立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0054.帰路の3人

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「次は野菜と果物だっけ。どこに行けばいいんだい。」
 健が聞くと、銀髪の女はすぐに歩き出しながら答えた。
「こっちよ。すぐ近くにいい場所があるの。」
 健は、火の精に降りかかる猛吹雪を処理してもらいながら後を追って行った。着いた場所には、白菜の一種と思われる見るからに美味しそうな野菜が自生している。
「すげえな。取り放題じゃん。こんなのが勝手に育ったんだ。」
「いえ、ここに育つようにユウが色々と手入れをしたのよ。魔法も色々と使っていたみたい。」
「うおー、聞けば聞くほどユウは凄過ぎるな。俺も早く会ってみたいよ。」
「そうなの。とても素敵な人だったわ。」
 銀髪の女はウットリとした表情を浮かべている。健達は、充分な量の野菜を採ってから、今度は、果物を採りに近くにある林に向かった。林の中では、りんごとイチゴを大量に採ることができた。
「よし、必要な食料は手に入れたし、そろそろ戻ろうか。」
 健達は満足して洞窟への帰路についた。帰りの道中でも火の精が次から次とユウの武勇伝を語ってくれるので、それを聞いていると猛吹雪も苦にならない。しかし、そんなに饒舌だった火の精がピタっと喋るのをやめた。
「ん。どうした。」
 健が頭上近くで猛吹雪が降りかかるのを防いでいてくれていた火の精の方を見上げると、何と火の精は凍っており、氷の中に閉じ込められている。そして、火の精はそのまま氷ごと雪の上に落下した。後ろから声がした。
「これで静かになったな。」
 健がすぐさま、後ろを振り返ると、浴衣のような水色の衣装を羽織った3人の男女が立っていた。1人は無表情で長身の男、もう1人は小柄だが筋肉に包まれた体格の良い男。残る1人は目つきの悪い女で、健達を睨みつけていた。小柄な男がニヤつきながら言葉を続ける。
「あんたと、ムーラ様は命が一つなんだぜ。ということは、あんたがどこにいるかは、すべてが筒抜けということさ。」
 健が銀髪の女を見ると、彼女は恐怖で少し震えている。健は、突如現れた3人が世界の主の仲間だと理解した。そうか、ティアラがこの世界の主の居場所が分かるということは、その逆も当然に成り立つということだな。健は、世界の主の側からの先制攻撃に頭が回らなかった自分に腹が立った。だが、今まで彼女は自由にされていたはずだ。何で突然こいつらが来たんだ。
「ムーラ様からあんたの動きがおかしいと聞いて来てみたが、まさか今更、新しい仲間が増えているとはな。」
「シド、おしゃべりはその辺にしときな。とっとと始末するよ。」
 健はすぐに身構えるが、猛吹雪で3人をまともに見ることすらできない。
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