25 / 32
第25話 VSグレーターデーモン
しおりを挟む
「おおっと!あれはグレーターデーモン!人型のSランクモンスターが現れましたっ!なんだか手強そう!」
“あんまでかくないし心配し過ぎでは?”
“なんか不気味な感じ”
“他のSランクモンスターと雰囲気違うな”
“まあなんとかなるでしょ”
水無瀬さんとコメントの反応はそれぞれバラバラだ。でも、水無瀬さんの直感が一番的を得ている。
このモンスターは強い。
グレーターデーモンが虚空に右手を差し出すと、足元の影の中から三又の刃先を持った黒い槍が現れた。
「『武器創出』!」
まひろさんがすぐさま長剣を生成し、両手で構える。さらに『人体改変』で肉体を強化つつ、大地を蹴った。
瞬きする間に両者の距離がなくなり、まひろさんの渾身の剣閃が繰り出される。しかし、グレーターデーモンは槍の柄の部分で軽々とその一撃を受け止めた。
「まだまだっ!」
まひろさんは前蹴りで牽制。後ろに下がったグレーターデーモンに再度肉薄し、続けざまに斬撃を叩き込んでいく。その連撃をグレーターデーモンは巧みな槍捌きで弾いている。
「こっ、これは!?まひろちゃんの連続攻撃が届かないっ!グレーターデーモンの戦闘技術の高さがうかがえます!まひろちゃん、頑張って!」
“コイツ武器を使うのか”
“やばそう”
“まひろちゃんが軽くあしらわれてるって相当なのでは”
“負けるなー頑張れ!”
水無瀬さんの実況にもコメントにも緊迫感が走っている。それを聞きながら、私は『風精霊の加護』を起動する。
グレーターデーモンを遠巻きに見ながら、極力気配を消して側面に回り込んでいく。
グレーターデーモンと対峙して格闘戦を繰り広げているまひろさんに視線を送り、アイコンタクトを試みる。彼女が私の目線に気づいて、軽く首肯した。
私はそこで一気に加速し、地上すれすれを低空飛行しながら、右手を構える。
『束縛の雷撃』を私が放った瞬間、まひろさんがバックステップでグレーターデーモンから離れた。しかし、お見通しとでも言わんばかりにグレーターデーモンは半歩引いて最小限の動きで雷撃を躱す。
「うっ、気づかれちゃったか」
それでも、私は背後に回り込むように高速移動しながら『束縛の雷撃』を連射する。
こちらに意識を割いたグレーターデーモンは、それらをことごとく回避。最後の一撃を打ち終えたタイミングに合わせて、まひろさんがグレーターデーモンの死角に飛び込んだ。
高く跳躍し、両手で握りしめた長剣を上段に掲げて全力で振り下ろす。
グレーターデーモンは槍を水平に構えてその一撃を正面から受け止めた。激しく金属がぶつかり合う音が響く。
グレーターデーモンの両足が地面にめり込み、大地に亀裂が入るほどの衝撃が走る。だが、そこでまひろさんの攻撃は完全に受け切られてしまった。
「くっそ、これも効かないのかよっ!」
まひろさんは槍の柄を蹴って、大きく後ろに飛び下がる。それを見て、グレーターデーモンは右手をまひろさんに向けた。
すると掌を中心に魔法陣が展開され、そこから突如爆炎が巻き起こり、たちまち中空に炎の渦が形成された。業火の塊は今にも爆発しそうなほどにぶくぶくと膨れ上がる。
そして、宙に浮かんだ紅蓮の球体が揺らめき、轟音と共に圧縮されたエネルギーが打ち出された。灼熱の球が恐ろしい速度でまひろさんの下へ押し寄せる。
「うわっ、あぶなっ!」
まひろさんは横っ飛びでなんとかそれを避けたが、その射線上には水無瀬さんたちがいた。
巨大な火球は荒木田さんが展開した『亜空障壁』に激突すると、四方八方に飛び散り辺り一帯を焼き払ってしまった。
「ひいいぃっ!凄まじい威力の火炎系スキルです!なんと多彩なのでしょうかっ!」
“遠距離攻撃もできるとかヤバイな”
“隙なしじゃん”
“器用なヤツだな”
“こいつ今までで一番強いのでは?”
水無瀬さんとコメントが評した通り、グレーターデーモンは近接格闘も遠距離攻撃もこなせるバランスの取れた戦闘力を持っている。
しかも、速いから足止め系のスキルすら当てるのは至難の業だ。まずはまひろさんと連携して、体力を削らないと話にならない。
「とにかく、手数で押して行かないと」
私は近くにあった岩場から大きな岩石を選んで右手で触れた。『瞬間移動』でグレーターデーモンの頭上に転移させる。出現した影で気づかれたか、直撃は避けられた。でも、姿勢を崩した所にまひろさんが素早く回り込む。
まひろさんはさっきのタイミングで武器を槍に持ち替えていた。鋭い刺突がグレーターデーモンの脇腹を掠める。
武器の変更で対応に遅れが生じたか、グレーターデーモンはまひろさんの乱れ突きに若干押されている。
「よしっ!このまま押し込む!」
敵の槍を紙一重で躱し、まひろさんがグレーターデーモンの懐に飛び込んだ。槍の切っ先がグレーターデーモンの胴体に迫った。その時、不意に足元から何本もの黒い刃が現れた。
「なっ!?」
一瞬でまひろさんの右肩と左の太腿を貫いたその刃は、実体化した悪魔の影だった。
“あんまでかくないし心配し過ぎでは?”
