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世界戦 決勝
しおりを挟む『さぁさぁやって参りました!!世界戦ラスト試合!!世界1になれるのは誰だァ!!日本代表、軍服、るしVS 日本代表、天使、Noel全力を賭して1位をもぎ取れぇぇぇ!!!』
『これに勝てば世界1!!貴方がたのどちらかが、この世界のプレイヤーの中で1位です!!』
1位。
今更だけど、世界戦という重みを感じる。
静かな熱を孕んだ場内。
堕天使と大天使は石畳を上がる。
最初から翼をonに。
【神域拡張】を黒に。
【王の威圧】もonに。
満月を構える。
『go!!!』
「…発光!!」
Noelの身体が発光し、一瞬目が眩む。
その隙にNoelは動き出す。
目が戻ると、
「…浄化…」
トン、とNoelの手が身体に触れていた。
直後触れられている場所から青白い光が湧き、痛みが放たれた。
「ぎぃ……すでぃーるらっぐぅぅう!!!」
触れているなら運を盗むことは容易いこと。
だが、浄化のじわじわくる痛みが全身をのたうち回る。
痛みで意識が飛びそうだ。
このままじゃいけないって分かっているのに、身体が動かない。
「…まだ…いくよ…?」
「んなっ!?」
Noelの右手の光が集まり終わっていることに気づいた。
ヤバイ!!
何とかその場から離れようとする。
「……衝撃光…」
私の頭に光を伴った手が触れた。
ドゴォォォオンンン!!!
身体が吹っ飛ぶ。
チカチカと世界が変わる。
何度も地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がる。
気分はおむすびころりん。
穴に落ちちゃいそうだね。
頭がどうかなりそうだよ。
ほんと。
…痛い。
何処が?
頭が。
体が。
特に頭が。
頭はあるの?
ある筈だよね?
まだ生きているよね?
視界がボヤける。
さっきの光で目が大分やられてしまったようだ。
HPを確認すると残り2割になっていた。
ということは、まだ生きているということ。
痛む身体を叱咤して頭を、顔を触る。
ドロっとした熱いものと、硬いものが。
触れたところは空気に当たってやけに痛い。
もしかして、頭がやけ爛れていたり?
骸骨が剥き出ていたり?
それは危ない。
空気中のバクテリア?とかが感染するかも。
フラフラする頭を振り被る。
ポーションを取り出そうとしたその時、
「…まだ…生きてたの?」
腹に衝撃が走って、飛ばされる。
コロコロコロコロおむすびころりん。
「かっは……」
立ち上がろうとするもそれを許されず、間髪入れずに蹴りを入れてきた。
チラリと右手を見ると、また輝き出していた。
グイッと汗を拭うと白かった手袋に血が。
いやぁ、ここまで来てこんなに追い詰められるなんて思わなかったなぁ。
HPは3割まで回復していた。
次【衝撃光】を食らったら即死だ。
「…そろそろ…終わりそう…だね…」
顔を上げるとNoelがいた。
「馬鹿…こふっ…まだまだだ!!」
「…るし…私の…奥義…で…死んで?」
Noelは私がもう死にかけなのが分かったのか、早々に奥義を使うらしい。
「…終焉のラッパ…」
天使がラッパを持って天から舞い降りてきた。
その幸せそうな顔、気に入らないね。
神様を心から慕っているなんて馬鹿みたいだよ。
次々とラッパを唇に付け、指揮者が棒を振るうと悲しい音色が流れてきた。
本当に悲しい歌だね。
「ああああああああああああ!!!!」
私は叫ぶ。
「ああああああああああああぎいいい!!!!!」
叫ぶ。
「のおぉえぇあえるるるぅぅぅぁ!!!」
Noelの名を呼ぶ。
頭を抱える。
耳を塞ぐ。
膝を震わせる。
膝をつく。
地に伏せる。
音色で頭がパンクし、倒れた者に近寄る。
「…るし…バイバイ」
Noelが倒れた者の頭に触れようと手を伸ばす。
その距離、残り3cmとなった時。
倒れていた者が、ガッとNoelの右手を掴んだ。
ソイツはニヤリと笑った。
それをみて、Noelの背筋が凍った。
今までの中で1番怖いと思った。
ゴキゴキゴキっ
掴まれていた手が、有り得ないような音を立ててNoel自身に向いた。
「…なっ!?」
ドゴォォオン
自身の攻撃によって吹っ飛ばされるNoel。
その間に立ち上がり、自らにポーションをかける。
HPが8割まで回復した。
「かふっ…けほっ…なん…でぇつ!?」
ヨロヨロと立ち上がる天使。
【残月】を放つ。
シャン
シャン
シャン
シャン
Noelは二振りを回避したが、後の二振りに直撃してしまう。
「…ぐ……ぅああああっっつ!!!」
ぼとりと右手が落ちた。
腹は裂け、内臓が落ちてきそうになっている。
てらてらと、腸が夕日に反射して鈍く光っている。
「…な……っなんでぇぇっ!!!」
必死に腸を身体の中に戻そうとする。
