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第四章 後宮には危険が一杯!

32.薫りを纏って

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 もーっ! 何するのよ、関白殿下!

 陽の父上様……源大臣のセクハラもアレだけど、関白殿下だって、十分にセクハラよ!

 髪に口づけとか……恥ずかしすぎるっ!

「放して下さいませっ!」

「あの香を、たきしめてから鷹峯院の所へ行くと約束してくれたら、放してあげるよ」

 くすっ、と関白殿下は笑う。なんだか、私は、それが、しゃくさわった。

「けれど、あれは、たいてはいけないと、鬼の君に言われたものなのですけれど」

「それでも、だよ」

 相変わらず、関白殿下は髪を放して下さらない。

 全く、この方はっ!

「私に、鬼の君との約束を破れと仰せになりますか?」

「君は、あの薫りを纏っていたのだから、きっと、山科でたいたのでしょう。そして、忘れて出てしまった。……だから、鬼の君と如何なる約束事をしようとも、すでに破ったあとなのだよ、山吹」

「それはそうなのですけれど……」

「私も、帝も、その薫りで、すぐにあの方を思い浮かべた。だから、その薫りは、完璧に作られていたと言うことだし、あなたに似合っていたのだ。だから、中々、気付くのに遅れた。
 おそらく、上皇は、その薫りを聞けば、何か、ご存じのことをお教え下さるかも知れない。少なくとも、私たちの味方かどうかは解る」

 ふうん、そうかー……とわたしは、ハタと気付いた。これが、味方になってくれる方の場合はイイが、敵だったらどうする……?

 やっぱり危ない気がするんだけど……。護衛は付けるんだけどさあ。

 私が、返事に困っていると遠くから足音が聞こえてきた。

 陰陽師殿と、陽だ。

「おや、あの二人が帰ってきたようだね」

「はい。随分遅かったですけど……」

 関白殿下は、やっと私の髪を手放してくれた。なんだか、助かったわ……。

 そして、程なく、陰陽師殿と陽の二人が、淑景北舎にやってきた。

「遅かったね。待ちくたびれたよ、陰陽師」

「うむ。致し方あるまい、上司に捕まっていたのだ」

 陰陽師殿は、きっぱりと言い切った。


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