オネェな東宮に襲われるなんて聞いてないっ!

鳩子

文字の大きさ
上 下
11 / 106

11.わたくし、抱き枕じゃありませんっ!

しおりを挟む



 東宮殿下に抱きしめられたわたくしは、そのまま、ひょいっと抱え上げられてしまう。

「アンタ、軽いわねぇ。もうちょっと肉つけた方が良いわよ? ……というか、アタシの好みね。折角女に生まれたんだもの、出るところがしっかり出てなかったら淋しいし……腰にも全然肉が乗ってないわ。こんなんじゃ、アンタ、子供産めないわよ?」

 東宮殿下は、わたくしの身体を抱き上げながら、本当に余計な事ばかりを仰有る。わたくしは、東宮殿下の素肌に近い感触を身体一杯に感じてしまって、恥かしくてたまらないというのに、東宮殿下は、当たり前のことだけれど、余裕でおいでで、わたくしは口惜しくなる。

 わたくしだって、……自分の貧相な身体には、ちょっと呆れていたのです。けれど、構いませんわ。いまから、ちゃんと成長しますもの。

 わたくしが膨れていると、「うふふ」と東宮殿下がお笑いになった。

「なんですの?」

 東宮殿下は、すぐには答えて下さらなかった。わたくしを褥に横たえて、ご自分も、隣に横になる。そのまま、わたくしを腕の中に引き寄せるものだから、わたくしは、ごろん、と殿下に抱かれる格好になった。

「うふふ、アンタは、本当に、何から何までうぶで可愛いわねぇ。もう、このまま、食べちゃいたくなるわ。冗談だけど」

 笑えない冗談は止めて頂きたいわ!

「ね、高紀子。大丈夫よ、アンタまだ幼いんだし」

 東宮殿下の、熱い掌が、わたくしの腰を撫でる。ゆっくりと。じわじわ、そこから、身体の奥に封じ込められた何かを、溶かし出すように。なんだか、むずむずするような感じで、わたくしは身をよじった。

「高紀子、オンナの肌はね。男にしか磨けないの。だから、アタシに愛されて、アンタは綺麗になるわよ?」

 ふふ、と東宮殿下の口唇が、わたくしの耳に触れた。温かくて、柔らかい、変な感じ。そのまま、ぱくっと耳朶を甘く噛まれて、わたくしの腰が魚のように跳ねた。

「で、殿下っ?」

「大丈夫よ、アタシに任せてなさい」

 悪いようにはしないし、最後まではしないから。

 ――――と仰有るけれど、もう、最後までするとか、そういうことじゃなくて……。

「東宮殿下……っ」

 わたくしが涙声で名前を呼ぶと、東宮殿下は、ふっとお笑いになった。

「こういうときに、その名前は、ちょっと色気がないわねぇ……でぇも、アタシの本名は、もう少し、アンタと仲良く・・・なってからじゃないと、教えて上げないわ」

 東宮殿下は、わたくしの頬に口づけをする。

 丁度その時、御簾の外で、何か動いたような気がした。

 わたくしの耳朶に、再び口唇が寄せられる。

「高紀子。良く聞きなさい」

 耳許で東宮殿下が話すものだから、耳のところで口唇が動いて、柔らかくて、くすぐったい。

「……アタシは命を狙われてるの。今は、やっと人払いできた所よ。まさか、オンナがオンナを襲っている所なんて、見物したくないでしょうから」




 わたくしは、嫌な予感がした。

 もしかして、わたくしが、実敦さねあつ親王との婚約を破棄され、挙げ句、東宮殿下に入内することになる……というのの原因は、そこにあるのかしら?

 つまり―――。

「アンタがアタシの正体に気がついたから……アタシは、アンタを手元から離せなくなったのよ。アンタにバラされても困るし、アタシも、なんとしてでも保証がほしいの」

 ああ、やはり。

 わたくしが、あの時、東宮殿下に気付かなければ!

 わたくしは、予定通り、実敦親王と結ばれていたかも知れないのに。

 そして、こうして、わたくしを褥の中で抱きしめて、耳許に直接ささやきかけているのも、どこで聞き耳を立てているか解らない『敵』に聞かれない為。

 ああ、この方……十二単女装こんな格好なさっているけど、ちょっと、ただ者じゃないわ。

 勿論、東宮殿下という尊い立場というのはあるのだろうけれど……。それだけじゃない、この方が、どこか、常人ではないのだ。

「んー……っ、高紀子、アンタ、良い匂いねぇ。朝露に濡れた牧場の仔馬のようだわ」

 嬉しくないたとえられ方だし、なんだか、わたくしは、けなされているようにも思えたけれど。

 東宮殿下は、わたくしに抱きついたままで、なにやら、わたくしの耳許、何か仰せだったような気もするけれど、わたくしは、覚えていない。












しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...