26 / 32
第26話 ギリギリの攻防
しおりを挟む
「ああぁっ!まひろちゃん!!」
“まひろちゃんがやられた?”
“なんだあの攻撃!?”
“ああああああああ”
“うそだよな?”
水無瀬さんの悲鳴に続いて、絶叫のような視聴者のコメントが流れていく。
「くっ、このおっ!」
意識外からの攻撃に怯んだまひろさんは槍から右手を離してしまう。それでもそのまま、左手だけで槍をグレーターデーモンに向けて捻じ込んだ。
槍の切っ先がグレーターデーモンの脇腹に突き刺さり、鮮血が飛び散る。グレーターデーモンは唸り声を上げながら、手に持った黒い槍の石突でまひろさんの胴体を殴りつけた。
「がはっ!」
まひろさんの身体が後ろへと吹っ飛ぶ。地面に叩きつけられながらゴロゴロと転がり、勢いが止まったところで彼女は動かなくなってしまった。
グレーターデーモンは傷口を庇ってはいるが、そこまで深手ではないみたい。すぐに態勢を立て直して、水無瀬さんたちの方に足を向けた。
ダメだ。まひろさんも心配だけど、接近戦に長けたグレーターデーモンを水無瀬さんたちに近づけさせるわけにはいかない。
「こっちを見てっ!」
私は『風精霊の加護』でグレーターデーモンの視界に飛び込んでいく。『束縛の雷撃』で牽制するが、グレーターデーモンはそれを難なく躱して翼を羽ばたかせた。
空中に飛び出したグレーターデーモンはあっという間に加速し、一直線にこちらへと迫ってくる。飛行速度もあちらの方が上だ。
漆黒の槍が瞬く間に眼前に突き出される。避けきれない!視線をグレーターデーモンの背後にずらして座標を指定。辛うじて地上に転移し、その一撃を回避する。
グレーターデーモンは一瞬こちらを見失った。けれど、すぐに私の姿を見つけると素早く旋回して、再び突撃してくる。
これではジリ貧だ。転移を見切られたらいつかは捉えられてしまう。そんなネガティブな考えが頭をよぎる。
「『追尾光閃』」
その時、荒木田さんの声と共に複数の光線がグレーターデーモンに襲い掛かった。『追尾光閃』は攻撃力が低いスキルだけど、追尾機能があるから敵としては無視するわけにもいかない。
攻撃を受けて一度上空へ飛び上がったグレーターデーモンは、私と荒木田さんのどちらをターゲットにするか迷っている。
これだ。この隙を狙うしかない。今は敵の近くに味方がいないから、あのスキルが使える。荒木田さんの援護を信じて、地上に誘導すればもう一度チャンスが来るはず。
『束縛の雷撃』を再度連射して、グレーターデーモンの注意をこちらに引き付ける。
狙い通り、グレーターデーモンは滑空して地上に降りてきた。大きく振り回した槍が遠心力を乗せて振り抜かれる。
『風精霊の加護』の最大出力で後ろに飛び退き、上体を逸らしてなんとか回避。さらに距離を詰めようとするグレーターデーモンに再び『追尾光閃』が直撃する。
その隙にできるだけ離れた地上の一角に座標を指定。転移したところで、両手を突き出しスキルを発動する。
「『時限爆炎弾頭』」
両手に黒くずっしりと重い球体が出現する。『時限爆炎弾頭』は簡単に言うと時限式の爆弾を生成するスキル。
敵を追尾したりはしないし、素早く撃ち出すことができるわけでもない。普通に使うと自爆リスクが高いだけの扱いにくいスキルだ。
ただ、武器生成系のスキルの中でも飛び切りの威力を誇り、なにより『瞬間移動』との相性が抜群に良い。起爆直前のタイミングで転移させれば回避は難しいし、気づかれても爆発の余波で相手はただではすまない。
グレーターデーモンは私を見失うと、すぐさま荒木田さんに視線を移した。槍の切っ先が荒木田さんの方を向く。すると瞬時に魔法陣が発生し、蒼い光が瞬くと稲妻が放出される。
速い。でも、荒木田さんの『亜空障壁』に阻まれて、雷撃はどこかへと逸れて行った。
ここだ!私はグレーターデーモンを見据える。
「『瞬間移動』!」
2つの爆弾が敵の死角に転移。音を立てて地面に落ちた。
グレーターデーモンが足元のそれに気づいた時、『時限爆炎弾頭』が起爆。爆音と共に眩い閃光が炸裂し、膨大なエネルギーが着弾点を中心に周囲の物体を飲み込んでいく。
凄まじい衝撃波と熱風が私たちのいる場所にまで吹きつける。その爆風の中からグレーターデーモンが翼を広げて飛び出してきた。そして、こちらを睨みつける。
あの爆発に巻き込まれても、まだ動けるなんて。でも、さすがに無傷ではないみたいだ。動きはかなりぎこちない。
私は『風精霊の加護』で飛び下がりながら、『束縛の雷撃』を放つ。それでも、まだグレーターデーモンには当たらない。
グレーターデーモンは低空を滑るようにジグザグと転進して接近してくる。相当な傷を負っているはずなのにそれを感じさせない俊敏さだ。ついに私の眼前に迫り、槍が突き出される。
その時、グレーターデーモンの後ろから別の影が飛び込んで来た。
「……これで、終わりっ!」
その影はまひろさんだった。彼女が握りしめた槍はグレーターデーモンの胸を背後から貫いていた。
“まひろちゃんがやられた?”
“なんだあの攻撃!?”
“ああああああああ”
“うそだよな?”
水無瀬さんの悲鳴に続いて、絶叫のような視聴者のコメントが流れていく。
「くっ、このおっ!」
意識外からの攻撃に怯んだまひろさんは槍から右手を離してしまう。それでもそのまま、左手だけで槍をグレーターデーモンに向けて捻じ込んだ。
槍の切っ先がグレーターデーモンの脇腹に突き刺さり、鮮血が飛び散る。グレーターデーモンは唸り声を上げながら、手に持った黒い槍の石突でまひろさんの胴体を殴りつけた。
「がはっ!」
まひろさんの身体が後ろへと吹っ飛ぶ。地面に叩きつけられながらゴロゴロと転がり、勢いが止まったところで彼女は動かなくなってしまった。
グレーターデーモンは傷口を庇ってはいるが、そこまで深手ではないみたい。すぐに態勢を立て直して、水無瀬さんたちの方に足を向けた。
ダメだ。まひろさんも心配だけど、接近戦に長けたグレーターデーモンを水無瀬さんたちに近づけさせるわけにはいかない。
「こっちを見てっ!」
私は『風精霊の加護』でグレーターデーモンの視界に飛び込んでいく。『束縛の雷撃』で牽制するが、グレーターデーモンはそれを難なく躱して翼を羽ばたかせた。
空中に飛び出したグレーターデーモンはあっという間に加速し、一直線にこちらへと迫ってくる。飛行速度もあちらの方が上だ。
漆黒の槍が瞬く間に眼前に突き出される。避けきれない!視線をグレーターデーモンの背後にずらして座標を指定。辛うじて地上に転移し、その一撃を回避する。
グレーターデーモンは一瞬こちらを見失った。けれど、すぐに私の姿を見つけると素早く旋回して、再び突撃してくる。
これではジリ貧だ。転移を見切られたらいつかは捉えられてしまう。そんなネガティブな考えが頭をよぎる。
「『追尾光閃』」
その時、荒木田さんの声と共に複数の光線がグレーターデーモンに襲い掛かった。『追尾光閃』は攻撃力が低いスキルだけど、追尾機能があるから敵としては無視するわけにもいかない。
攻撃を受けて一度上空へ飛び上がったグレーターデーモンは、私と荒木田さんのどちらをターゲットにするか迷っている。
これだ。この隙を狙うしかない。今は敵の近くに味方がいないから、あのスキルが使える。荒木田さんの援護を信じて、地上に誘導すればもう一度チャンスが来るはず。
『束縛の雷撃』を再度連射して、グレーターデーモンの注意をこちらに引き付ける。
狙い通り、グレーターデーモンは滑空して地上に降りてきた。大きく振り回した槍が遠心力を乗せて振り抜かれる。
『風精霊の加護』の最大出力で後ろに飛び退き、上体を逸らしてなんとか回避。さらに距離を詰めようとするグレーターデーモンに再び『追尾光閃』が直撃する。
その隙にできるだけ離れた地上の一角に座標を指定。転移したところで、両手を突き出しスキルを発動する。
「『時限爆炎弾頭』」
両手に黒くずっしりと重い球体が出現する。『時限爆炎弾頭』は簡単に言うと時限式の爆弾を生成するスキル。
敵を追尾したりはしないし、素早く撃ち出すことができるわけでもない。普通に使うと自爆リスクが高いだけの扱いにくいスキルだ。
ただ、武器生成系のスキルの中でも飛び切りの威力を誇り、なにより『瞬間移動』との相性が抜群に良い。起爆直前のタイミングで転移させれば回避は難しいし、気づかれても爆発の余波で相手はただではすまない。
グレーターデーモンは私を見失うと、すぐさま荒木田さんに視線を移した。槍の切っ先が荒木田さんの方を向く。すると瞬時に魔法陣が発生し、蒼い光が瞬くと稲妻が放出される。
速い。でも、荒木田さんの『亜空障壁』に阻まれて、雷撃はどこかへと逸れて行った。
ここだ!私はグレーターデーモンを見据える。
「『瞬間移動』!」
2つの爆弾が敵の死角に転移。音を立てて地面に落ちた。
グレーターデーモンが足元のそれに気づいた時、『時限爆炎弾頭』が起爆。爆音と共に眩い閃光が炸裂し、膨大なエネルギーが着弾点を中心に周囲の物体を飲み込んでいく。
凄まじい衝撃波と熱風が私たちのいる場所にまで吹きつける。その爆風の中からグレーターデーモンが翼を広げて飛び出してきた。そして、こちらを睨みつける。
あの爆発に巻き込まれても、まだ動けるなんて。でも、さすがに無傷ではないみたいだ。動きはかなりぎこちない。
私は『風精霊の加護』で飛び下がりながら、『束縛の雷撃』を放つ。それでも、まだグレーターデーモンには当たらない。
グレーターデーモンは低空を滑るようにジグザグと転進して接近してくる。相当な傷を負っているはずなのにそれを感じさせない俊敏さだ。ついに私の眼前に迫り、槍が突き出される。
その時、グレーターデーモンの後ろから別の影が飛び込んで来た。
「……これで、終わりっ!」
その影はまひろさんだった。彼女が握りしめた槍はグレーターデーモンの胸を背後から貫いていた。
0
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜
むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。
そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。
それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……?
のんびりほのぼのとした現代スローライフです。
他サイトにも掲載中。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる