運極さんが通る

スウ

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ユニオンメンバーと顔合わせ

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赤い睫毛が揺れ、赤頭巾の少女が起きた。

「ここっどこ!?お父さん?お母さ…」 

昨日のことを思い出したのか、言葉を詰まらせた。

「大丈夫。ここは「シナンティシ」の中にある宿屋だよ。私はるし。君は?」
「…私は……エドです。…軍服さんはるしさんです?助けてくれてありがとう…です」

小さいのによくここまで耐えたと思う。
普通は発狂しててもおかしくはないのに。
ポンポンと頭を撫でる。

「…っ」

エドの身体が小さく揺れた。

「うぅ…何で…です?何で…なんで…エドだけ…」 

小さな華奢な身体を抱き寄せる。

「…辛かったね。怖かったね。ここはもう安全な場所だよ。…私がここにいる。もう、泣いていいんだよ」
「うわぁぁぁああああああん!!」

緊張の糸が切れたように少女は泣き出した。
私にはもう、この子に掛けられる言葉が思い浮かばない。だから、せめて泣き疲れて眠るまで、一緒にいよう。





 コンコン
「るし様。宜しいでしょうか?」
「はい」

デヒテラさんが高価な服を着た婦人を連れてきた。

「おはようございます、るし様。昨日はお世話になりました。改めて、私の名はフラン・ダンテ。エドを引き受けにまいりました」

フラン・ダンテはエドの祖母で、エド達家族が薬を届ける旅に出るまで一緒に暮らしていたらしい。
エドモンにとっては唯一無二の家族になる。


昨日、国に戻った際、エド達家族を探すフラン・ダンテにバッタリと居合わせた。
聞くに、この国周辺に黒きものたちが現れたという噂を聞き、自分の息子と娘、孫がその場所に向かったことを思い出して、3人の消息を確認するために早馬でここまで走ってきたのだとか。
エドだけしか助けられなかったと話した時、彼女は大粒の涙を零していた。

…幸いにも、フラン・ダンテは辺境の領主らしく、エドが家や食べ物にに困ることはないと思われる。
だけど、こんなにタイミングよく会えるものなのだろうか、と疑った私は門番さんに直接フラン・ダンテについてのアレコレを聞いた。
結果、フラン・ダンテその人に間違いなかった。
悪い噂もなく、貴族階級にも申し分ない。
これなら安心してエドを託すことが出来る。

「フラン様。エドのことを頼みます」
「はい。息子と娘が命を賭してまで守ったエドを、今度は私が2人に変わって守り続けていきます。るし様。この子を、そして息子と娘を救けて頂き、誠にありがとうございました」

腰を90度に折り、誠意な姿勢はとても高く評価出来た。
この人がエドの叔母で良かった。

そっとエドの頭を撫で、部屋を後にした。







「るしーセタンタはー?」
「セタンタは今日は気分が悪いって言って寝込んでるよ」

昨日の今日だから仕方の無いことだ。
あの光景はあまりにも凄惨過ぎた。
現に私も気分が優れない。
セスは意気揚々に鼻歌を歌っている。

「セス、何でそんなに元気なの?」
「ふっふっふぅ。今から新しいユニオンハウスに向かうんだよぉ?元気いっぱいになるに決まってるじゃあないかぁ」

そう、今から私達は新しいユニオンハウスに行くのだ。





今日の朝、ギムレットからテレパシーメッセージが届いた。
テレパシーメッセージとは、いわゆる念話の様なものである。

『るし様、お久しぶりです。ギムレットですよ?ふふふ。遂にるし様のユニオンハウスが完成しましたので、一度、わたくし達の家に帰ってきて下さい。…ユニオンメンバーの方々も連れてきて下さいまし。…わたくしとしては家に入れたくはないのですが、るし様のため、ここはわたくしが折れましょう。今日の12時までに帰ってきて下さい。わたくしヴィネと2人きりで寂しくて、寂しくて狂い死にそうです。それでは、お待ちしております。
 貴方のギムレット』

早速ユニオンメンバー達に「第一の街に集合」とメールを打っておく。
久しぶりに家に帰れると思うと、心が温かくなる。
皆、元気にしてるかなぁ。







「…るし…お久…」

ガンッと胸にNoelが飛び込んできた。
上目遣いがまた可愛い。

「Noel、私鎧着てたけど、その、おでこ痛くなかった?」
「…大丈夫…ドラゴン…いい…」

Noelがベルモットに触れようと手を伸ばすが、一蹴りしてしまう。

「…むぅ…るし…ずるい…」
「ベルモットは人見知りなんだよ。ゴメンね?」
「Noelちゃぁん。久しぶりだねぇ♡」
「…死ね…」

右手に光を溜め始めるNoel。
あかん、アカンよ。
今からユニオンハウスに行くんだから死闘を始めたらアカン。


「あら?何処からか穢れた声が聞こえてきますね」
「ジャンヌ!!」
「おぉぅ…ジャンヌゥ」
「るし、Noel、お久しぶりです。そこの悪しき変態は私が責任をもって葬…見張るので、これから起こることは気にしないでください。神が、この変態だけは許してはならぬと仰ったものですから」

身も凍るような笑みを作るジャンヌ。
頼りになります。
変態セスは頼みました。




「お、皆早いなぁ。どうやら僕達が最後みたいだね」
「だな。久しぶり……って変態ッ!!」
「カインじゃないかぁ。もう1回 おれと殺ら ごふっ…」

ジャンヌの拳がセスの鳩尾に入った。

「あぁ、気になさらないでください。穢れた者を浄化しただけですので」

セスを大きな袋に詰め、ヨイショと担いだ時の彼女の顔はまるで聖女の様でした。


「るしさ~ん!!」

この懐かしい声はっ!

