103 / 106
103,そしてわたくし、寝耳に水ですわよ!
しおりを挟む
正直、香散見さんが単純で助かった。
東宮である香散見さんが、無事に梅壺に戻ったときは、主上から、直々にお誉めのお言葉を賜ったのだから、香散見さんも、日頃の行いとか、色々は、反省して頂きたいものだった。
香散見さんには、他にも妃はいるものだから、わたくしは、正室と言うわけではないけれど、まあ、それは、世間一般から見たって普通のことだから、特には気にしないことにした。
そう。
香散見さんからの寵愛だけがたよりで、それだけが、わたくしの生きる道だと思い詰めていたら、きっと、気が滅入ってしまうもの。
いつまでも香散見さんの気持ちが、わたくしにあれば良いけど、まあ、なんというか、自由な方だから、それはわからない。
ずっと、わたくしだけ見ていて下さいませ……とねだるのは簡単なことだけれど、香散見さんは、そういうところは、変に律儀だから、寝所でも、嘘は言わないだろうし。
ともかく、わたくしとしては、香散見さんをおささえ出来るところは全力でおささえするけど(実家の総力を結集してでも!)それ以外は、あまり、差し出がましいことはしないように。それだけは、注意することにしよう。
香散見さんも、妃たちがいがみ合っているのは面倒に思うでしょう…………いやあの方、絶対面白がる。
『これ、誰が勝つかしらね~。楽しみ~』
とか、絶対にやる。間違いない。
わたくしは、心に決めましたわ。その楽しみだけは、奪って、和気藹々な後宮にしてみせる! と。
ともかく、香散見さんは無事に引っ越しして下さったし、あとは、わたくしが正式に入宮するだけよね。
なんだか、順番がおかしなことになったけど、とりあえず、あとは成り行きにまかせればいいわ……と、気楽に構えていたわたくしは、なぜか、主上に呼ばれたので、大急ぎで清涼殿へ向かうと、なぜか、わたくしの父上と、主上の中宮さまがおいでだった。
わたくし、てっきり、入宮の打ち合わせかと思ったけれど、だとすると、肝心の夫不在になるので、多分、違うのだと思う。
「お召しにより、参上いたしました」
と、ご挨拶申し上げてから、主上のお言葉を待つ。お言葉があるまで、顔もあげられないのです。
「おもてをあげなさい」
そう仰せになってから、主上は、こほこほと咳をなさった。最近、主上は、お咳が多いような気がするのだけれど。
「そなたを、呼んだのは、このことなのだ」
主上の声は掠れておいでだった。
「このこと?」
わたくしには、なんのことやら、さっぱりわからない。
「主上は、このところ、お体が不調でおいでだ。それゆえ、ご譲位をとの思し召しである」
父上……は、関白だから。
主上にかわって、そう、仰せになったのだろうけど。
わたくしは、本当に寝耳に水だわ。
「東宮には、高御座に上がって貰うことになる。その折は、そなたが、東宮を支え、後宮を取り仕切るように」
そして、主上は、また、こほこほと咳をなさった。
東宮である香散見さんが、無事に梅壺に戻ったときは、主上から、直々にお誉めのお言葉を賜ったのだから、香散見さんも、日頃の行いとか、色々は、反省して頂きたいものだった。
香散見さんには、他にも妃はいるものだから、わたくしは、正室と言うわけではないけれど、まあ、それは、世間一般から見たって普通のことだから、特には気にしないことにした。
そう。
香散見さんからの寵愛だけがたよりで、それだけが、わたくしの生きる道だと思い詰めていたら、きっと、気が滅入ってしまうもの。
いつまでも香散見さんの気持ちが、わたくしにあれば良いけど、まあ、なんというか、自由な方だから、それはわからない。
ずっと、わたくしだけ見ていて下さいませ……とねだるのは簡単なことだけれど、香散見さんは、そういうところは、変に律儀だから、寝所でも、嘘は言わないだろうし。
ともかく、わたくしとしては、香散見さんをおささえ出来るところは全力でおささえするけど(実家の総力を結集してでも!)それ以外は、あまり、差し出がましいことはしないように。それだけは、注意することにしよう。
香散見さんも、妃たちがいがみ合っているのは面倒に思うでしょう…………いやあの方、絶対面白がる。
『これ、誰が勝つかしらね~。楽しみ~』
とか、絶対にやる。間違いない。
わたくしは、心に決めましたわ。その楽しみだけは、奪って、和気藹々な後宮にしてみせる! と。
ともかく、香散見さんは無事に引っ越しして下さったし、あとは、わたくしが正式に入宮するだけよね。
なんだか、順番がおかしなことになったけど、とりあえず、あとは成り行きにまかせればいいわ……と、気楽に構えていたわたくしは、なぜか、主上に呼ばれたので、大急ぎで清涼殿へ向かうと、なぜか、わたくしの父上と、主上の中宮さまがおいでだった。
わたくし、てっきり、入宮の打ち合わせかと思ったけれど、だとすると、肝心の夫不在になるので、多分、違うのだと思う。
「お召しにより、参上いたしました」
と、ご挨拶申し上げてから、主上のお言葉を待つ。お言葉があるまで、顔もあげられないのです。
「おもてをあげなさい」
そう仰せになってから、主上は、こほこほと咳をなさった。最近、主上は、お咳が多いような気がするのだけれど。
「そなたを、呼んだのは、このことなのだ」
主上の声は掠れておいでだった。
「このこと?」
わたくしには、なんのことやら、さっぱりわからない。
「主上は、このところ、お体が不調でおいでだ。それゆえ、ご譲位をとの思し召しである」
父上……は、関白だから。
主上にかわって、そう、仰せになったのだろうけど。
わたくしは、本当に寝耳に水だわ。
「東宮には、高御座に上がって貰うことになる。その折は、そなたが、東宮を支え、後宮を取り仕切るように」
そして、主上は、また、こほこほと咳をなさった。
0
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる