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76.わたくしだって、ふしだらが止まらない
しおりを挟むなにせ、御簾一枚で隔てられているだけで、今は半蔀も落としていないので、外の気配は、生々しく聞こえて来る。
外の気配がするということは……中の気配も探られているのではないかと、わたくしは、ひやひやする。
「ん……っ」
香散見さんが、わたくしの肌に口づけを落とす度、わたくしの身体は、びくっと怯えた様に跳ね上がって、そして、小さな声が漏れてしまう。それが恥ずかしくって、わたくしは、手近にあった布を噛みしめているのだけれど、やはり、くぐもった声は漏れてしまう。
「アタシ、ちゃんと、声聞きたいのに」
香散見さんは不満そうだけど、わたくしは、やっぱり、恥ずかしい。
だって……、自分の部屋に殿方を連れ込んで、こういうことに及んでいるわけだから、ふしだら、よ。
だけど、もう、わたくしだって、ふしだらが止まらない。
香散見さんの腕や背中に必死にしがみついて、香散見さんがわたくしに与えて、教え込もうとしている、快楽のすべてを、ちゃんと感じたかった。
香散見さんは、そもそも、わたくしよりも随分年嵩だし、何人もお妃さまがいる上に、お子様までいらっしゃる。
だから、随分と、手慣れておいでなのだろうと、わたくしは思う。
わたくしは、怖い、と思う暇さえなく、香散見さんに翻弄されている。
「……香散見さん……」
「やぁねぇ、アタシ、本当は、名前、違うわよ?」
もちろん、そんなことは知って居るし……『東宮殿下』の諱ならば、私だって、存じ上げている。
でも、イヤなの。
「知ってます」
「じゃあ、なんで、女房名なのよ」
香散見さんは、不満そうだけれど、わたくしは、多分、一生、この名前で呼ぶと思うわ。
「……だって、香散見さん……っお呼びする妃は、わたくしだけですもの」
香散見さんは、一瞬、ぽかんと口を開けて、呆れたような顔をしたけれど、すぐに、私の肩口にかみついてきた。
「んもーっ! そんな可愛いこと行って、本当に、仕方がないんだからっ!」
香散見さんの指が、わたくしも触れたことのない場所を探る。
なんというか……ちょっと、くすぐったい? ような気がして身をよじっていると、脚を捕らえられて、ぐい、と開かされた。
「か……香散見さんっ! ……恥ずかしい……です」
香散見さんの顔を見ると、見たことのないような、男のかたの顔になって居た。
わたくしは、香散見さんの指に翻弄されながら、ついに「あ……っんうっ……っ」と甘い、声を上げて仕舞ったのだった。
そして、そこから先、香散見さんは、性急に、男のかたになった。
わたくし、翻弄されて息も出来ない位、大変だったけれど、不思議と、それ以上に、胸の奥がじんわりするように、幸せだった。
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