身体が震えて何度も手から腸が滑り落ちる。
「…なんでえっづつ!!!」
慟哭が会場に響く。
嗚咽が聞こえる。
「…あと…あともうぢょっどだぁだのにぃい!!」
左手でポーションを取り出そうとするが、その左手も、ポーションを出す前に飛んでいった。
「あ…ああああああああああああ!!!!」
ギリギリと奥歯を鳴らし、両手を失った状態でもなおも向かってくる。
「…まげ…られなぁい…」
フラフラとした足取りで。
大量の血を流しながら。
もう勝てないと分かっているはずなのに。
死んだも同然だというのに。
…だけど、彼女の目は死んではいなかった。
寧ろ、更なる炎を讃えていた。
その炎はある時のジンを思い出させた。
「良き試合であった。私も危なかったぞ?」
そう言って、向かってきたボロボロのNoelの首を跳ねた。
『試合しゅーりょぉぉ!!!!勝者、日本代表、軍服、るし!』
「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああ!!」」」」
『ここまでお疲れ様でした。るし選手、Noel選手、素晴らしい試合、ありがとうございました。この後、表彰式と授与、閉会式が行われるので上位10名は場内に上がってください』
わらわらと各世界の代表者達が上がってくる。
チョイチョイ、と軍服の裾を引っ張られた。
「…るし…お疲れ…ありがと…おめでと…」
負けたばかりだと言うのに、相手を賞賛出来るこの子は何だ?
天使か?
「ありがと。いい試合だったね」
ポンポンと頭を撫でる。
Noelは頭の上に置いてある私の手をそのまま掴み、プクッと頬を膨らませた。
「…嘘…るし…強かった…いい…試合じゃ…ない?」
目を赤くして、ふるふると身体が震えている。
あぁ、そうか。
この子は誰かに甘えたいんだ。
褒めて欲しいんだ。
「…Noel、よく頑張ったね。凄く強かったよ」
ギュッと小さな身体を抱きしめる。
「…っ」
小さな嗚咽が聞こえる。
私は彼女の背中を摩った。
『世界戦の、表彰式、授与式、閉会式を同時に行います。
第10位、ウクライナ代表、ミケ・アルフ。
貴方には金貨1000枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第9位、アルゼンチン代表、ロウザンフ
貴方には金貨1200枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第8位、ギリシャ代表、ソリステア
貴方には金貨1400枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第7位、 アメリカ代表、アーノルド
貴方には金貨1600枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第6位、アフリカ代表、モブ
貴方には金貨1800枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第5位、日本代表、ヴェティヴィエルズ
貴方には金貨2000枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー1億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第4位、日本代表、カイン
貴方には金貨2500枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー2億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第3位、日本代表、ジャンヌ
貴方には金貨3000枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー3億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第2位、日本代表、Noel
貴方には金貨4000枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー4億、ここで得られた名誉を贈呈する。
第1位、日本代表、るし
貴方には金貨5000枚、金の宝箱を一つ、ガチャ券を100枚、欲しいスキルを一つ、リアルマネー5億、ここで得られた名誉を贈呈する。
また、『Live Online』は日本で作られたので日本のお金を基準とします。リアルマネーは各国の単位に応じて換金しますので、心配はご無用です』
ピロリん。
『金貨5000枚
金の宝箱×1
ガチャ券×100
欲しいスキル引き換え券×1
リアルマネー5億
名誉
以上のものが贈呈されました』
おぉ!!