「アルザス!久しぶりー!!」

2人でハイタッチを交わす。

「…るし…この人…誰…?」
「ん?あぁ、皆は初めましてだよね。この人はアルザス。我らがユニオンの鍛冶士だ」
「俺はアルザス。こんなに凄いメンバーの中でちょっと肩身が狭いが、いずれアンタらに追いついて並べるようになってみせる。皆、よろしくお願いしやす」
「変態がうちの最低ラインですから、アルザス、貴方はそんなに畏まらなくてもいいのですよ?ふふっ。私はジャンヌ。こちらこそよろしくお願いします」
「…よろしく…Noel…」
「僕はヴェティヴィエルズ。気軽にヴェティって呼んでね」
「俺はカイン。宜しくな」
「…」

アルザスはジャンヌが担いでいる袋に詰められた人を不思議そうに見た。

「あ、その人は変態のセス。気をつけてね?」
「お、おう」

これで全員揃ったみたいだ。

「じゃあ、そろそろ行こか」
「「「「「おう!」」」」」




「おい、何だあの豪華なメンバーは!」
「軍服様の頭の上に乗ってるのって、ドラゴンじゃねえか?」
「今からどこ行くんだろ」
「握手して欲しい」
「おい、あの袋に詰められてんのセスじゃねえか!?」
「うわぁ。手を出して返り討ちにされた感じだわ」
「hshs」




一行は野生のスライムを蹴りながら森?を目指す。

「あれ?アルザス、その子は?」

ジンの頭の上にいる小さなスライムを指さす。

「あぁ、こいつはシュウ。ミニスライムで、スライムの進化系なんでさ。出会った経緯は長くなるんでまた今度で。そういや、るしさんとこのジンとウォッカも随分と可愛らしくなったじゃねぇか。そんでその頭の上に乗ってるドラゴンもかなり強そうだ」
「そうかな。今度是非シュウと出会った経緯を聞きたいところだ!」

シュウはビュッビュッとジンの頭の上からモンスターに酸を吐いている。
強酸の威力が強く、グリーンワームの皮膚が溶けてかなりグロッキーな事になっている。
スライム…いいな。
ぷにぷにしてるし。

「きゅっ」

ペシペシと頭を叩くベルモット。

「ベルモットも可愛いよー。うりうりー」
「きゅ~!」
あぁ、ドラゴンも可愛いなぁ。
大きくなったら背中に乗せてね?

「あっ!るしさん。今度イベントクエストが終わったらモンスターオークションに行きやせん?帝国ザバブルクにある闇市で開かれてるらしいですぜ。何でも、特殊なスキルを持ったモンスターがわんさかいるとか」

なるほど。
興味はある。

「よし、行こう。私もテイムモンスターの枠が丁度2枠空いてるからね」

モンスターオークション…楽しみだ。


「愛しのるしぃ♡助けてぇ」

ジャンヌの担ぐ袋の中からテノールの甘ったるい声が聞こえてきた。
ふっ、君は今からの行動を改めるべきだ。

「ジャンヌ。私、セスにセクハラされたんだ…」

これはセスにとっていいどくになるだろう。

「まぁっ。穢らわしい手がるしを穢そうとするなど、許し難いです」

 ドゴッ
「あんっ…♡」

袋が大きく跳ね、死んだように動かなくなった。
これでセスのセクハラは無くなるだろう。
主に、ジャンヌ様のおかげで。






「ついたよー」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「ここって、イベントの為に建設されたところじゃなかったのか?」
「ん?我が家」

我が家はたった2日空けただけで激変していた。

なんということでしょう、最初は暗い森という印象の強かった場所が、今や木に囲まれた小さなお城に。

確かにこれはイベントに関係あると思われても仕方ないわ。
扉を叩く。

「ギムレット、ヴィネ、スピリットの皆、ただいま~」

バタンッと勢いよく扉が開き、双球が顔に飛び込んできた。

「るし様!おかえりなさいませ!」
「ぐぉ…苦し…」

い、息が出来ぬっ!
このお胸さんめっ!何でそんなに大きいのだ!
解せぬ。

「あの、失礼を承知して言いますが、るしが窒息死しそうなので、離してもらってよろしいですか?」
「…えぇ。わたくし、少し興奮していたようです。すみません。るし様」

バチバチとジャンヌとギムレットの間で火花が散る。

「お、るしか。おかえりなさい」

ヴィネはお風呂上がりなのか、半裸になってお出迎えしてくれた。
そのまま、おかえりのハグをされた。

「ヴ…ヴィネ!その、皆いるから、恥ずかしいっ!!」
「む?そうか?…おや?おまえの頭の上にいるそれはドラゴンか?いやはや珍しい」

ベルモットはヴィネの手を振り払わずにされるがままになっている。
ほぅ、珍しい。
今までは私以外の誰かに触れられまいとしていたのに。
何か妬いちゃうぜ。

「る…るし、その褐色イケメンは誰?」
「この半裸はヴィネ。すっごく強い。ギムレットもそうだけど、【鑑定】しても殆どがハテナマークになる」

どうだ、凄いだろう?とニヤリと笑うヴィネ。
6人はポカンとした顔で玄関に佇む。

「るし様、そして皆様方、ユニオンハウスについて詳しく説明致しますので、立ち話も何ですから、中に入ってください」
「そうだね。皆、行くよ」
「…るし…やばい…」
「だな」
「るしだぜ?」
「るしさん、かっけぇ」
「流石僕のるしぃ」

「「はぁ??」」

ジャンヌとギムレットの声が重なり、早速セスの悲鳴?が家に響き渡った。
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