立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0069.小屋の住人

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 健達は転ばないように雪山の元噴火口の中にある小屋まで降りて行った。小屋は最深部ではなく、浅いところにあり、すぐに辿り着けた。近くで見ると、丸太でできた小屋は思ったより小さい。健は、超感覚で周囲の様子を探りながら小屋のドアを開けた。ドアに鍵はかかっていない。健達は、小屋の中に入った。
「やはり、誰もいないみたいだな。」
 小屋の中は掃除されており、雰囲気としては、よくある登山者用の避難小屋といえるだろうか。長らく放置された感じはしない。とても簡素であり、家具もベッド以外には、テーブルと椅子、それに本棚がある程度だ。奥のテーブルに明らかに誰かが住んでいる形跡が見つかった。
「食事の食べ残しがあるな。誰かが住んでるのは間違いないな。」
「本当ね。今さっき食べたみたいだわ。」
「こんなところに誰が住んでいるんだろうな。」
 そう話していると、健は超感覚で誰かが小屋に近付いて来るのを察知した。
「おい。誰かが小屋に来るぞ。」
「また敵か。」
「いや、今のところ殺気は感じないな。ただ、警戒はしといてくれ。あと、俺らが勝手に小屋に入っているのを見たら、相手がどういう行動をとるのか予想できんしな。」
 健達が小屋のドアの方を見ていると、誰かが雪を踏みしめて近付いてくる足音が聞こえてきた。そして、ドアノブに手をかけてドアを開けた。中に入って来たのは、二足歩行する緑色のウサギだった。丸眼鏡をかけており、健達の姿を認めると、眼鏡の下からジロジロと見てきた。ウサギの割に堂々としており、健達に驚いている感じはない。だが、不思議と敵意も感じない。
「何の用かね。残念ながら私は何も持っていないぞ。」
 どうやら健達のことを強盗だと思っているようだ。健は、もはや相手がウサギだろうと気にしなくなっていた。
「えーと、説明させてくれ。実は、俺らは雪山を越えようとしていて頂上まで来たんだが、ちょうど小屋が見えたんで少し休憩させてもらおうと寄ったんだ。」
「なるほど。ここに訪問者が来るのは珍しいからな。何もおもてなしはできんが、休んでいくとよい。」
「すまんね。そうさせてもらおう。」
「有難う。助かるわ。」
「ところで、ひょっとして横にいる小さいのは火の精かね。」
「オイラのことかい。そうだよ。」
「おお、やはり、そうか。私がここに住んでるのは、かつて存在した自然の炎の研究が目的なんじゃ。伝説では、この山に火の精がいたと聞いていたが、まさか会えるとはのう。少し話を聞かせてもらってもよいかな。」
「勿論さ。オイラなら、いくらでも話すよ。」
 お喋りな火の精は、話相手ができたことに喜んで走り回った。ウサギは、火の精と話しながらペンを走らせて色々と記録している。その間、健達はベッドに腰掛けて少し休憩させてもらった。猛吹雪がないということだけでも、小屋の中は充分に快適だ。
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