運極さんが通る

スウ

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デュラハン

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グロ注意…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 薄れゆく意識の中、騎士は夢を見た。

「ただいま、マリー」
「あなた、おかえりなさい」

 妻のマリーは、私には勿体ないほど完ぺきな妻だった。当時騎士見習いの私は、毎日の訓練に身を投じ、汗だくになって帰ってきたものだ。それを、妻は嫌な顔一つせず迎えてくれた。

「あなた、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」
「勿論君さ!」
「ふふっありがとう」

 妻は美しく、国一番の美女だった。そのため、結婚してからも、求婚されることが多かった。だけど、それを跳ね除け、妻は私の元に居続けてくれた。

「あなた、ミートパイが焼けたわよ。今日のはひと味違うの!食べてみて!!」

 長いブロンドの髪を耳にかけながら話すのは妻の癖だ。その髪一房あれば、金貨50は容易いと言われている。

「あなた?」
「…あぁ、君にみとれていたんだ。すまない」
「…っ!もう!!」

 そう言うと、妻は顔を赤らめた。コロコロと変わる妻の表情は、一日中見ていたって飽きない。
 グイッと一切れ口に押し込められる。

「アッツ!!」
「ふふっ!愛の熱さね!!」

 妻は無邪気に笑い、水の入ったコップを用意した。頬杖をついて私の反応を見る妻は、何処か子供っぽさが残っている。

「どう?美味しい?」

 味を聞かれても熱すぎて味が分からない。ただ、愛は伝わってくるから問題は無い。
 ぐにぐにした感触に、たまにコリッとしたものがあるのは、ひと味違うことに繋がるのだろう。

「うん、美味しいよ。やっぱり、君の作ったものは何でも美味しく感じるね」
「照れちゃうじゃない!」

 ヒラヒラと手を振る彼女は嬉しそうに、私がミートパイを食べる顔を覗く。あぁ、幸せだ。

「マリー。君は食べなくていいのかい?」
「あなたが帰ってくる前に食べてしまったの。あまりにお腹がすきすぎて…つい。ごめんなさい」
「君が謝ることじゃないよ。私がもっと早く帰ってくるべきだったんだ。それにしても、このミートパイ。食感が不思議だね。一体何の肉を使っているんだい?」

 妻は美しく笑った。
 私はその艶やかで妖しすぎる笑みを一生忘れないだろう。

「内緒」

 思えば、この日から何処か妻は秘密が多くなってきた気がする。
 私が訓練で遅く帰って来たら、いつもいるはずの妻はいない。あるのは、メモと机の上に置いてあるサラダとミートパイ。ぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、タレとうまく融合しているサラダ。何の肉が使われているか分からないミートパイ。
 初めはそれが美味しく感じた。だが、感触だけは好きになれなかった。

 騎士見習いを続けて1年と3ヶ月たった頃、

「ペーター。君は今日より騎士見習いを卒業だ!!おめでとう」
「ありがとうございます!!」

 私は騎士見習いを卒業した。
 その日、私は妻に報告するため、急いで帰宅の途についた。喜ぶ妻の声を早く聞きたかった。高揚する気持ちを抑え、ドアノブを回す。

「ただいま!マリー!!」
「あら、今日は早かったのね。おかえりなさい、あなた」

 私はいつも通りに微笑む妻に抱き着いた。

「マリー。私は騎士見習いを卒業したよ!!衛兵になったんだ!!順調に進めばロビンフッド騎士団に入団出来るんだ!!」
「あなた!!凄いわ!!おめでとう」

 妻からは花の匂いと、腐敗臭がした。

「マリー、生ゴミでも触ったのかい?」
「そうなのよー。近頃の生ゴミって、すぐに腐っちゃって堪らないわ!あ、ミートパイに使ってるお肉なんだけどね、あれ、塩分が多いから食べ過ぎには注意よ?」
「うっ…最近毎日食べてるからな。腎臓が危なそうだ」

 腹を擦り、今日のご飯は何かと問うと、腎臓に優しい薄めのスープだそうだ。久しぶりの温かい食事に涙が出た。

「ふふっ…あなた、私の料理が美味しすぎて泣いてるのね?」
「あぁ。君のはいつ食べても美味しいよ。くっ…ズズズッ」

 心に染みるようなその温かいスープは、私の大好物になった。


 幸せな毎日を送っていたそんなある日、とある事件が起こった。
 それは、子供の誘拐。
 去年から少しずつだが、そういう事件はあった。1週間に2人のペースで。当初は奴隷商が誘拐したのだろうと目処が付いていたのだが、今回の事件はそうではなかった。
 一日で子供が10人消えたのだ。それも真夜中に。
 私が所属しているロビンフッド騎士団は王直属の命令でその事件について動いた。

 ガチャ
「ただいま、マリー」
「おかえりなさい、あなた。飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」
「今日は疲れたから、お風呂に入らせてもらうよ」
「分かったわ。お風呂はもう出来てるから、入ってらっしゃいな」

 あぁ、と返事を返し、私は風呂場に向かった。
 大理石で出来ているこの風呂場は、私が騎士団に入った時に祝で貰った。かなり値段が張るものだと思うのだが、先輩がカッコをつけたいと言い、買って貰った。
 鍛え抜かれた身体を拭いていると、壁に赤い汚れがついていた。
 私の感は叫んだ。
 見てはいけない。知ってはいけない、と。
 …この血は月の血だ。そうだ。妻は今日は月の日なのだ。仕方の無い。今まではこういうことがなかったが、まぁ、妻も流し忘れる時があるのだろう。
 お湯をかけると、赤はそこに初めからなかったかのように流れていった。

「あなたー!ご飯が出来たわよー!!」

 ハッと我に返ると、お湯が地面を浸していた。急いで風呂を上がり、食卓につく。
 今日は肉が多いな。

「あなた、今日は焼肉よ!!」
「ヤキニク?」
「パチシニスの勇者様が広めた美味しいらしいものよ」
「美味しいらしいって…まぁ、君が作ってくれたものは全て美味しいからね」
「もうっ…照れちゃうじゃない」

「パチシニス」の勇者は、様々な料理を作ることで有名だ。それに加えて、神からの恩恵も授かっている。私も3度ほどあったことがあるが、三人とも違う性格であったことに驚いた。

 1人は、誠実そうな男。年齢は15と言ったところか。そいつは、人前ではニコニコしていたが、影では相当悪どいことをしていた。人は見かけによらずということが身に染みた。

 2人目は、言動が悪い男。だが、それは貴族に対してであって、私達に優しかった。裏も表もなく、最も勇者に当てはまる人物だと言えよう。

 3人目は、華奢な女だった。歳は16だと言っていたな。彼女は魔王に勝利を納め、無事生還した。だが、有りもしない濡れ衣を着せられ、噂では死んだとさえ言われている。3人目の勇者のお陰で、魔王領は虫食い状態になり、遂には魔族をこの世界から消滅させたという知らせを聞いた時には、椅子から転げ落ちたな。懐かしいものだ。

 思い出に老けながら、肉を粗食する。
 ぐにぐにとした食感は、例の秘密肉を使っているからだろう。たまに鉄の味がするという有り得ない錯覚が起こるが、それは気のせいだろう。
 疲れているんだ。

「悪いな。今日は早く寝るよ。仕事に根を詰めすがたかな。ははっ」
「そう?それは早く寝ないと。明日の仕事の身体が持ちませんよ?」
「それもそうだな。おやすみ、マリー」 
「おやすみなさい。あなた」

