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蟷螂
しおりを挟む向日葵の花びらの隙間から太陽の光が差してくるお陰で、奥の方まで見渡せる。
そんな向日葵の森は少し不気味だった。
ジメジメしているとか、暗いとかそういうものじゃない。
不気味なのだ。
「師匠…嫌な感じがする…。なんていうか、ピリピリしている感じ」
半神人であるセタンタが言うのだから間違いはないだろう。
多分だけど、3日後のイベントと何か関係がありそうだ。
「まだ大丈夫だと思うから先に進もう」
「師匠、やっぱり僕もモンスターと戦うの?」
「うん。強くなるには実戦あるのみだからね」
「少し、怖いなぁ」
セタンタは実戦経験がない。
少なくとも、一緒に戦えば少しは場慣れ出来るだろうし、経験値も積めてLvも上がるだろう。
「セター僕達がいるから安心だー」
「そうだぜ?俺らがいる限りは大丈夫だからな」
「う…うん!僕、頑張るっ!」
2人の励ましでセタンタも勇気が湧いて来たみたいだ。
一行は不気味な森を進む。
進んでいると、前方に大きな鋭い鎌が見えた。
「皆!戦闘態勢っ!!」
大鎌の持ち主は木々の間からその姿を現した。
体長4m。
黄緑色の皮膚に黄緑色の目。
細長い首とは真逆にでっぷりとした腹。
両手には特徴的な鋭利な刃。
こいつは、蟷螂だ。
カッコイイ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種族 カマッキリー♀ ☆3
Lv 7
HP 600/600 MP 200/200
パッシブスキル
・捕食者(食べれば食べるほど強くなる)
・威圧
アクティブスキル
・空斬撃(距離6m以内にいる相手に斬撃を放つ)
・夫呼ぶ(夫に助けを求める)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
強そうだ。
下手するとフィールドボス並ではないだろうか。
「Kisisisisisisiiiiiiii!!!!」
カマッキリー♀は大鎌を振り上げて斬撃を飛ばしてきた。
見える斬撃なら切れる。
「残月ッ!」
シャン
こちらは見えない斬撃を飛ばし、相手の攻撃を相殺させる。
スキル名を叫んだのは、セタンタの前でカッコつけたかったからだ。
「師匠っ!凄いです!!」
「だろ?」
「Kisisisisisisiiiiiiiiッッッ!!!」
カマッキリー♀は自分の攻撃が相殺されたことに怒り沸騰している。
「ジン、ウォッカ、2人はセタンタの補助をしながらカマッキリー♀を攻撃。セタンタは初めての戦闘だからカマッキリー♀の攻撃パターンをしっかり見て、攻撃出来そうなら攻撃して。無理は禁物だよ。私は空斬撃を相殺しながらカマッキリー♀に攻撃。以上!征け!」
「「「了解!」」」
4人は地を蹴る。
カマッキリー♀が再度【空斬撃】を使うが、私がそれを相殺する。
「Kisisisisisisiiiiiiii!?」
赤い薔薇と水、そして茶色の血が踊る。
「せいっ!」
セタンタが槍で腹を突く。
「Kiiiiiiii!!!」
怒ったカマッキリー♀がその強靭な足でセタンタを蹴り上げようとする。
セタンタは腹に刺さった槍を抜こうと必死で、命を脅かす攻撃が迫らんとしている事に気が付いていない。
「セタンタッ!!」
「は、はいっ!?」
呼びかけに自分が命の危機に晒されていることに気付いたようだが、それはもう遅かった。
ドガッ
宙を舞い、ゴロゴロと地面に転がったのが見えた。
痙攣を起こしているのが見える。
「ウォッカ!!!」
攻撃を食らったのはウォッカだった。
カマッキリー♀の足がセタンタを蹴る瞬間に間に入り、セタンタの鎖帷子を掴んで安全な場所に投げ、自分は防御の姿勢をとる前に吹っ飛ばされたのだ。
HPは残り3割まで減っていた。
急いでウォッカに駆け寄り、ポーションを傷口にかける。
「ぐ……。あ、るし……?セタンタは…?」
「大丈夫だよっ!ウォッカ、しっかり!」
「ウォッカぁ!!ごめんなさいっ!僕がよそ見してたからぁ。…うぅっ」
「…ったく。俺らがいる限りは大丈夫っつったろ?」
「うわぁぁん……」
「ウォッカー大丈夫ー?」
「Kisisisisisisiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiirrrrrr!!!!」
放置されていたのが癪に障ったのか、カマッキリー♀は空に向かって雄叫びをあげた。
ザワザワと木々が揺れ、何かが近づいてくる気配がした。
「Kisisisisisisiiiiiiii」
「Kisisisisisis?」
「Kisisisisisisiiiiiiiiiiiirr?」
「Kishy。」
「Kisisisisisissssssssss!」
カマッキリー♀より一回り小さいカマッキリーが5体現れた。
リアルと同じ感じならば、カマッキリー♂だろう。
カマッキリー♂を呼んだこのスキルは【夫呼ぶ】に違いないのだが、それにしても夫多すぎるだろ!
逆ハーかよっ!
