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始まりは唐突に
しおりを挟む「お疲れ様でしたー」
部活仲間にそう言い、風のように僕は玄関に向かった。
下駄箱から靴を取り出し、いざ帰らん。
リュックからマフラーを取り出し首にグルグルと巻き付ける。ガラス張りの扉をスライドして開けると、夜の冷たい風が頬を掠めた。
さ、寒い!!
吐く息は白いから、これは10度以下決定だな。体の芯から冷えあがってしまいそうだ。
意を決して外に出ると、やっばり寒い。
「これは人間が生きていける温かさではありませんな」
電灯に照らされた紅葉の並木道を下りつつ、そんな愚痴を零してみたりする。
だって寒いんだから仕方ない。
手に握られているカイロからはほんのりとした温かさがくるけど、あんまり効果がない。
あー…寒い。
家に帰ればコタツにみかん。先週購入した新作のゲーム機。
帰りたい。
温かさに埋もれたい。
そんな煩悩を頭の中ではべらせて、にまにまと口角を緩める。
濡れた落ち葉に足を取られないよう進まなきゃいけない。
昨日は雨降りだったから滑りやすい。
こういう日に限って転んぶんだよな。
ボゴッ。
「ほうぇい!?」
突然足元が膨らみ、僕は前のめりで転んだ。
「ぃ~~ッ!!」
慌てて手で顔を守ったから良かったものの、ズボンは大惨事だ。破けて血が出てる。
うわぁ、グロい。
「いてててて」
痛みに顔を顰めながら立ち上がり、後ろを振り向いた。そこにあるのは不自然に盛り上がった石畳。
…あれは、何?
嫌な予感がする。どうしてかは分からないけど、ここを離れた方がいい気がする。
僕の考えを肯定するかのように電灯がチカチカと点滅し始めた。
故障ではないようで、ここから見える範囲すべての電灯が同じような症状を起こしている。
明らかなる異常。
「…大丈夫。大丈夫、大丈夫、だいじょーぶ!!」
固まっていた体を叩き、自分を鼓舞する。
怖いけど、ずっとここにいては駄目だ。行動しなくては。
腕を抱き、体を擦る。恐怖に怯えた心に少し余裕が出来た。
…行ける。
「う、うぉぉお!!」
一歩。
もう一歩。
そして僕は走り出した。
《スキル【危機回避】を習得しました》
《人類初のスキル獲得者に、スキル【開花の序章】が贈られます》
《スキル【開花の序章】を習得しました》
死に物狂いで走っている中で聞こえた声を無視して。
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