 妻の額にキスを落とし、私は寝室に向かった。
 その日、悪夢に魘されたのは覚えている。ただ、内容だけは、すっぽりと抜け落ちていた。


 1日に子供が10人ずつ消えていく事件が1週間続いた、そんなある日、妻が騎士団に連行された。
 妻が一連の犯人だと、そう断定されたのだ。
【探索(サーチ)】で調べたところ、遺体は、いや、遺骨は妻の部屋にきちんと仕舞われていたそうだ。
 私は、先輩に無理を言って妻の取り調べについて行った。勿論、魔法で自身に【不可視(インビジブル)】をかけておく。
 無機質な部屋に、机と椅子が2脚。
 私は先輩と共に、透明になって部屋に入った。

 星が2つ付いた緑色のマントを羽織った女の先輩が、妻に質疑応答を始めた。

「マリー・ギルテン。貴方は、この1週間で子供を殺しましたか?」
「いいえ」

 私はその言葉にホッと、胸をなでおろした。
 妻は人を殺せるはずがない。小さな虫すら踏むことを嫌がるのだから。

「では、質問を変えます。貴方は、過去から現在に至るまで子供を殺しましたか?」
「はい」
「「「…っ!!」」」
「今、なんと?」
「はい、殺しました。ですが、生き残る為には必要な犠牲でした」

 隣にいる先輩が握っている手でそうなのか、と問うてきた。…私はそんなことは知らない。それに、必要な犠牲とはなんなのだと逆に先輩に問い返した。
 私は震えた。妻が、妻が人を殺せるはずがない。椅子に座っているあの女は誰なのだ。あの女が妻であるはずがない。

「必要な犠牲とは?」
「…私は、去年突然食屍鬼になりました。」
「なぜ食屍鬼に?」
「原因は、分かりません。あの日以来、人を見ると、無性に食欲が楚々られ、殺したくなりました。夫のペーターは、人間ですから当然殺したくなります。私はそれを抑えるため、身寄りのない子供たちを襲い、食事に出しました。そして、私は人の肉がないと、生きれなくなりました」

 食事に出した…?

「人肉を料理したというのですか?」
「はい。人って、意外と美味しいんですよね。夫も美味しい美味しいと言ってくれました」

 私はその言葉に眩暈がした。
 口に手を当てると、ミートパイが思い浮かんだ。

「あ、心配なさらなくとも、残さず全て食べましたよ?勿体ないですし、それにあのぐにぐにした感触が堪らないんですよね。それに、人って塩分が多いじゃないですか。1度夫がそれで腎臓を悪くしてしまって…ふふっ懐かしいです」

 私は耳に手を当てた。もう、目の前にいる女(つま)の言葉を聞きたくなかった。誰か、嘘だと言ってくれ。お願いだ。お願いします。

「では、貴方は人を殺したことを認めるんですね?」
「はい。この世界は弱肉強食ですので、食べる食べられるが当たり前なのではないですか?」

 コテンと首を傾げる女(つま)は、意味がわからないといったふうだった。
 私にも意味がわからない。わかりたくもない。
 いつどこで女(つま)が変わってしまったのか、考えるだけで精一杯だった。

「マリーさん。見つかった遺骨からは頭部だけが発見されませんでしたが、何処にやったのですか?」
「ふふっ…内緒です。ただ、首は、切っても数十秒間は意識があるそうです。私は首だけの食物(にんげん)と会話をした時、感動しました!!数十秒間は、その人にとって、永遠に感じるみたいです!!世紀の大発見じゃないでしょうか!!」

 あぁ。私の妻はもういないのだ。

「貴方は…もう怪物だ」
「人間だって、怪物です。他の生き物の命を食べているじゃないですか」

 グルグルと目が回り、そこで私は気を失った。
 手放さなければ、発狂していただろう。

 目を覚ますと、そこは休憩室だった。
 私はどうやら倒れたらしい。
 フラフラとした足取りで、独房に向かう。
 先輩の話によると、妻は明日にでも日刑になるらしい。
 日刑とは、アンデッドに組する種族を太陽が丁度真上に来る時間帯に十字架に掛け、日の下に晒すという死刑だ。
 私は、妻を死なせる訳にはいかない。妻は、ずっと苦しんでいたのだ。
 それに気づかなかった私も同罪だ。
 私は、私はもう人ではない。
 人を食した時点でもう人とは言えないのだ。
 先輩が許しても、私は私を許せそうにない。
 それに、妻の笑顔がまた見たい。

