オネェな東宮に襲われるなんて聞いてないっ!

鳩子

文字の大きさ
上 下
76 / 106

76.わたくしだって、ふしだらが止まらない

しおりを挟む


 なにせ、御簾一枚で隔てられているだけで、今は半蔀はじとみも落としていないので、外の気配は、生々しく聞こえて来る。

 外の気配がするということは……中の気配も探られているのではないかと、わたくしは、ひやひやする。

「ん……っ」

 香散見かざみさんが、わたくしの肌に口づけを落とす度、わたくしの身体は、びくっと怯えた様に跳ね上がって、そして、小さな声が漏れてしまう。それが恥ずかしくって、わたくしは、手近にあった布を噛みしめているのだけれど、やはり、くぐもった声は漏れてしまう。

「アタシ、ちゃんと、声聞きたいのに」

 香散見さんは不満そうだけど、わたくしは、やっぱり、恥ずかしい。

 だって……、自分の部屋に殿方を連れ込んで、こういうことに及んでいるわけだから、ふしだら、よ。

 だけど、もう、わたくしだって、ふしだらが止まらない。

 香散見さんの腕や背中に必死にしがみついて、香散見さんがわたくしに与えて、教え込もうとしている、快楽のすべてを、ちゃんと感じたかった。

 香散見さんは、そもそも、わたくしよりも随分年嵩だし、何人もお妃さまがいる上に、お子様までいらっしゃる。

 だから、随分と、手慣れておいでなのだろうと、わたくしは思う。

 わたくしは、怖い、と思う暇さえなく、香散見さんに翻弄されている。

「……香散見さん……」

「やぁねぇ、アタシ、本当は、名前、違うわよ?」

 もちろん、そんなことは知って居るし……『東宮殿下』のいみなならば、私だって、存じ上げている。

 でも、イヤなの。

「知ってます」

「じゃあ、なんで、女房名なのよ」

 香散見さんは、不満そうだけれど、わたくしは、多分、一生、この名前で呼ぶと思うわ。

「……だって、香散見さん……っお呼びする妃は、わたくしだけですもの」

 香散見さんは、一瞬、ぽかんと口を開けて、呆れたような顔をしたけれど、すぐに、私の肩口にかみついてきた。

「んもーっ! そんな可愛いこと行って、本当に、仕方がないんだからっ!」

 香散見さんの指が、わたくしも触れたことのない場所を探る。

 なんというか……ちょっと、くすぐったい? ような気がして身をよじっていると、脚を捕らえられて、ぐい、と開かされた。

「か……香散見さんっ! ……恥ずかしい……です」

 香散見さんの顔を見ると、見たことのないような、男のかたの顔になって居た。

 わたくしは、香散見さんの指に翻弄されながら、ついに「あ……っんうっ……っ」と甘い、声を上げて仕舞ったのだった。

 そして、そこから先、香散見さんは、性急に、男のかたになった。

 わたくし、翻弄されて息も出来ない位、大変だったけれど、不思議と、それ以上に、胸の奥がじんわりするように、幸せだった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

処理中です...