運営様、太っ腹です。
…ごおく?
…5億…。
何か、よく分かんない。
『皆様、ここで「金の宝箱を開けよう」企画を開催したいのですが、宜しいですよね?』
司会さん、その笑の向こう側は冷めてますよね?
目が笑ってないです。
受賞者達は皆一様に頷く。
『では、アイテムボックスから取り出してください!!』
皆の目の前に金色の宝箱が並ぶ。
絶景かな絶景かな。
『出しましたね?では!10位の方からどうぞ!☆5以上は確定ですよぉ!!ただ…☆5が出やすいんですけどね。(ボソッ)』
10位の人が恐る恐る宝箱を開いた。
『おーとお!?その剣は☆5の魔剣ですね!おめでとうございます!』
9位の人が開く。
『お、それも☆5!雪弓ですね!綺麗ですねぇ』
8位の勇者が開く。
「俺は、多くを望まない!」
ガチャっ
『んー、微妙な☆5の雷剣ですね!あれ、刺さるとビリビリするんですよー!あ、健康にいいかもしれませんね!!』
7位の人が開く。
『お、それは☆6!おめでとうございます!名は五月雨。振ると、水が飛び散る!!』
6位の人が開く。
『あ、それは☆5でしたね。妖精の弓・改…ドンマイ』
5位のヴェティが開く。
『ん?おー、それは…剣杖ですね。☆5です!!魔剣杖!!ロマンありますねぇ』
4位のカインが開く。
『お、それまた防具で……☆6っ!!おめでとうございます!名は勇者の鎧!ヒュー!!君は今日から勇者だぜ!』
勇者君がキッとカインを睨む。
3位のジャンヌが開く。
『聖女の鎧!しかも見習いだァ!!☆5!』
2位のNoelが開く。
『お、それはナックル!!☆5!亜竜の鈎爪!!』
1位の私が開く。
ガチャ
中には黒い物体が。
『お…ああああああああああ!!そ…それはっ!何でそんなもの出るの!?不思議卵!』
司会さん?
ちゃんと教えてください。
まぁ、ここは自分で【鑑定】するしかないね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種類 卵 ☆?
名前 不思議卵
……世にも不思議な何かの卵。何が生まれるかは生まれてからのお楽しみ。
※アイテムボックス収納不可。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆?だって?
…何が生まれてくるのか楽しみだ。
『いやぁ、るし選手の運はほんとどうなっているのでしょうか。私、人生の中で一番驚きました。さて、次なる企画は「自分の仲間を場内に呼んで、一緒に有名になろう」です。どうぞどうぞら皆様会場にいる仲間を及びください』
「Miechー!!」
「フランシスコー!」
「ヨミサ・ナルー!!ゼブラ!」
「リヨンー!!」
「アイラ!!カミナル!!クロウマオ!!」
『ん?日本代表達は仲間を呼ばないのか?』
「…私…ソロ…」
「俺は放浪の身だからな」
「僕も」
「人と馴れ合うのは性に合わないのです」
「プレイヤーじゃなくてもいいですか?」
『はい、大丈夫ですよー。もしかしてNPCさんと共に冒険ですか?いいですねぇ。夢が広がります!』
私はここまで応援してくれた4人の名を呼ぶ。
「ジン、ウォッカ、ギムレット、ヴィネ!!」
観客席から誰かが立った。
ギムレットだ。
続けてジンとウォッカ、ヴィネが立ち上がる。
4人はゆっくりと階段を降りてきた。
キラキラと光がギムレットを先頭にゆっくりと幻想的に包みんこんでいく。
1歩進む度に光が舞い、ギムレットの足元からは花が咲く。
光が揺れ、徐々に服が変わっていく。
閉まっていた美しい透明な羽が顕になる。
ジンとウォッカの服が小さな和服に変わる。
ヴィネの服が真っ黒のスーツに変わる。
ギムレットの服がキラキラを零しながら淡い水色と透明のグラデーションのかかった透ける服に変わる。
ゆっくりと進み、とうとう私の元まで来てくれた。
「ちょっとやりすぎじゃないの?(ボソッ)」
「ふふふ、これくらいでいいんですよ。(ボソッ)」
…ギムレットさん、透けすぎです。
目の保養と、毒の両方が揃っています。
『……。はっ…つい、見蕩れてしました。男なら分かりますよね?この気持ち。ていうか…何で貴方達がここにいるのでしょうか?…さて、最後となりましたが、今大会を終えての感想、はたまた、これからやりたいことを一言お願いします。』
「俺はー」
10位の人から準々に回り、私のところまで来た。
皆の視線が熱い。
特に日本代表達の視線が熱い。
分かってるって、言えばいいんでしょ?