「マリー、大丈夫かい?」

 堅い鉄格子の間から、蹲っていた妻が私の声に反応して立ち上がり、目の前までやって来た。取り調べで疲れたのか、少し窶れて見える。

「ペーター、あなたなの?」
「あぁ、迎えに来たよ」
「迎えって…。私を殺すの?」

 数歩後ずさり、妻はじっと私の目を見つめた。

「違うよ。一緒に、逃げよう、私が君を守り続けるから。だから、私に付いてきてくれないか?」

 ペーター、と、妻が呟いた。その声は、酷く後悔し、懺悔しているようにも聞こえた。
 私は必ず妻を救ってみせる。守ってみせる。今度こそ、妻の苦しみを取り除いてみせる。

「さぁ、行こう」

 独房の鍵は、先輩から盗ってきた。
 ガチャリと鍵を開け、妻の手を握る。妻はその時、何とも言えない表情をしていた。

 逃げて逃げて、私達はとにかく逃げた。その先に光があると信じて。

 だが、現実はそうは甘くなかった。
 騎士団は、私達の行く先行く先に現れ、精神は消耗し切り、遂には行く手を阻んだ。

「ペーター。俺達はお前を信じている。だから、その女を、いや、バケモノを俺達に渡せ」
「嫌だ」
「なぜだ!!お前のような愛国心の強い、誰よりも平和を願うお前がなぜそんなバケモノの味方をするんだ!!」
「愛しているから」

 その言葉に、その場にいた者達は固まった。
 妻であるマリーでさえも、時が止まったかのように停止した。

「私は、私の愛した人を信じたい。それが平和を害することになっても、私がそうさせない。私は、妻を愛している。そして、同じくらいに国も愛している。だけど、妻と国を天秤にかけるとしたら、私は妻を選ぶ。私を支え、家を出る時はいってらっしゃい、帰ってくるとおかえりなさいと言ってくれる妻を見捨てることなどできない。美味しい料理を、温かい笑顔を、愛を向けてくれる妻を、殺させる訳にはいかない!!私は、私はっ!マリーを愛しているんだ」
「あなたっ…」

 マリーの桃色の目から、大粒の涙が零れた。

「…っ!!だが、俺達騎士団は、それを許すことは出来ない!!国に1%でも害が及ぶと判断されるものは、排除すべきなんだ。…ペーター、今から俺達がやる事を恨んでもいい。いや、恨め!!ペーター・ギルテン!!」

 武装した騎士団が剣を構え、走ってくる。
 全員が私よりも強い。私など、時間稼ぎが出来れば上出来だろう。
 トン、と妻の背中を押した。

「逃げろ。逃げて、逃げて、生きてくれ。…いつか私が君を迎えに行くから。だから、待ってて。愛してるよ」
「ペーッ」

 妻は、光のベールに包まれて消えた。転移石はこれが最後の一つだった。
 上手く生き延びてくれ、マリー。いつか、いつか私が迎えにいくまで。

「ペーター!!大人しく捕まれ!!」

 ベルトに掛かっているレイピアを抜き、先輩方と睨み合う。
 この選択は間違っていない。
 私は、生きるために、妻と生き残るために、最良の選択をとった。悔いはない。
 剣が舞う。私を取り押さえるために。
 剣が舞う。私から、妻を奪うために。
 レイピアが、心臓を突く。
 レイピアが、前に前に進む。
 尊敬した先輩を殺す。
 身体の節々から血が溢れ出る。切り傷から噴水のように血が飛び出る。幾つもの血が混ざり合い、純白の鎧は真っ赤に染まる。
 人間とは、素晴らしいものだ。
 生に執着すればするほど、守りたいものが出来ればできるほど、強くなる。

