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0025.本の中の何か
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その悪魔か何かは全身が真っ黒であり、背中にコウモリのような羽を生やしている。頭には山羊の角があり、目は血のように赤く、口は耳元まで裂けている。見ているだけで背筋が寒くなる不気味な絵だが、なぜか見続けてしまう。健は、頭の中では見てはいけない、見てはいけないと自分に言い聞かせているのだが、どうしても視線を外せない。気付くと顔も体も動かせなくなっていた。
現実には5分程度だったが、健は永久に本を見ている感覚だった。そして健は恐ろしいことに気付いた。横を見ていた絵の中のそいつの赤い目がとてもゆっくりと動いている。絶対に気のせいではない。赤く輝く狂気の目は、とてもゆっくりだが着実に動いている。そして、しまいには健の目と合った。これはマジでヤバイと思った瞬間、健の手から本が叩き落とされた。
「危なかったわね。」
本を叩き落としたのはエルフの女だった。叩き落とされた本からは、この世のものとは思えぬ怒った叫び声が響きわたり、次の瞬間、部屋全体が激しく揺れた。大地震で部屋の中の大きな本棚が互いにぶつかり、音を立てて軋む。結構な数の本も本棚から落ちてきた。だが、幸いなことに揺れはしばらくして収まった。
「心配しないで、大丈夫よ。大量の魔法の本があると、たまに紛れが発生してこういう事が起こるの。」
エルフの女はニッコリと笑ってしゃがみながらその本を拾った。エルフの女がしゃがみこんだ際に、その胸の谷間が露わになり、普段の健なら大喜びしているところだが、今はそれどころではなかった。まだ嫌な汗が出ている。
「酷い顔をしているわね。今、気持ちが落ち着く香草の紅茶を入れてくるわ。」
短い返事すら返せない健を見たエルフの女はすぐに温かい紅茶を持って来てくれた。その紅茶は効果てきめんだった。体がポカポカして何か分からないが気持ちが落ち着く。
「ふー、生き返ったよ。本当に酷い目にあった。」
健はもう部屋にある本が全て怖くなり、目の片隅に入るのも嫌だった。
「あれ、そう言えばチビ助はどこだ。」
「ここにいるみたいよ。」
エルフの女が崩れ落ちた本の山を掻き分けると、その中から爆睡している龍が出てきた。
「うお。寝てるってマジか。さすが龍なだけはあるな。」
健はもはや本のある部屋にいる気分ではなくなったので、雑貨屋の店の方で龍が起きるのを待たせてもらうことにした。やはり雑貨屋の品を眺めていると楽しめる。しかし、きちんと反省することは忘れなかった。あんな形で襲われるのは予想外だったとはいえ、手も足も出なかった。異世界に来てから今まで何とかやってこれた自負と、魔法の短剣も手に入れて大きくなった自信が早くも崩れ去った。
現実には5分程度だったが、健は永久に本を見ている感覚だった。そして健は恐ろしいことに気付いた。横を見ていた絵の中のそいつの赤い目がとてもゆっくりと動いている。絶対に気のせいではない。赤く輝く狂気の目は、とてもゆっくりだが着実に動いている。そして、しまいには健の目と合った。これはマジでヤバイと思った瞬間、健の手から本が叩き落とされた。
「危なかったわね。」
本を叩き落としたのはエルフの女だった。叩き落とされた本からは、この世のものとは思えぬ怒った叫び声が響きわたり、次の瞬間、部屋全体が激しく揺れた。大地震で部屋の中の大きな本棚が互いにぶつかり、音を立てて軋む。結構な数の本も本棚から落ちてきた。だが、幸いなことに揺れはしばらくして収まった。
「心配しないで、大丈夫よ。大量の魔法の本があると、たまに紛れが発生してこういう事が起こるの。」
エルフの女はニッコリと笑ってしゃがみながらその本を拾った。エルフの女がしゃがみこんだ際に、その胸の谷間が露わになり、普段の健なら大喜びしているところだが、今はそれどころではなかった。まだ嫌な汗が出ている。
「酷い顔をしているわね。今、気持ちが落ち着く香草の紅茶を入れてくるわ。」
短い返事すら返せない健を見たエルフの女はすぐに温かい紅茶を持って来てくれた。その紅茶は効果てきめんだった。体がポカポカして何か分からないが気持ちが落ち着く。
「ふー、生き返ったよ。本当に酷い目にあった。」
健はもう部屋にある本が全て怖くなり、目の片隅に入るのも嫌だった。
「あれ、そう言えばチビ助はどこだ。」
「ここにいるみたいよ。」
エルフの女が崩れ落ちた本の山を掻き分けると、その中から爆睡している龍が出てきた。
「うお。寝てるってマジか。さすが龍なだけはあるな。」
健はもはや本のある部屋にいる気分ではなくなったので、雑貨屋の店の方で龍が起きるのを待たせてもらうことにした。やはり雑貨屋の品を眺めていると楽しめる。しかし、きちんと反省することは忘れなかった。あんな形で襲われるのは予想外だったとはいえ、手も足も出なかった。異世界に来てから今まで何とかやってこれた自負と、魔法の短剣も手に入れて大きくなった自信が早くも崩れ去った。
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