立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0023.魔法使いの書斎

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 健達が入った部屋は四方が本棚に囲まれており、ありとあらゆる本が収まっていた。それだけではなく、大量の本があちらこちらで平積みにされている。部屋の真ん中には四角いテーブルとイスが置いてあり、その上にも本が積んであるが、それ以外にも怪しげな物が色々置かれていた。手の平ほどの透明な水晶の玉、何か小動物の頭蓋骨、トランプみたいなカード、白い羽が美しい羽ペン等、好奇心を刺激する物が盛り沢山だ。
 小屋の入口入ってすぐの雑貨屋の商品もバラエティに富んでいて楽しいのだが、この部屋はまるでマジシャンが出て来そうな雰囲気すらあって別格だ。
 健がキョロキョロしていると、エルフの女がテーブルの横のイスに座るよう促してきた。言われるままに座るとエルフの女はいかにも魔法が書いてありそうな古くて厚い本をテーブルの上に置いた。そして何かを呟き始めた。明らかに呪文である。
「うわっ、本が光った。」
 突然の出来事に健がビックリしていると、エルフの女がニッコリと笑った。
「どうやら成功ね。」
「あれ。言葉が分かるぞ。」
「そうよ。こう見えても私は魔法使いなのよ。あなたに言語の魔法をかけたの。これで、誰とでも話せるわ。」
 健の中では魔法使いは髭の長いお爺さんだったので服の前から色っぽい胸元の見える美女が魔法使いと言われてもピンとこなかった。だが、実際に会話ができるから本物なのだろう。
「何か妖精の頭の中での会話に似てるな。」
「あら、よくご存知ね。この魔法は妖精の力を研究して古代の魔法を改良して私が創り出したのよ。」
「おお、すげえ。超便利になった。サンキュー。」
「いえいえ。気にしなくていいのよ。この後に研究に協力してもらう為には、会話ができないと難しいのよ。」
「なるほど。そう言えば、研究を手伝って約束だったね。何をすればいいんだ。」
「色々と協力してもらいたいのだけれども、まずは、例の短剣ね。ちょっと鞘から出してもらえるかしら。」
「了解。」
 健が鞘から魔法の短剣を抜くと、短剣の刃はまるで目覚めていくかのように徐々に輝き始めた。エルフの女は、短剣を水晶を通して眺めて観察している。
「目に見える刃とは、別の刃があるわね。剣の先が伸びるイメージをしながら短剣を握りしめてみて。」
「こうか。」
 健は言われた通りに、剣の先が伸びる姿を想像しながら短剣の柄を握りしめた。だが、何も起こらない。
「目を瞑ってみるといいかもしれないわ。」
「よし、やってみる。」
 健は目を瞑って長い剣をイメージした。目を瞑ってやると、爺ちゃんと能力の修行をした頃の感覚を少し思い出す。すると、魔法の短剣の刃全体に光のオーラがまとわり、ゆっくりと伸び始めた。
「いい感じだわ。目を瞑ってそのまま続けて。」
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