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世界戦②
しおりを挟む『本日の試合は午後6時からになっております。遅刻しないようお気をつけ下さい』
今日は試合まで随分と時間があるな。
私も皆と一緒に家でテレビを見てようかな。
「ダメだ。汝は試合を生で見てこい」
「何で?」
「やはり、生で見る方が肌で凄さを感じられるだろ?」
うん、一理ある。
だけど私はゴロゴロしたいんだ。
「るし様、私もるし様と一緒にいたいのですが、ここは心を鬼にして言います。るし様は見に行くべきです。勝てるか心配になるような人がいるなら、寧ろ見に行って研究するべきです」
ここでギムレットの追撃。
確かに勝てるか心配な人がいる限りは見に行った方がいいよね。
カインはともかく、他の日本代表が強すぎる。
「わかった。2人の言う通りだよね。じゃあ、行ってくる!」
「はい!あ、お弁当です」
「研究してくるんだぞ!」
2人がお父さんとお母さんのように見えてくるよ。
昨日と同じ代表席に座る。
今日は日本代表席には私しかいないようだ。
いやぁ、他国からの視線が突き刺さりますね。
だが、大丈夫だ。
家でしっかりと心のケアを行って来ましたから。
もう鉄のハートです。
…ガラスと鉄の間くらいかな。
『次の試合は日本代表、聖女、ジャンヌVSポルトガル代表、鋼鉄、リッツ!!』
え、ジャンヌ?
これは見なければ。
ジャンヌは確か、【魂の断罪】っていうスキルを使っていた。
あのスキルは何らかの使用制限があるのだろうか。
帰ったら博識のヴィネに聞こう。
戦いはすぐに終わった。
ジャンヌは開始の合図とともに、大きなハンマーを掲げ、物凄いスピードで相手に迫った。
相手は、剣でハンマーを受け止めようと防御の姿勢をとる。
…実際、防御は成功した。
成功したのだが、防御出来たのは最初の一撃だけである。
初撃を受け止めた瞬間、さらにニ撃、有り得ないスピードで腹に攻撃を入れられていた。
ジャンヌは多分、筋力と俊敏力に極振りしているな。
でなければ、あんなに大きなハンマーは持てないだろうし、あんなに早くは動けないだろう。
ハンマーを【鑑定】したところ、必要STRは60~だった。
これは確定だね。
多分これは空を飛んでいれば避けられ…って、武器を投げられるだろうし、もしかすると、筋力のお陰で高く跳べることが出来るかもしれない。
どう対策を立てれば…。
ジャンヌはハンマーを振りかざし、さらに攻撃を入れ続ける。
「神よ、罪ある魂をどうか御国にお連れください」
罪ある魂って…。
聖女のような笑を讃えながら、ハンマーを振るう姿に戦慄を覚える。
とうとう衝撃に耐えられなかったのか、相手プレイヤーが地に倒れる。
それに、これでもかと言うくらいハンマーで殴りつける。
ベキッ
バコッ
数分後、ハンマーによってペチャンコになった相手プレイヤーは、まるで圧殺プレス機によって押しつぶされたような無残な姿にになっており、そのまま金色の粉に変わっていった。
十字をきり、ジャンヌが代表席にやって来た。
「お疲れ、ジャンヌ。魂を救えた?」
「はい、救えました。まさか見ていたのですか?恥ずかしいです」
と言って頬を染める。
「横座る?」
「よろしければ」
こうして、日本代表席に仲間が増えた。
「ヴェティが次の試合のようですね」
「そうみたいだね」
『いやー!時間が経つのは早いなぁ!!お次は、日本代表、煉獄、ヴェティヴィエルズVSフランス代表、暴風、ヨンドル!!』
フードを深くかぶったヴェティと、相手プレイヤーが石畳の上に現れた。
どちらとも見るところでは魔術士。
どう戦うか楽しみだ。
それに、研究もしなければ。
「ファイア!!!」
「ウィンド!!!」
2つの魔法がぶつかり合う。
その衝撃で、爆風が場内を吹き荒れた。
「アタック・アップ!」
ん?攻撃力を上げた?
魔法の威力を上げるなら精神力であるMNDを上げるべきなんだけど。
ヴェティは杖を構え、相手プレイヤーに突っ込んでいく。
相手の【風魔法】が飛んでくるが、それをひらりひらりと避け、さらに進む。
ま…まさかっ。
「く…くるなぁ!!」
「ディフェンス・アウト!」
相手の防御力を下げて…。
ゴンッ
杖で頭を殴った。
頭を抑えてフラフラ揺れる相手プレイヤー。
それに追撃として五殴り。
「火柱」
止めとばかりに火の柱を立てる。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
殴られ、焼死。
…。
ヴェティ、杖の使い方間違ってない?
