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第四章 後宮には危険が一杯!
28.鬼の君の支援者
しおりを挟む「調べている……とは?」
関白殿下の意図を計りかねて、私は、問いかけた。
確かに、色々動いているけど、調べてる……というか、ちょっとした好奇心だ。
だって、ねえ。
関白殿下に帝が、私に求愛した! だなんて、異常なことで、そうしたら、私は、その理由が知りたいじゃない?
絶対、裏があると思うもの。
「山吹、あなたは、誰かに、頼まれて調べているの?」
ピンときた。
関白殿下ったら、私が、鬼の君から頼まれて、色々調べてるんだと思っているらしい。
「どなたに、なにを頼まれるんです。私のように、なんのツテもない女が!」
「源大臣にまで会いたいというのは、ちょっと、ねえ。昔は、そこそこ美少年だったらしいけど、いまは、割りと見る影もないよ?」
「うちの父、でっぷりしてますからね。そこがいいという方もチラホラいますけど」
「まあ、恰幅がいいほうがモテることもあるな。たが、セクハラ親父だぞ? 私も、あなたにセクハラして良いものなら、いくらでも、今すぐでもしたいところだが」
トンデモ発言! 陰陽師殿、いい加減にしなさいよ!
私は、睨み付ける。
「なにをバカなことを言っているんだ。陰陽師。……まあ、私も、セクハラのひとつ二つしたいところだけどね。
なかなか、山吹、ガードが固くてねえ」
嘘つけ!
ちゃっかり、私に口づけたくせに!
関白殿下のことも、睨み付ける。
「関白殿下。もはや、歯に衣着せずに仰ってくださいませ。本当に聞きたいことは、なんです?」
「この者たちの前で?」
「ええ。保証になるわ。それに、簡単に口を滑らすような方ではないでしょう? 二人とも」
「まったく、君には、かなわない。では聞こう。君は、薄々、幼い頃に山科で出会った鬼の君の正体に気が付いたね?」
「気が付いたのは、ここに来てからです。理由は、関白殿下から贈って頂いた装束の紋様です。
あれは、登華殿の女御さまだけが作らせていた、特別のものなのです。
それを、鬼の君は、母上の……と仰せになった」
しまった。
最近、鬼の君に会ったのを教えてしまった!
けれど、それ以上に色めき立ったのは、陽と陰陽師殿だった。
「まさか、二条廃帝?」
「そんな。あの方は、お腹を召されたのでは?」
「多分、間違いないわ。そして、登華殿の女御様は、鬼の君から呪詛なんか、受けていないのよ。多分」
登華殿の女御さまに、何か変事があったことは、言わなかった。
だって、早良さまのあの態度をみたら……。
隠しておけるなら、そうした方がいいんだわ。
「鬼の君は、何か言っていた?」
「私には、山科にいるようにと。多分、鬼の君は、なにか、危ないことをなさるつもりなのかも知れません」
「困ったね。鬼の君の居場所は?」
「まったく、存じ上げません。陰陽師殿ならば、占うことが出来るのでは?」
私の言葉を聞いた陰陽師が、大きく、うん、と頷く。
「可能だ」
「では、急ぎ仕度するように」
「うむ。一度、失礼する」
陰陽師殿は、瞬く間に立ち去ってしまった。あまりにも、迅速で、私は、目を丸くしてしまう。
「鬼の君が、なにをするかといったら、恐らく御自分の名誉の回復と、復讐だろう。陰陽師に聞けば早いだろうが、今年、主上は、星回りが悪いのだ。
それを知っている鬼の君が、今年、動いたのだろうな」
成程、そういう事情があったのね。星回り、かあ。
そういえば、私の、『千年に一度のモテ期』というのも、星回りよね。
私たちの社会は、占い重視なのだ。
だから、鬼の君は、一番、都合の良い星回りを選んで、何かを仕掛けようとしている?
「鬼の君が、無茶しなければいいけど」
「けど、なにをするにも、単独では無理だよ、鬼ちゃん。きっと、鬼の君には、支援する方がいる」
「えっ?」
「左兵衛大尉の言う通りだな。恐らく、いまは、その、支援者のところにいるんだろう」
「それ、心当たりとか、ありませんか?」
私が、身を乗り出して聞くと、関白殿下は、苦虫を噛み潰したような顔で、こう、お答えになった。
「鷹峯院。鬼の君の、実の父君だ」
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