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第七章 鬼憑きの姫なのに、鬼退治なんてっ!
19.最大のピンチ!
しおりを挟む私に馬乗りになって、ぐいぐいと鉉珱は首を絞めてくる。
苦しくてもがけばもがくほど、首が絞まっていくような気がする。
目の前が、歪んで、気が遠くなる。けど、最後で、諦めるわけにはいかなかった。
私は、こんなところで死ぬわけにはいかないのよ!
誰か、助けて……っ! と祈るけれど、鉉珱の不思議な力か何かが作用しているものなのか、私と鉉珱の姿は、他の人から見えないのかもしれない。
「……あ……なたの……っ! ……目的は……、二条関白……でしょ……?」
悪あがきに、私は関係ないでしょうと言ってみる。
すると、鉉珱は、「ふふ」と笑った。
「あなたは、邪魔だ……あなたが邪魔をしなければ、こんなことをしなくても済んだのに、あなたは、ことごとく、邪魔をする。だから、まずは、あなたを殺してから、他の者たちも殺してしまおう」
鉉珱は、さらに、力を込めて、私の首を締め付ける。
「はは、はは、はは……っ! もがき苦しんで死ぬが良い! ……もう、これで、私の邪魔はさせない!」
鉉珱の狂気じみた声が、遠くなっていく。
ああ、もう、これ……ダメかもしれない……。
そう、思った時だった。
唐突に、喉を締め付ける力が弱まった。そう思ったら、鉉珱が、のたうち回って苦しみはじめたのだった。助かった! と思って息を吸い込んだら、喉がおかしくて、咳き込んでしまう。
「ぐ、ぐわぁっ! こ、これは、一体っ!」
身を起こして確認してみると、地面に、鉉珱の両手首が落ちていて、それは、ほどなく、すうっと消えた。
一体なにが起きたんだろう……。
私は辺りを見回してみると、そこに、意外な人の姿を見つけた。
「鬼の君っ!」
どうして、ここに居るんだろう。
だって、鬼の君は、呪いで苦しんでいたはず。なのに、なぜ……?
私の疑問は、バッチリ顔に出ていたようで、鬼の君が笑って答える。
「私は将来の夫だからね。少しくらい、良いところを見せておかないと、ね」
「ご冗談ばかり仰有らないで下さいっ!」
怒って怒鳴りつけると、鬼の君は肩を竦めてから「なに、陰陽頭にちょっと頼んで、一定時間ならなんとかなるように、祈祷をして貰ったんだ。これで、しばらくは動くことが出来る」などと気軽に仰せになる。
尊い方が何してるのよ! と言いたくなったけど、正直なところ、助かった……としか言いようのないタイミングだった。
「お、のれ……、貴様……許さぬぞ……」
地獄の底から響くような鉉珱の声を聞いた鬼の君は、にっこりと微笑んだ。
「許さないのは、私の方だよ。鉉珱。これ以上、お前に好き勝手はさせない」
相変わらず、鬼の君の微笑は、美しすぎて、おそろしかった。
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