杖って、魔力を上げるための媒体とかそういうのじゃなかったっけ?
うん、何故か杖が金属バットに見えてきたよ。
「おー!るしとジャンヌ!僕の試合どうだった?」
「杖って殴るもんなんだね」
「勉強になりました」
日本代表席にヴェティが加わった。
ヴェティは見る限りでは、バランスよくステータスに割り振っている気がする。
少し多く振っているとしても、魔術士だからMNDくらいだろう。
【流星群】は、詠唱を中断させれば何とかなるだろうと踏んでいる。
もし、最後まで詠唱されて、魔法が完成してしまったら、満月の【残月】で降ってくる隕石を切れば勝てると思う。
今のところ、脅威はNoelとジャンヌだ。
この2人をどうにかしない限り、確実な勝利は拝めなさそうだ。
ツンツン、と頬をつつかれる。
「…るし…呼ばれてる…よ…?」
「ん…天使?」
「…そう…だけど…起きて…?」
っと、寝てたみたいだ。
「呼ばれてるって、誰に?」
「…試合…?」
その言葉を聞いた瞬間、意識が一気に覚醒する。
「…今…5時…56分…」
「ふぁ!?」
や、やばい!
試合に遅れる!
「Noel!起こしてくれて、ありがと!!」
急いで場内に出る。
「遅れて登場とはなぁ。あ?随分と余裕じゃねぇか。軍服さんよぉ。おちょくってんのか?」
おぉう…。
海外のチンピラさんだ。
「すまない、寝ていたよ」
「ア゛ア゛?」
こういう系の人って、海外にもいるもんなんだね。
何か、新鮮だ。
『お、来ましたね。さて、次の試合は、日本代表、軍服、るしVSアルゼンチン代表、挑発、ライナーノ!!昨日から日本のエグい攻撃が続いているのですが、果たしてライナーノ選手は日本の進撃を食い止めることは出来るのでしょうか!!』
『ここまで来て日本勢は誰1人としてかけていませんねぇ。何故一国がここまで強いのか正直不思議でたまりません!!』
私も何で海外勢がこんなに弱いのか不思議でたまりません。
おし、今回は水精霊の双剣を使おう。
満月ばかり使っていると、拗ねちゃうからね。
『go!!!』
「かかってこいやぁぁ!!!」
了解です。
殺りに行きます。
満月を仕舞って水精霊の双剣を取り出す。
「シャットアウト!!」
相手の視界を奪う。
「くそっ!何をしたんだ!!卑怯者っ!」
急に視界が暗くなって動転したのか、ハチャメチャに剣を振り回している。
まず、一振り目で相手の武器と自分の武器を交じ合わせて、動きを止める。
二振り目で武器を落とすために右篭手に剣を叩きつける。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
叩いたつもりが切り落としてしまったようだ。
「俺の、俺の手がぁぁぁぁぁッッッ!!!」
そして、三振り目で、首を鎧の上から切り落とす。
相手プレイヤーは防具の耐久値がとてつもなく低かったようだ。
「弱い犬ほどよく吠える」
『試合しゅーりょぉぉぉぉぉ!!!今回もエグい試合でしたねぇ!!バッサリと手を切り落とすところはゾワッと来ましたね!!』
『ですねぇ。あの双剣切れ味高すぎですね!これはもう日本勢の進撃を止めることが出来る国はいないのかもしれないですね!!』
試合後、代表席の方にいる仲間達に向かって手を振り、そのまま家に帰った。
「ヴィネ、ジャンヌの攻略法分かる?私が見る限りだと彼女は筋力と俊敏力に極振りしているように見えたんだけど。」
「その通りだ。あの小娘の攻略法はただ一つ。汝が持っている神槍を使う。ただそれだけだ。【魂の断罪】は、光に生きるものは傷を食らわないが、闇に生きるものにとっては大傷だ。…まぁ、使われる前に神槍で殺せ、だな。Noelとかいう大天使と同じくらい強いな。だが、汝にとってはあの小娘の方が天敵に当たるな。」
…。
ジャンヌとは戦いたくないな。
でも、もし当たったら、【暗闇】、神槍、【時間停止小】の3コンボで仕留めるしかない。
「勝ちたいな。」
ポツリとそんな言葉が漏れた。
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