「ペーターァァァアアアア!!」
「…っ!!」

1番懇意にしてもらった先輩が私の名を呼んだ。その声に怯みつつも、冷静に先輩を見る。彼はもう虫の息だったが、立っていた。その目は死んではおらず、生に溢れていた。

「幸せになれよ」
「…っ!!なんでっ…」

 彼は血溜まりを残し、立ちながらも死んだ。ふと、気付けば辺りは血の海で、私は生き残っていた。
 いや、首の皮1枚だけと言った方がいいだろうか。文字通り、首の皮1枚で生きていた。グラグラと頭が揺れる。これが妻が言っていた永遠に感じる時間か。
 この最後の時間は、マリーのことだけを思おう。生まれ変われるならば、すぐに君の元へ行こう。あぁ、マリー。私は、君に会えて良かった。幸せだった。





「愛してる、マリー」











 気付けば私は暗い部屋に立っていた。私の前に座る愛する妻は、私の首を持っていた。

「マリー。私は、私は君を迎えには行けないみたいだ」

 私は騎士だ。
 約束は違えてはいけない。だけど、死者である私は、もう君に会えに行けない。輪廻の輪を待たなければいけない。

「ペーター。…いままでありがとう」

 妻は残念な口調とは裏腹な表情でそう言い放った。
 私の妻は、そんな表情をしないはずだ。狂気に染まったそんな目をしない。

「君は誰だ」

 妻の形をしたそれは、ゾッとするような笑みを作り、ニヤニヤと笑った。

「流石だね。流石は愛の強い騎士様だ。拾ってよかったよ。うんうん!」
「…先程言ったが、君は誰だ」

 それは目を細めて笑った。不気味だ。妻の顔で、そんな顔をして欲しくはない。だが、私の身体は動かない。

「あぁ、そう言えばさ、騎士様。首が欲しくない?君の首はもう返さないけど、それでも、首が必要じゃない?君、首がないと、マリーちゃんを迎えに行けないでしょ?」

 首!!
 私の首はそれの手の中で眠っている。なら、なぜ私は見えるのだ?私の首は一体どうなっているんだ?

「心配しなくても、ほれ。これを見てご覧よ」

 それが空間から取り出したのは、見たものを反射する鏡というらしいものだ。
 私は、鏡を見た瞬間、凍りついた。
 首がない。首があった場所には翡翠色の炎が宿っている。

「わ、私の身体に何をした?」
「んーそんなのどうでもいいじゃん?あのさ、早く首見つけないと♪マリーちゃんが待ってるんでしょ?」

 そうだ。私が妻を迎えに行かなければ。
 私は騎士だ。
 約束を違えてはいけない。

「…だが、私は首をどうすればいいんだ?首がないと、マリーには会えないじゃないか!!そんなの、もどかしくてもドカしくて正気を保つことが出来ない!!」

 妻でないそれは冷たく笑った。

「簡単なこと。目の前にいる人の首を貰えばいいんだよ♪」

 簡単なことだ。
 好敵手たら締める彼女から首を貰えばいい。
 拒否されれば、力ずくで。
 抵抗されれば、暴力で。
 叫されれば、即刻首を飛ばせ。

「そうそう、君が欲しいのは何?」
「首が欲しい。否、差し出せ。私は、私になるたメに首が必要なのだ。首ダ。首首首首首首首首首首…私の首は何処だ?」


「征け!!デュラハン!!世界を壊せ。世界を憎め!!首を探せ!!アハハハハハハッ!!」


 私に残された最後の望みは、自分の首が切り落とされ、血飛沫を噴き出す音をこの耳で聴くことだった。だが、彼の首はない。空っぽの鎧には、血を流す権利すらなかった。
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