夫達のステータスはどうなっているんだ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種族 カマッキリー♂ ☆3
Lv3
HP 500/500 MP 150/150
パッシブスキル
・夫の宿命(妻の叫びが聞こえると、助けに向かわなくてはと、勝手に体が動く。)
アクティブスキル
・攻撃力上 (戦闘の間、攻撃力が上増しされる。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【夫の宿命】…。
夫も大変ですね。
カマッキリー♂は、♀を守る形で陣取っており、2体は♀の防衛、他3体は攻撃の構えを取っている。
「ウォッカ、行ける?」
「あぁ。全開だ。心配かけたな」
「そか。良かった。皆、敵は増えたけど、一体ずつ倒していけば問題ない!…多分 (ボソッ)」
「「「おう!」」」
まずは前衛を倒していこう。
駆けながら前衛の3体に目掛けて【残月】を放つ。
シャン
シャン
シャン
「Kisisisisisisiiiiiiii………」
3体のうち一体が真っ二つに裂けた。
「あれ?」
クリティカルヒットとかかな?
他2体は大鎌で身を守ったけど…。
何はともあれラッキーだ。
だけど…心が少し、何故だかモヤッとした。
「師匠凄いです!」
「ありがと!でも余所見はダメ!」
カマッキリーの大鎌が先程いた場所を切る。
ジンとウォッカは自身の身軽さを生かして大鎌の上を走り、カマッキリー♂の首を落とす。
「僕も師匠達の役に立つんだ!ホーリー・ガン!!」
セタンタの周りに光る弾丸のようなものが30発ほど現れ、一斉にカマッキリー♂に向かっていった。
「Kisisisisisisiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii………」
これで前衛はいなくなった。
さて、最後は……。
一瞬、目の前の光景を見て体が竦んだ。
後衛で防衛を徹していた2体のカマッキリー♂が見当たらない。
いるのは何かを齧っているカマッキリー♀のみ。
そいつの周りには茶色の血と触覚、無惨な羽、大鎌、目、何かの欠片が散乱していた。
…少し考えれば分かることだ。
カマッキリー♀はスキル【捕食者】で強くなろうとしているのだ。
夫を食べてまで。
ギョロりと双方の目で睨みつけてくる。
齧っていた何かを乱暴に投げ捨て、咆哮をあげた。
「Kisisisisisisisissisisissssssssss!!!」
【捕食者】によって身体が強化されたようで、サイズが一回りも二回りも大きくなって今や体長は6mに届かんとしており、森から頭を突き出せる感じになっている。
「皆!更に強くなってるから注意して!」
さらに大きくなった大鎌が私達を目掛けて振り下ろされた。
咄嗟に避けようとするが、セタンタは恐怖で臀部を地面につけてしまっており動くことが出来ないでいた。
「スティール・ラック!!」
ガギィンッ
「~っ!!」
余りの重さに膝をつく。
軍服を着ていない今の私だと受け止めるのに精一杯だ。
「ジン!セタンタを退かして!」
「分かったー!」
セタンタが退いたのを確認し、大鎌を受け流す。
「フラッシュ!」
「Kisisisisisisiiiiiiiiッ!?」
目が眩んだ隙に身体を支えている足に何発か攻撃を入れ、付け根から切り落とす。
支えるものがなくなり、カマッキリー♀はバランスを崩して転倒した。
「ジン、ウォッカ、セタンタ!最後行くよ!」
「「おう!」」
「は、はい!」
奮闘したモンスターの生命は儚く散った。
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください』
『Lvが一定のLvになったことにより、スキル【テイム】のテイムモンスターを一人増やすことが出来ます。現在、2体増やすことが可能です』
『Lvが一定のレベルになり、かつ、特定条件をクリアしたことにより、スキル【確率死】を習得しました』
待て、一気に来すぎだ!!
『“ジン”のLvが上がりました』
『“ウォッカ”のLvが上がりました』
『NPC“セタンタ”のLvが上がりました』
皆Lv上がったね!やっふぃー!
セタンタのLvが3上がってもうLv5に到達してるよ。。
成長期だね。
…さて、ログを見ようか。
何か非常に大事なことを言ってたからね。
まずは【テイム】について。
現在、モンスターを2人追加することが出来るようになったらしい。
ということは、モンスターから望まれた場合はその2人とは別に【テイム】出来るようだ。
次にスキルだ。
Lvと特定条件で習得できたらしい。
今回の特定条件は、運が500以上のことだ。
Lvが足りなかったから今まで習得出来なかったのだろう。
【確率死】…確率で相手を即死させる攻撃が出来る。
おおぅ。
パッシブスキルで即死ですか。
真っ二つに割れたあのカマッキリー♂のような感じでしょうか?
これはいいスキルだ。
ピンチの時に来てくれると助かるやつだね。
画面を見てニヤニヤしていると、セタンタが目に涙を溜めてやって来た。
「師匠。あの、その、…さっき、助けてくれてありがとうございます。僕、役に立てなかった…」
「ん?セタンタは初めての実戦だったから仕方ないよ。しかも、途中でカマッキリー♂を単独で倒してたじゃん?カッコよかったよ。だから、セタンタは十分に役に立ったよ?」
「そだよー。セター良かったー」
「だな。初めてにしちゃあ良くやったと思うぜ?失敗したと思うんなら次にその失敗を生かせばいい」
「失敗を次に生かす…」
その言葉をセタンタが何度も呟く。
「ウォッカ!僕、今回の失敗を次に生かせるように頑張るっ!!」
「あーウォッカ?それ、ヴィネの言葉ー」
「馬鹿っ。それ言うなっつの。折角俺の名言にしてセタンタに渡そうと思ったのに」
時刻は1時。
「皆、そろそろご飯にしよう」
「待ってたぜ!デヒテラさんの飯!!」
「涎出るー」
「お母さんのご飯…ジュル」
「ここは危なそうだし、花びらの上にでも行こうか」
セタンタを背負い、【登り上手】を使って茎を登り、花びらの上に到達。
そして、愛のこもった出来立てホヤホヤのお弁当を広げた。
「「「「いただきます」」」」
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