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0086.アイススライムの逃亡

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 火の精は、早速、人形に火をつけて燃やし始めた。人形は燃えやすい素材でできているのか、いい感じに燃え上がる。
「最高の種火ができたよ。」
「よし、アイツに向かってブチかませ。」
「オッケー、任せとけ。」
 アイススライムは既に部屋の大部分に広がっている。火の精はアイススライムに向かって大きな炎の玉を乱発した。超高熱の炎の玉は、アイススライムをぶち抜いた後も壁にぶつかって床に転がり、床に広がるアイススライムの体を溶かし続ける。
「グジュッ。」
 アイススライムの悲鳴なのか氷が溶ける音なのか、部屋のあちらこちらで気持ちの悪い音が響き渡る。
「めちゃくちゃいい感じだ。だが、跳ね返った炎が俺達のところに来ないようにうまくやってくれ。じゃないと、俺達が先にバーベキューになっちまう。」
「了解。それなら、こんな風にもできるよ。」
 火の精は目の前に巨大な炎の壁を作り出してアイススライムと健達を完全に分断した。それから、炎の壁を少しずつアイススライムの方に動かし始める。強烈な炎に触れたアイススライムは次々に溶けて蒸発していく。
「おお、すげえな。お前はいつも俺の予想の上をいくよ。」
「えっへん。どんなもんだい。それそれそれ。」
 火の精は、調子に乗ってどんどんアイススライムを退治していく。アイススライムは、半分以上、蒸発させられた後、動きに変化が出た。どうやら危機感を感じたのか最初に出てきたプールの穴から退散し始めたのである。それを察知した火の精が追い討ちをかける。
「逃がさないぞ。喰らえ。」
 今度は、逃げるアイススライムに炎の噴水をぶっかけている。アイススライムの蒸発によって、今や部屋の中は煙が立ち込めていて前が見えない状況である。煙の中からアイススライムを追いかけて行った火の精の声が聞こえた。
「ちっ、逃げられたか。」
「奴はいなくなったのか。」
「うん。あと少しで全部やっつけられたのに。少しだけ逃しちゃったよ。」
「いやいや、よくやってくれたよ。ほとんど退治したし、大活躍だ。」
「そうでしょ、そうでしょ。もっと褒めて。えっへん。」
「この後もお前の力が必要だ。頼りにしてるぞ。」
「えっへん、えっへん。」
「人形はまだしばらく燃えていそうだな。種火に使えそうだし、持って行けそうなら持って行こう。」
 しばらくすると、部屋中の炎と煙が収まってきた。健達は、最初に出ようとした銀の扉に向かった。銀髪の女がドアノブを回すと予想通りに銀の扉は開いた。
「本来は、アイススライムが相手を倒した後に扉が開くんだろうな。今回は逆になった訳だ。ただ、ぐずぐずしていると、また閉じ込められるかもしれないから先を急ごう。」
「そうね。先に進みましょう。」
「行こう、行こう。」
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