立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0084.アイススライム

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 本当にただの直感なのだが、健はもう出発しないといけないという予感がした。
「みんな。もう準備して出発しよう。ティアラ、道案内を頼む。」
「分かったわ。私はもう準備できてるわ。」
「オイラもオッケーさ。」
「いいな。よし、出発しよう。」
 そうそう、これは後の戦いで使うから絶対に忘れてはいけないんだった。健は、黒い仮面の男が残して行った人形の残骸2つを拾いあげて肩にかついだ。
 一晩過ごした部屋を出ると、黒い毛むくじゃらもちゃんと健達についてくる。何とか意思疎通ができたらいいんだがなと健は心の中で思った。正直言って健達の中では一番の戦力なので役立ってもらいたいのだが、ティアラのいる前であまり余計なことは言えない。そんなことを考えていると銀髪の女が口を開いた。
「あまりはっきりとは覚えていないのだけれども、記憶の中でうっすらと覚えている道をそのまま進んでいいかしら。」
「ああ、最短ルートで頼む。何か早く行かないといけない気がしてならないんだ。」
「それなら、こっちね。」
 銀髪の女は、入った部屋の四方にある扉の中から銀色の扉を選んで開けた。たまたまか分からないが、他の扉の色は黒である。健達が来た時には、銀色の扉は開けていないはずなので初めて入る部屋である。銀色の扉の中は前の部屋よりは少し広い。健は超感覚で警戒しているが、どうやら敵はいなさそうだ。部屋の中には前と同じように四方に扉がある。
「多分、こっちだわ。」
 銀髪の女は、他の3つの黒い扉ではなく、再び銀の扉を選んだ。銀の扉を開けると、また少し大きな部屋になる。健は超感覚で部屋の中に敵がいないことを確認できたが、同時に重要なことに気付いた。超感覚が部屋の中にしか効かなくなっているのだ。恐らく、部屋の壁と扉に強力な魔法か何かがかけられているに違いない。
「やはり、一筋縄ではいかないな。」
 健が呟くと、火の精は事情が分からず、変な顔をしている。今回も、銀髪の女は、迷いなく銀の扉を選んだ。銀の扉を開けて中に入ると、今度はとても広い部屋に出た。円形のホールのような部屋だ。部屋の中央には噴水用なのか円形状のプールのような設備がある。だか、今は何も入っていない。
「何か来るぞ。気をつけろ。」
 健は、超感覚で異変を感じとって叫んだ。円形状のプール全体に異変の気配が広がっている。どういうことだ。
「うわー、何か出てきたよ。」
 火の精が円形状のプールの内側に等間隔で開けられている穴を指差した。沢山あるその穴の一つ一つから、水なのか氷なのかよく分からない白銀色の液体様の何かが出てきている。それを見た瞬間、銀髪の女も声をあげた。
「触っちゃ駄目。アイススライムよ。」
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