運極さんが通る

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イベントクエスト③と存在進化

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セタンタの能力をユニオンメンバーの皆に話すと、今日も私は探索班行きになった。
揉めなかったのかって?
…実は、皆はモスキーバエトを一掃するのが楽しかったみたいで、どうぞどうぞされました。
昨日の防衛戦はどうだったのかと問うたら、モスキーバエトの軍勢ではなく、ジャンヌが特に凄かったらしい。
聖女のような笑みを浮かべて、大量のモスキーバエトをペチャンコにしていったのだとか。
容易に想像できますわ。

「るし、今、邪念を抱いておりませんでしたか?」

ギギギと音がなりそうな感じでこっちをジャンヌが振り向いた。

「いえっ!何も!清いままです!」
「そうでしたか。なら良かったです」

じゃあ私は行くね、と宿に戻ろうとした時…。

「るし、PKには気をつけろよ」

カインがおもむろにそう言った。
PKって、セスのことかな?
セスなら大丈夫だと思うんだけど…。

「この2日間で、防衛していた他のプレイヤー達が何人か殺られてる。全く、嫌な奴らだぜ…」

なんと…。
PKだからといっても、この街を守る為にイベントクエストに参加してくれるだろうと思ってたのに、まさかそんなことをしているなんて…。
あ、でもセスは大丈夫そうだ。
なんといっても、ジャンヌが付きっきりで見張っているのだから。

「あ、例の勇者が最初にPKされたらしいぜ?」

マジすか。
ご愁傷さまでした。
…PKには気をつけないとね。







「よし、セタンタ君!行こうか!」
「はい!師匠!」

今日も元気がいいねぇ。
私も元気になるよ。
おっと、忘れないうちにセタンタに伝えなきゃいけないことがあったんだった。

「セタンタ、突然で悪いんだけど、明日から3日間はこの街を襲っているモスキーバエトの殲滅を重視して動くから森の探索兼ボス探しは一旦中止になる。だからその時はある意味の休憩だと思って、お母さんと一緒にいて欲しいんだ」
「そうですか…じゃあ、僕も殲滅戦に行きます!」
「そうか、分かってくれてうれしい…って、え!?」
「僕も師匠と一緒に行きます!少しでも師匠の役に立ちたいんです!!」

目をキラキラさせて鼻息が荒いセタンタ君。
あれ?
君はこういうキャラだったかな?
もっと弱々しかった感じがしてたんだけど…。
進化して戦闘狂になっちゃった的な?

「…危険だよ?それでも行くというの?」
「はいっ!僕、もっと強くなりたいんです!!」

うっ…キラキラした目が眩しい。
可愛い子には旅をさせよ…か。
まぁ、セタンタがいてくれると百人力なのは事実なんだけどね。

「…んー、よし、絶対にジンとウォッカから離れないって約束出来るんなら、ついてきていいよ」
「ありがとうございます!!」

他の人のところのセタンタもこんな感じなんだろうか。
今度皆に聞いてみよう。









「kitikitikitikitikitikiti!!」
「フラッシュ!!」

現在、ヴェノムスパイダーと交戦中。
動きが早いのなんの。
何とかセタンタの【聖弾ホーリーガン】でやっつけている。
 私も【聖弾ホーリーガン】を覚えたいっ!!
 だってカッコイイんだもん。
 自分の周囲の空中から金色の弾丸が創られて自動で相手に飛んでいくんだよ?
 カッコイイに決まってるじゃん。

 …最近は欲しいスキルがありすぎる。
 まぁ、【聖弾ホーリーガン】は種族専用スキルなのかもしれないんだけどね。


 ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってくだい』

おっしゃ!!
久しぶりのLvアップ!

『“ベルモット”のLvが上がりました』
『テイムモンスター“ベルモット”の存在進化が可能です。存在進化しますか?Yes/NO.』

ジンと、ウォッカのLvは上がらなかったか…。
うん、仕方ない。
さてさて、ベルモットは何に進化出来るのかな?

『幼竜:光……光魔法が得意な幼竜。☆8

 幼竜:聖……回復魔法が得意な幼竜。☆8

 幼竜:闇……闇魔法が得意な幼竜。☆8

 幼竜:堕……堕ちた幼竜。近くに堕ちた者がいると進化できる特別な幼竜。☆8   』

おぅふ。
堕があるよ。
私的には幼竜:聖にいってほしい所なんだけど。

「ベルモット、どれになりたい?」
「きゅっ!」

ベルモットが指さしたのは…。






『存在進化が完了しました』

「きゅ?」

可愛く首を傾げてジンとウォッカを魅了しているベルモット。
進化して変わったところは外見。
頭に黒い星印が付いた輪っかが浮かんでいる。
身体も翼も少し大きくなったかな?
これじゃあもう頭には乗せられないね。

『“ベルモット”が存在進化により、新たに【聖域サンクチュアリ】、【広域回復エリアヒール】を取得しました』

 うほぉ。
 凄そうなスキルをゲットしたね?
 詳細を見せてください!

