇の最期

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 周りにある太い円柱は相当に頑丈にできているらしく、黒い毛むくじゃらが飛び乗ってもびくともしなかった。健は、思考を切り替えた。ティアラをさらったのが大蛇か他の敵かは分からないが、ティアラの救出は父ちゃんに任せよう。今、俺がやるべきことは、あの大蛇を始末することだ。
「うひょう。また、あそこにいるよ。」
 火の精が指差した先には、先程と同様に大蛇の横腹が見え、恐ろしく高速で目の前を横切っている。健が魔法の短剣でぶった斬ろうとしたが、またしても間に合わない。高速移動の音があちこちから聞こえる。
 健は、深く深呼吸をすると目を瞑った。超感覚に頼り過ぎてすっかり忘れていたが、健には音で周囲を把握する能力があるのだ。耳に入ってくるありとあらゆる周囲の音に集中する。そして高速移動する大蛇の音から、大蛇がとてつもなく長いことが分かった。健達の周囲を変則的にグルグル周りながら、隙を伺っているようだ。
 ついでに、健達から離れた場所で恐らくティアラを連れた何者かと、黒い毛むくじゃらが追っかけっこをしているのも分かった。どうやら、大蛇と見えない敵は別の敵のようだ。
 健が目を瞑って集中し始めたことを大蛇も感じとったのか、その動きに変化が出る。どうやら攻撃体制に移ったのか、健達の周囲を回る半径をだんだんと狭めてくる。健は、慌てずに大蛇の頭の位置を探した。何とか大蛇の頭の位置をみつけたが、変則的な動きをしているので捉え続けるのが一苦労だ。
 だが、ここまで次々と戦いの経験を積んできた健には作戦があった。音を頼りに大蛇の頭の位置を把握した瞬間に超感覚を使って大蛇の頭の位置だけを追ってみたのだ。結果は大成功だった。音の能力でサポートした状態で大蛇の頭だけという限定的な使い方なら超感覚は使えるようだった。
 健は、魔法の短剣を握り締めてゆっくりとふりかぶると、光の刃を伸ばした。そして、あちこち移動する大蛇の頭の位置が健の正面にきたタイミングで、健は間髪入れずに円柱のオブジェごと大蛇の頭を一刀両断した。頭を切断された大蛇の体は周囲で激しくのたたうち回って円柱のオブジェを揺らした。白い大蛇は、黒い毛むくじゃらですら、揺らすことのできないオブジェを揺らす怪力を持っていたのだ。大蛇はしばらくのたうち回っていたが、やがて動かなくなった。
「やったな、健。」
「ああ、奴が本領を発揮する前に倒せてよかった。すぐに襲いかかってきていたら危なかったかもしれない。」
 白い大蛇を倒した健達は、ティアラ達がどうなっているか部屋の中を探すことにした。
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