オネェな東宮に襲われるなんて聞いてないっ!

鳩子

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47.わたくし、動きますわよ

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 香散見かざみさんの、仲の良かったおじさま。

 ……と考えて、ふと思い出したのは、不意に、先日恋文を届けてきた、『奥様も居るけど、男性もオッケーという割と自由な性癖』のそちの宮様。

 けど、帥の宮様は、香散見さんを性的な意味で狙っているだけで、命は狙っていないだろうと思う。

 そうなると、先帝・白鳳はくほう帝のみなもとの女御にょうごさまの間に生まれた、四の宮さま、五の宮さま、六の宮さまがおいでになるけれど……一体どなたなのか。

 そう。わたくしは、針仕事の合間に探ることにした。

 まずは、香散見さんの乳兄弟だった、東宮殿下(偽)よ。この方は、わたくしの腹違いの兄にも当たる方なのだし、いろいろ教えて下さるはず。

 ―――たとえ、なにか口止めされていても、可愛い妹の頼みを断れないという性質があるはずよ。わたくしの父上の息子なら。

 香散見さんが、

「じゃあ、高陽かや、あとはよろしく~っ!」

 と意気揚々と去って行ったので、わたくしは、すかさず、東宮殿下(偽)に話しかけた。

「東宮殿下」

「はい? なんですか、高陽」

 一応、東宮殿下になりきっているので、親しげな口調でないのがやりづらいけれど。

「ええ、東宮殿下にお伺いしたいのですが……香散見さんには、親しいおじさまがおいでだったと聞きました。その方について、知りたいのです」

「おや、なぜ?」

 東宮殿下(偽)は、やんわりと、わたくしに言う。

「なぜって……」

 と、わたくしは、口ごもる。まさか、その方が、命を狙っている張本人だなんて言えるはずもないし、困った……と思ったけれど、わたくし、ひらめきましたわ。

「なぜって、わたくし、少しでも、香散見さんのことを知りたいのです」

 これは本心。

 少しでも知りたい。きっと……香散見さんは、尊敬できる立派な方だと思うから、わたくしは、香散見さんを好きになると思う。香散見さんがどう思おうとも……わたくしは、好いた殿御の隣に居たいわ。

「あの方のことを、知りたい……」

 東宮殿下(偽)は、わたくしの言葉を反芻した。嘘……ではないのよ。

「ええ。あの方と、わたくしは、ずーっと長い間一緒に居るのですから。より、あの方のことを知りたいと思うのは、普通のことだと思いますけれど」

 わたくしは、必死で訴える。とにかく、わたくしは、そのおじさまと言う方がどなたか知りたい。そして、なんとか、東宮殿下暗殺を諦めさせなければいけないの。

「ならば良いけど……確か、あの方が慕っていたおじさまというのは、五の宮さまだよ。今は、たちばなの大納言だいなごんむすめと結婚して、そちらの方でお世話になっていると言うけれどね」

 五の宮さま。

 手がかりは掴めたわ。

 どうやって改心させるか解らないけれど、とにかく、わたくしが動くしかない。

 さあ、まずは………。



 ――――針仕事だ。






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