立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0081.特別な商品

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「率直に言ってもいいか。」
「はい。何でしょう。」
「俺達は、今日、この世界の主を倒すつもりだ。その為の商品を売って欲しい。」
「おや、そういうことなのですか。」
 ウサギは眼鏡の位置を直しながら大袈裟に驚いたフリをするが、明らかにすべてはお見通しのようだ。
「勿論、私どもは、お売りする商品がどのように使われるかについては一切関与致しません。従って、商品をお買い上げされた方が、その商品をどのような目的に使うかはまったくの自由です。その大前提をご理解していただいた上でご質問させていただきます。お客様が、今欲していらっしゃるのは戦いに役立つ商品と考えてよろしいでしょうか。そういうことでしたら、よい商品は色々とございます。」
 さすがに商売人だけあって、一方に肩入れしない立場を明確にしてくる。だが、この世界の主を倒すのに役立つ商品が手に入るのであれば、この際何でもいい。
「ああ。そういうことで構わない。いい商品を売ってくれ。」
「かしこまりました。少し確認させて下さい。」
 そう言うと、紫色のウサギは黒い毛むくじゃらを値踏みするかのように上から下まで見た。次に火の精を観察し、黒い仮面の男が落としていった真っ二つの人形を横目で確認する。それから健の腰の鞘に収まっている魔法の短剣をジロっと見た。最後に黒い毛むくじゃらの後ろに隠れている銀髪の女に視線をやった。健は、目の前のウサギの眼力に舌を巻いた。今の一連の視線の流れで、健達の全戦力はほぼ完璧に把握されたのは間違いない。
「この氷の城の中は、確かに色々と危険なようですね。その点も踏まえまして、今回、お勧めする商品はこちらになります。」
 ウサギはまるで手品師のように、何もない空中から赤い髪飾りを掴みとって健達の目の前でヒラヒラさせて見せた。髪飾りの立体的な飾りは、赤い花の形状をしており、とても可愛らしい感じがする。
「こちらの商品は、ご覧の通り、髪飾りとなります。そして、そこのお嬢さん、貴女だけが使いこなせる特別な商品となります。」
 ウサギは、まるでパーティーの主賓を紹介するかのように、お辞儀をしながら左腕だけをゆっくりと動かして銀髪の女の方を示す。突然の指名にビックリした銀髪の女は、驚いて声を出す。
「え、私。私には何もできないわよ。」
 銀髪の女の否定を聞き流し、ウサギは健の方を見ながらニッコリと微笑んで言葉を続けた。
「商品の性質上、詳しい効果は説明できませんが、必要な場面になったら、この髪飾りは必ず貴方達の助けになるでしょう。」
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