司会からマイクを受け取る。
「私達、日本代表5人で、ユニオンを組むことにした。以上」
「「「「えーーーーー!!!!??」」」」
『…世界ランク5位以上の全員がユニオンですか…これはユニオン戦が荒れそうですね。
コホン。
さて、運営代表の閉会宣言を短く完結に言います。長い話は嫌いですからね。
プレイヤーの皆様、世界戦、楽しんで貰えたでしょうか?まさかの日本が椅子を5つも占領するとは思ってもいませんでしたが、こういうことが起こるということも一つの醍醐味。今後も世界戦が開かれる時は、どうぞよろしくお願いします。今回、世界戦が成功したのは貴方方プレイヤーのお陰です。本当にありがとうございました!!』
「「「「わーーーーーー!!!!!」」」」
ある酒場にて。
「「「「「おつかれー!」」」」」
日本代表が揃って宴を開いていた。
鎧やら軍服やらではなく、普通に店で買った服で語り合っている。
皆顔を赤くさせている。
勿論、場酔いというやつだ。
私は飲んでないよ?
飲んでいるのは…。
「私は聖職者ですが、お酒は大丈夫です」
「僕は成人しているからね」
「お…俺…酒弱いんだよな」
だ。
もれなく私とNoelはオレンジジュースで我慢している。
私も早く成人してお酒の味を知りたい。
酒の名前と知識はあるけどあと少しで飲めないのは年齢のせいである。
あと2年…。
あと2年…。
「なぁ、ヒック…ユニオン作ったらさ、鍛冶士とかユニオンハウスとかどうすんの?…ヒック」
カインが酒に逆上せながら聞いてきた。
鍛治士?勿論宛はありますとも。
「私、友達にいい鍛治士がいるんだ。その人を誘おうと思ってる」
「そうですか。では、ユニオンハウスはどうします?」
「…あれ…高い…でも…お金…たくさん…ある?」
確かにお金が沢山あるね。
勿論それをはたいて何処か土地を買うつもりだ。
ユニオンハウスについてもギムレットにはあることを相談しておいたので、上手くいくだろう。
「お姉ちゃんに任せなさい!」
ドンッと胸を叩く。
「…良かった…」
スリスリと寄ってくるNoel。
あぁ、本当に可愛いわ。
数時間後、家に帰って4人で宴をした。
「ギムレット…色んなもの作りすぎじゃない?身体に負担とかないの?」
「ふふ、対価は昔十分に支払いましたので制約や呪いの類などは一切ありませんよ?」
そうか。
それなら良かった。
余りにも強力過ぎる力には必ずしもと言ってもいい程の制限があるのだから。
「あ、ギムレット例の件はどう?」
「ふふ、いいと思います」
「家って移動できたんだね…」
「ふふふ。やれば出来るものですよ?」
こうして宴は夜遅く、朝まで続いたのだった。
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