鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第六章 大ピンチ! 呪いも運命も蹴散らして

21.まさかの親戚筋

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 白鳳はくほう帝の二宮(一宮が次代朱鳥あけどり帝)の孫が、鉉珱げんようだと言うのならば。

「同じく、白鳳帝の孫である鷹峯院と、今上、それに……鬼の君は、鉉珱から恨まれているんじゃあ……?」

「一族の恨みというのは、白鳳帝の二宮の恨みと言うことか。……そして、おそらく、二宮を流罪に処した朱鳥帝と、その家系を恨んでいると言うことなのだろう」

「私の衣に掛けた呪いを切っ掛けに……?」

「なぜ、あなたの衣に掛けた呪詛が、切っ掛けになることが出来るのかは、私には解らないが……。少なくとも、鉉珱を捕らえて、殺すか、呪いを止めさせなければマズイだろう。実際、阿闍梨あじゃりも倒れたと言うし」

 常寧寺阿闍梨(阿闍梨は、……偉いお坊さんのことね)は、やはり、朱鳥帝の二宮。

 こうなってくると、呪いを一刻も早く止めないとならない。

「……主上は、私が、ふと三日で死ぬと言っていたけれど……ご自身にも呪いが掛けられていることを、ご存じだったのかしら」

 私の独り言を聞いた鬼の君が、バッと顔を上げた。

「知らないだろう。……それを知って居たら、あなたに対して、そんな余裕な振る舞いなどはしないはずだ」

 だとすると。

 私は、考える。

「主上が、私の小袖に呪いを掛けたのは、私や……或いは、私を通して、鬼の君をあぶり出す為だったとして、それとは別に、鉉珱は朱鳥帝に連なる方に、別の呪いを掛けたのでは?」

「それならば、実敦さねあつ親王(主上のことだ)も知らないだろうな」

「助けないと!」

「正直、私は、あの人にハメられた訳だから、今更、救ってやる理由など皆無なのだが」

 鬼の君は、もっともなことを言うけれど、流石に、私だって、放って置くわけには行かないと思う。

「それは解りますけど、情け深くあるのも、主上のお役目でしょ? だから、ちゃんと、命を助けて、その後、罰を下せばよろしいのでは? ―――ここで、鬼の君が、主上に対して復讐したら、主上まで、鬼になって仕舞うもの」

「私が、鬼に?」

「ええ、初めてお会いした時。鬼の君は、私に言いました―――『魑魅魍魎、鬼の住む国に居た』と。気がついたら、ご自身も、鬼になって仕舞ったと……」

「古い言葉を覚えているものだね、姫」

 鬼の君は、やんわりと微笑んだ、私の頬に口づけを落とす。

 あ、ちょっとだけ解ったのは、この人のセクハラは、会話の流れを変えたい時にも発動して居るみたいだ。

「覚えています! ……だって、大切なことですもの。宮中が、どういう所か解りませんけれど……なぜ、鬼の君が、あんなことを仰せになったのかは、ずっと気になっておりました」

「あなたは、大方のことを知ったようだから言うけれど……私は、母上と実敦親王の件を……知ったのに、それを口外しなかったんだ。あの時、母上が亡くなる前に、私が、実敦親王を捕らえていれば良かったのに……私は、おそらく、あの時、保身の為に、実敦親王を捕らえることは出来なかった。
 ―――あの頃の私は、実敦親王の力が必要だったのだ。私は、兄弟も居ないから、親戚筋を頼らねばならなかった。今の阿闍梨は、修行中で逢うことは出来なかったし、三宮は、全く私と疎通を取ることが出来ずに……。こんな事態になることが解っていれば、あの時、実敦親王を、捕らえるべきだったのだ」

 鬼の君は、苦しそうに言う。

 鬼の君は、きっと長い間、これを悔やんで来たのだろう。帝だったとは雖も、きっと、その時期、鬼の君は窮屈な思いをしていることが多かったのだと思う。

 だから、伯父である、主上を、切り捨てることが出来なかったのだろうとも。




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