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0038.エンダンの乱入
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健が息を吹きかけた葉っぱが空高く舞い上がって行くのを皆が見つめている中、いきなり何者かが地上を何回か飛び跳ねて勢いをつけてから葉っぱを追って空中高く飛び上がり、手にした刀で葉っぱをぶった斬った。
そのまま見事に着地したのは、血のように真紅の陽炎であった。真紅の陽炎は威圧感を隠さずに健の方に歩み寄って来る。健の周りで盛り上がっていた陽炎達も突然の乱入者の登場で静かになった。
「お前が会話できるベイルか。」
真紅の陽炎の声には敵意がこもっている。
「ああ、そう言われているみたいだな。」
答えないと事態が悪化すると考えた健は、少し身構えながら返事をした。
「災いを招く貴様が、なぜここに来た。この共食い野郎が。」
もはや真紅の陽炎の言葉は質問ではなく、激昂を示す咆哮に近い。健は、共食いという言葉が引っかかった。
「それは俺にも分からない。ところで、共食いってのはどういう意味だ。」
健の言葉が終わらないうちに真紅の陽炎が素早く動いて健に斬りかかった。健が魔法の短剣を抜いて応戦しようとした時、健と真紅の陽炎の間に陽炎のリーダーが割って入った。
「やめろ、エンダン。長老の命だぞ。」
陽炎のリーダーもいつの間にか両刃の剣を抜いており、健に斬りかかった真紅の陽炎の刀を見事に受け止めている。
「なぜこんな奴を生かしておく。災いを受け入れるのか。」
「長老の判断だ。」
「チッ。長老が何と言おうが俺は絶対に反対だ。」
真紅の陽炎は、刀を鞘に戻すと素早い動きで飛び跳ねながらその場から去って行った。
一方、陽炎のリーダーは、これ以上は宴を続けられないと判断したのか周りに宴の終わりを告げて回る。
「宴は解散だ。片付けろ。」
そして健にも声をかける。
「お前も、移動だ。」
健は広場から連れ出された。移動先は、どうやら陽炎のリーダーの直属の部下達が守る詰所のような場所であった。長老の建物同様に入口に警備がいる。建物自体はそこまで大きくはない。
「あの様子だと、またあいつが襲って来る可能性がある。とりあえず、部下に警護させるからここで大人しくしてろ。」
詰所の中に入って案内された部屋には、粗末ながらベッドがあった。部屋の外には陽炎のリーダーの部下2人が警護してくれている。先程の騒動で少し酔いが覚めたとはいえ、やはり酒が入ったせいか、健は少し眠くなってきたのでベッドで寝かせてもらうことにした。
健が夢の中で熟睡している頃、陽炎の本拠地では異変が起こり始めていた。実は、陽炎達に捕まった大草原の民達、つまりベイルは本拠地の端にある牢屋に閉じ込められているのだが、そのうちの1人が獣のように唸り始めたのだ。すると、それに呼応するかのように次々と他のベイルも唸り始めたのである。
そのまま見事に着地したのは、血のように真紅の陽炎であった。真紅の陽炎は威圧感を隠さずに健の方に歩み寄って来る。健の周りで盛り上がっていた陽炎達も突然の乱入者の登場で静かになった。
「お前が会話できるベイルか。」
真紅の陽炎の声には敵意がこもっている。
「ああ、そう言われているみたいだな。」
答えないと事態が悪化すると考えた健は、少し身構えながら返事をした。
「災いを招く貴様が、なぜここに来た。この共食い野郎が。」
もはや真紅の陽炎の言葉は質問ではなく、激昂を示す咆哮に近い。健は、共食いという言葉が引っかかった。
「それは俺にも分からない。ところで、共食いってのはどういう意味だ。」
健の言葉が終わらないうちに真紅の陽炎が素早く動いて健に斬りかかった。健が魔法の短剣を抜いて応戦しようとした時、健と真紅の陽炎の間に陽炎のリーダーが割って入った。
「やめろ、エンダン。長老の命だぞ。」
陽炎のリーダーもいつの間にか両刃の剣を抜いており、健に斬りかかった真紅の陽炎の刀を見事に受け止めている。
「なぜこんな奴を生かしておく。災いを受け入れるのか。」
「長老の判断だ。」
「チッ。長老が何と言おうが俺は絶対に反対だ。」
真紅の陽炎は、刀を鞘に戻すと素早い動きで飛び跳ねながらその場から去って行った。
一方、陽炎のリーダーは、これ以上は宴を続けられないと判断したのか周りに宴の終わりを告げて回る。
「宴は解散だ。片付けろ。」
そして健にも声をかける。
「お前も、移動だ。」
健は広場から連れ出された。移動先は、どうやら陽炎のリーダーの直属の部下達が守る詰所のような場所であった。長老の建物同様に入口に警備がいる。建物自体はそこまで大きくはない。
「あの様子だと、またあいつが襲って来る可能性がある。とりあえず、部下に警護させるからここで大人しくしてろ。」
詰所の中に入って案内された部屋には、粗末ながらベッドがあった。部屋の外には陽炎のリーダーの部下2人が警護してくれている。先程の騒動で少し酔いが覚めたとはいえ、やはり酒が入ったせいか、健は少し眠くなってきたのでベッドで寝かせてもらうことにした。
健が夢の中で熟睡している頃、陽炎の本拠地では異変が起こり始めていた。実は、陽炎達に捕まった大草原の民達、つまりベイルは本拠地の端にある牢屋に閉じ込められているのだが、そのうちの1人が獣のように唸り始めたのだ。すると、それに呼応するかのように次々と他のベイルも唸り始めたのである。
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