鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第六章 大ピンチ! 呪いも運命も蹴散らして

11.髪を整える・・

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 民はすべて、帝の臣であると言えば、お名前を覚えて頂けたり、お力になることが出来たというのは、それは、大変な名誉だけれど、なんだか、私は、腑に落ちない。

「それにしても、酷い格好ですね。……私は、ここで少し微睡んでいるから、泥を落としていらっしゃい」

 鬼の君に追い払われて、まあ、致し方無く、私は下がった。鬼の君に対して無礼というか……まあ、酷い格好だからね。

 家の女房に湯の仕度をして貰って、ついでに、洗髪もして貰うことにした。

 呪いが解けずに死ぬ時に、頭に蜘蛛の巣だらけの姿で死んだら、ちょっと私はやりきれないし。

 湯と言っても、風呂(大体蒸し風呂ね。浴槽に湯を張って入るのなんか、主上くらいじゃないかしら。ちなみに毎朝入っていたらしいですけど)ではなくて、盥に湯を張って貰って、湯で湿らせた布で身を清めるくらい。

 それは良いんだけど、洗髪は、時間が掛かる。

 灰汁あくを付けて汚れを落として、湯で丁寧に清めるのだけれど、私は、横になっているだけで、この作業を、女房二人がかりくらいでやるのだ。

 しかも、乾くまで、風通しの良い場所とか火鉢をたいたところで待たなければならない。

 折角だったら、髪に香を焚きしめておくのも良いかもしれない。(母様の、防虫香は困るけど)

「何か、気分が楽しくなるような香を焚きしめてちょうだい」

 女房たちが「かしこまりました」と受ける。

 私は、横になって天井を見上げながら、ひたすら、女房達が、ぽんぽんぽんぽんと乾いた布で私の髪を軽く叩くようにして、乾かしていくのを感じていた。

 ああ、ヒマだ……。こんなにヒマで良いはずないんだけど、まあ、あのままじゃ、鬼の君は会話もして下さらなかっただろうし、仕方がない。

「姫、邪魔をするよ」

 まろい声が聞こえた。鬼の君の声だ。女房達はとっさに平伏する。私は、どうして良いか解らずに、そのまま寝転がったままだった。

「鬼の君……」

「そのままで。私も手伝ってあげるから」

 鬼の君は女房から布を受け取って、私の髪を乾かすのを手伝ってくれる。

 うう……恥ずかしい……。こんな姿を、殿方に見られているだけでも、十分恥ずかしいのに、髪を乾かして貰っているなんて。

「おやどうしたの? 姫」

「恥ずかしいです」

「慣れなさい。……あなたが、私の後宮に入ったら、私は、あなたの髪をこうして乾かす係になろうかな」

 鬼の君は、実に愉快そうにしている。

「でも、私、現在、呪われていて、タイムリミット間近です。……あと……三日とかで、死ぬって、帝が言っていましたけど」

「呪いは、解かせよう。―――私の父の弟に、某寺の阿闍梨が居るから、呪いは解かせるというより、跳ね返すのだけれどね」

 鬼の君は、不適にお笑いになった。



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