聖域サンクチュアリ】…自身の半径5mの状態異常を無効化し、モンスターを寄せ付けなくする。(Lvによって範囲が広がる)

広域回復エリアヒール】…自身の半径5mの者の体力を回復する。(Lvによって回復量が上がる)

いいなぁ。
私は存在進化した時、何も当たらなかったんですけど。
てか、一回目の進化でこんなに強いスキル得られるって…流石ドラゴン
 壊れ性能すぎるよ。
 神槍ゲイ・ボルグもびっくりだよ。
 私、拗ねちゃうよ?

「きゅっ!」
「るしーベルモットは何になったのー?」
「…幼竜:堕だよ…」
「かっけぇ!」

ジンとウォッカのキラキラした視線にベルモットは機嫌を良くして胸を張っている。
はぁ、何で私の周りの子は堕ちたがるの?
普通は堕ちたらアカンでしょ。
勇者的な聖属性目指しましょうよ。
魔王目指したらあかんて。





「師匠、何でこの森の中にはあのモスキーバエトが全然いないのでしょうか?いたとしても、村だけだったし…」

確かに。
しかも、セタンタがこの森は不気味だと言っている時点で、完全に黒なんだよね。
だから絶対に何かあるはずなんだけど。

「セタンタ、この森の中でここ嫌だなぁ~って感じる場所はある?」

額に手を当てて唸るが、首を横に振った。

「特には…。全体的に、という感じです」

全体的に…ね。
もしかすると、この森全域がボスだったり。
そんなことあるはずないんだけどね!
…ないよね?



 ーpgdgjk



「師匠!何か聞こえませんでしたか!?」
「ん?何も…?」
「そうですか…なら僕の気のせいですね!」
「戦いすぎてー疲れてるんじゃないー?」
「休むことも大事だぜ?」
「そうだね!」

セタンタの顔色が悪いし、ここで休憩を入れるとしよう。
明日からはもっと疲れるだろうし…。
この辺で休憩出来るところと言えば、向日葵の上なんだけど、その向日葵の上に行こうにも、空にはモスキーバエトがブンブン飛んでいるから休憩じゃなくて、戦闘が起こるんだよね。
 だから、ここはベルモットに新しく覚えた【聖域サンクチュアリ】を使ってもらおう。

「ベルモット、サンクチュアリをお願い」
「きゅっ!」

ベルモットの手から黒い光が放たれた。
そこから私達を中心に半径5mのサークルが広がる。

「皆、ベルモットの作ったこの黒いサークルの上にいたらモンスターから襲われることはないから出ないようにね。はい、ベルモットに感謝!」
「ベルモットー凄いー」
「だな!」
「ベルモット、ありがとう!」

ベルモットは頑張ったから何かくれと、軍服を引っ張る。
食べすぎはおデブの元よ?
でも、可愛いからあげちゃう。
アイテムボックスからクレープを取り出して、ベルモットにあげる。

「きゅっ!」

3口で食べ終わったが、満足したようだ。
ジンとウォッカだったら1枚では終わらない。
そう思うと、ベルモットは少食だ。

「師匠…その、ベルモットが食べた甘い匂いがするものは何ですか?」

振り向くとセタンタと爆食い2人が物欲しそうにこっちを見つめていた。
…出費がかかりそうだ。
爆食い2人にセタンタは、かなりの量を持っていかれる。

「これはね、クレープっていう甘い甘い食べ物なんだ。美味しいんだけどね、食べすぎると歯が痛くなるんだよ。だから、1人1枚ずつね」
「「「やったー!!」」」

アイテムボックスから取り出したクレープにセタンタの目が輝く。
生唾を飲み込んでいる音が聞こえたよ。

「はいどうぞ」
「ありがとうございます!!この恩は決して忘れることはありません!!」
「いや、クレープだから。忘れていいよ」

幸せそうな顔でクレープにかぶりつく3人。
セタンタや、ほっぺたにクリームがついてるよ。
まぁ、美味しかったなら何よりだ。


この後、ベルモットにもう1枚あげました。

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