立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0087.永久回廊

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 健達が次の部屋に進むと、今度は少し大きめの四角い部屋で扉が10もある。しかもすべて銀色の扉である。銀髪の女も少し戸惑っているようだ。
「うーん、私がいた時はこんな部屋を見た記憶がないわ。」
「扉の数が多いな。ネックレスの宝石の光はどうなってる。」
「駄目よ。光は四方に散らばってしまって、どっちに進めばいいか分からないわ。」
「そうか。それじゃあ、しょうがないな。とりあえず、一つを適当に選んで進んでみるか。」
 健達が真正面の扉を開けると、意外な光景が目の前に現れた。
「どういうことだ。」
「こりゃあ、参っちゃうね。」
 次に入った部屋も、今出てきた部屋とまったく同じ造りの部屋なのだ。同じ大きさの四角い部屋で、扉の数も10である。
「これは偶然なのか。こんなに分岐があったら正しく進むのが大変だぞ。さっきと同じように正面の扉から出てみよう。」
「分かったわ。」
 だが、次の部屋も前の部屋とまったく同じ部屋であった。
「どうなってるんだ。何かが明らかにおかしいな。」
 その次も正面の扉を選んだが、同じ部屋である。健達は、正面以外の扉もすべて開けてみたが、やはり同じ部屋である。
「完全におかしい。隣同士の扉に続く部屋がこんなに大きかったら互いに重なり合うはずだ。」
「確かに変ね。」
 不思議なことに隣同士の扉を開けて、それぞれ次の部屋の中を覗き込むと、扉から見る限り同じ大きさの部屋になっているのだ。物理的には明らかに互いの部屋が重なる大きさだから何かがおかしいのは確かだ。
「何か魔法がかけられているのかもしれない。危険だが、一旦、アイススライムがいた部屋まで戻ってみよう。」
 幸いにして、これまで実際に進んで来たのは正面の扉だけなので戻るのは簡単である。健達は、来た道をそのまま引き返した。だが、来た経路をそのまま戻って3回目の扉を開いても、そこには同じ部屋が続いていた。
「おかしいな。数え間違いか。」
「いえ、合っているはずよ。」
 健達は、念の為に次の扉も開けてみたが、やはり同じ部屋になっている。
「くそっ、完全に閉じ込められたな。これも罠なのか。」
 そうこうしているうちに、種火にする為に持ってきた人形の残骸もほぼ燃え尽きてしまった。苛立つ健は、黒焦げになった人形を力任せに地面に叩きつけた。
「もう一度聞くけど、ティアラは、こういう仕組みについての記憶はないのかい。」
「ええ、私がいた時には多分なかったと思うわ。だから後からできたのかもしれないわ。」
「そうか。そうすると、やはり俺達を狙った罠なのかもしれないな。」
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