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0066.雪山の侍

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 健達はそこから雪山の麓まではすんなり辿り着くことができた。
「他にも何か来るかと思っていたが、意外に平穏だったな。」
 残念ながら、健がそう言った直後にどこからか口笛が聞こえてくる。皆で顔を見合わせる。健は超感覚で周囲を警戒していたので、今までいなかった相手が突然現れたことが分かる。健が超感覚で相手の位置を把握するのとほぼ同時に銀髪の女が前方を指差した。
「あそこよ。」
 猛吹雪の中、白い着物を着た侍が岩に座って佇んでいる。網傘をかぶっているので顔は見えない。距離は20メートルばかりあるだろうか。侍の吹く口笛はどこか悲しげな感じがする。
「怪しい奴だな。やはり敵か。」
 健がそう言いながら魔法の短剣を握り締めると、侍はゆっくり立ち上がった。そして、口笛を吹きながらこちらに向かって歩き始める。健が魔法の短剣の光の刃を伸ばして離れた侍に斬りつけると、侍はヒラリとかわした。侍の動きは超感覚で追えるが、その動きはとても独特で不思議だ。何度も斬りつけるが、ヒラリヒラリとかわされる。そのうちに侍との距離がだんだん近くなってくる。
「なんか、まずい感じがするぞ。二人とも俺から離れてろ。」
 銀髪の女と火の精は、健に言われた通りに近くの木の陰に隠れた。健との距離が10メートルほどになると、侍は口笛をやめて、ゆっくりと刀を抜いた。だが、しかし、刀を抜いた後の動きは信じられないほど速かった。一気に健に走り寄って距離を詰めると、手に持つ刀で斬りつけてくる。健は超感覚を使って刀を避けながら、逆に侍に斬りつけていく。侍は再びヒラリとかわす。その後も二人の応酬は続くが、お互いに攻撃が入らず、空を斬る音だけが辺りに響き渡る。
 侍とやり合う中で健は確信した。間違いなく、こいつも超感覚を持っている。そうなると、あれしかない。健は膠着状態を打開する策を思いついた。しかし、相手も超感覚を持っているので、恐らく一度見せてしまうと次からは対応されてしまう。だから一回で決めなくてはならない。
 健は侍とやり合いながら、相手を誘導して少しずつ場所を移動して行く。最初は木が多少あって林のような場所にいたのが、ゆっくり移動した結果、今は木があまり生えていない場所で二人はやり合っている。目的の場所に移動し終えた健は、侍に向けて見えない緑の音を飛ばした。超感覚を持っていても俺の能力は食らうはず。確かに侍はほんの一瞬だけ動きが止まったかのように見えたが、二人の斬り合いは止まらない。
「おかしい。効いていないのか。」
 健がつい呟くと、侍の編笠の下から見える口もとがニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
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