“なんか不気味な感じ”
“他のSランクモンスターと雰囲気違うな”
“まあなんとかなるでしょ”
水無瀬さんとコメントの反応はそれぞれバラバラだ。でも、水無瀬さんの直感が一番的を得ている。
このモンスターは強い。
グレーターデーモンが虚空に右手を差し出すと、足元の影の中から三又の刃先を持った黒い槍が現れた。
「『武器創出』!」
まひろさんがすぐさま長剣を生成し、両手で構える。さらに『人体改変』で肉体を強化つつ、大地を蹴った。
瞬きする間に両者の距離がなくなり、まひろさんの渾身の剣閃が繰り出される。しかし、グレーターデーモンは槍の柄の部分で軽々とその一撃を受け止めた。
「まだまだっ!」
まひろさんは前蹴りで牽制。後ろに下がったグレーターデーモンに再度肉薄し、続けざまに斬撃を叩き込んでいく。その連撃をグレーターデーモンは巧みな槍捌きで弾いている。
「こっ、これは!?まひろちゃんの連続攻撃が届かないっ!グレーターデーモンの戦闘技術の高さがうかがえます!まひろちゃん、頑張って!」
“コイツ武器を使うのか”
“やばそう”
“まひろちゃんが軽くあしらわれてるって相当なのでは”
“負けるなー頑張れ!”
水無瀬さんの実況にもコメントにも緊迫感が走っている。それを聞きながら、私は『風精霊の加護』を起動する。
グレーターデーモンを遠巻きに見ながら、極力気配を消して側面に回り込んでいく。
グレーターデーモンと対峙して格闘戦を繰り広げているまひろさんに視線を送り、アイコンタクトを試みる。彼女が私の目線に気づいて、軽く首肯した。
私はそこで一気に加速し、地上すれすれを低空飛行しながら、右手を構える。
『束縛の雷撃』を私が放った瞬間、まひろさんがバックステップでグレーターデーモンから離れた。しかし、お見通しとでも言わんばかりにグレーターデーモンは半歩引いて最小限の動きで雷撃を躱す。
「うっ、気づかれちゃったか」
それでも、私は背後に回り込むように高速移動しながら『束縛の雷撃』を連射する。
こちらに意識を割いたグレーターデーモンは、それらをことごとく回避。最後の一撃を打ち終えたタイミングに合わせて、まひろさんがグレーターデーモンの死角に飛び込んだ。
高く跳躍し、両手で握りしめた長剣を上段に掲げて全力で振り下ろす。
グレーターデーモンは槍を水平に構えてその一撃を正面から受け止めた。激しく金属がぶつかり合う音が響く。
グレーターデーモンの両足が地面にめり込み、大地に亀裂が入るほどの衝撃が走る。だが、そこでまひろさんの攻撃は完全に受け切られてしまった。
「くっそ、これも効かないのかよっ!」
まひろさんは槍の柄を蹴って、大きく後ろに飛び下がる。それを見て、グレーターデーモンは右手をまひろさんに向けた。
すると掌を中心に魔法陣が展開され、そこから突如爆炎が巻き起こり、たちまち中空に炎の渦が形成された。業火の塊は今にも爆発しそうなほどにぶくぶくと膨れ上がる。
そして、宙に浮かんだ紅蓮の球体が揺らめき、轟音と共に圧縮されたエネルギーが打ち出された。灼熱の球が恐ろしい速度でまひろさんの下へ押し寄せる。
「うわっ、あぶなっ!」
まひろさんは横っ飛びでなんとかそれを避けたが、その射線上には水無瀬さんたちがいた。
巨大な火球は荒木田さんが展開した『亜空障壁』に激突すると、四方八方に飛び散り辺り一帯を焼き払ってしまった。
「ひいいぃっ!凄まじい威力の火炎系スキルです!なんと多彩なのでしょうかっ!」
“遠距離攻撃もできるとかヤバイな”
“隙なしじゃん”
“器用なヤツだな”
“こいつ今までで一番強いのでは?”
水無瀬さんとコメントが評した通り、グレーターデーモンは近接格闘も遠距離攻撃もこなせるバランスの取れた戦闘力を持っている。
しかも、速いから足止め系のスキルすら当てるのは至難の業だ。まずはまひろさんと連携して、体力を削らないと話にならない。
「とにかく、手数で押して行かないと」
私は近くにあった岩場から大きな岩石を選んで右手で触れた。『瞬間移動』でグレーターデーモンの頭上に転移させる。出現した影で気づかれたか、直撃は避けられた。でも、姿勢を崩した所にまひろさんが素早く回り込む。
まひろさんはさっきのタイミングで武器を槍に持ち替えていた。鋭い刺突がグレーターデーモンの脇腹を掠める。
武器の変更で対応に遅れが生じたか、グレーターデーモンはまひろさんの乱れ突きに若干押されている。
「よしっ!このまま押し込む!」
敵の槍を紙一重で躱し、まひろさんがグレーターデーモンの懐に飛び込んだ。槍の切っ先がグレーターデーモンの胴体に迫った。その時、不意に足元から何本もの黒い刃が現れた。
「なっ!?」
一瞬でまひろさんの右肩と左の太腿を貫いたその刃は、実体化した悪魔の影だった。
0
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜
むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。
そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。
それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……?
のんびりほのぼのとした現代スローライフです。
他サイトにも掲載中。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる