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19.わたくし、うんざりですわ
しおりを挟む肩凝りは、わたくし、確かに酷いのだけど。
香散見さんに、毎日毎日セクハラまがいを受けるのが、面倒になってしまいました。
香散見さんは、いつも、
「高陽~っ! 今日もマッサージして上げるわ★」
と言って、わたくしをうつ伏せに横たえて、マッサージして下さるのは良いんですけれど。(ほんとうは、東宮殿下にこんなことをさせてはいけないのは、わたくしもわかっていますとも!)
肩から背中、わたくしの腰……まで、もみ上げて下さるのは良いんですけれども!
時々、首筋に口づけなさったり、
「ねーぇ? 高陽。胸が大きくなるマッサージは如何?」
だとか、
「もっと、気持ちイイことしたい?」
とか、完全に、わたくし、弄ばれてます!
しまいには、その……男の方の……『陽』のモノを、私の脚に押しつけていらっしゃったりするので……ああ、これ、ちょっと時代が下ったら、もしかして、犯罪じゃないかしらと、わたくし、本当に思いました。心底!
まあ、いちいち、反応するのも面倒だし、多分、この方を喜ばせるだけでしょうから、わたくしは抵抗は止めておきますけれど。(それに、どうせ、さいごまで無体なことはなさらないのは解っていることだし)
それで、わたくしに、セクハラ三昧だった香散見さんは、不意に、気がついてしまったのです。
「高陽が、アタシに素っ気ないわっ! 面白くないじゃない! これじゃ!」
仕方がないと思うのです。だって、わたくし、別に、この方を好きになったわけでもないのですから。ついでに言うと、わたくしは、この方のおもちゃになったつもりもないのですし!
「まあ、良いわ~。アンタの身体を、アタシ好みに仕立てるのは、アタシの仕事だし、楽しみだし~」
過剰な接触のおかげで、この方に身を捧げると言うことに対して、恐怖も嫌悪もなくなったのは、わたくしにとっては幸いだったのかも知れないわね。
そうだわ。
入内してしばらくすれば、飽きるでしょうし。
それならばその時を待った方が良い。
面倒なことは、全部済ませてしまった方が良いわ。
わたくしは、とにかく早く、月見の宴を開いて貰えるように、お願いする文を送ることにした。
多分、この時、わたくしは、ちょっとだけ、ヤケクソな気分になっていたのだと思います。
だって、あまりにも、セクハラが露骨なんですもの。
嫁入り前の乙女に、モノ押しつけるって、どういうヘンタイよ!
どうせなら、素敵な和歌だとか(実敦親王は下さった)、一緒に管絃をするだとか(実敦親王はして下さった)、お文のやりとりをしてお互いの理解を深めるとか(実敦親王はして下さった)してから、結ばれたいのが乙女心だというのに。
いきなり、閨のことしか会話していないなんて、一体、どういうことなの?
わたくし、ぜんぜん、女らしい体つきじゃないのに、香散見さんは、こういう『未発達体系』のほうが、好みなの?
色々考えて居たら、頭が、ぽんっと爆発してしまったのだ。仕方がない。
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