35 / 127
予選②
しおりを挟む今日からは冬休みだ!
ふふふ。
リアルではボッチかまくら作るぞー!!
昨日は屋台を回ってすぐにヴィネと対人戦の練習をした。
身体中が痛いなぁ、そんな気がする。
ピロリん。
『本日の予選は午後1時からになっております。遅刻しないようお気をつけください。』
「今日は1時から予選かぁ。」
口からため息が漏れる。
「ほほう?1時からなら充分に対人戦の練習が出来るではないか。」
しまった…近くにヴィネがいたのを忘れていた。
「今日はもういいかなぁ。」
「1日の鍛錬を取り戻すには1週間必要だと聞いているぞ?なに、死ぬことはあるまい。ここには回復できる湖があるからな。」
ヴィネはスパルタだ。
ビシバシと私を叩き、地に伏せさせる。
くそぉ。
いつか勝ってやるんだからなぁ!
私は大太刀をヴィネに振るう。
ヴィネは木で作った特製の片手剣で簡単に凌ぐ。
「るし様、腰が引けてますよ。ほら、もっと集中して下さい!」
ギムレットもスパルタだ。
昨日の試合を見て大層興奮したとか。
指摘してくれるのは有難いのだが、上手くいかない。
センスないなぁ。
「るしー!頑張ってー!」
「気絶したら拳骨なっ!」
ジン…ありがと。
ウォッカ…最近私の扱いが雑になってきてないか?
っと、ヴィネが余所見してるや。
チャンスだな。
「せいっ!」
「甘いっ!!」
ヴィネに避けられ、さらには足を引っ掛けられて顔から盛大に転ぶ。
「うぶっ。」
もう涙目だ。
でも、ここで諦めたらプライドが廃る。
私は大太刀を握りしめて、再びヴィネに立ち向かっていくのだった。
これを1時前までやるのかと思うと、気が遠くなった。
『予選2日目の第10試合目だぁ!!そろそろ数が少なくなってきたかな?でもまだまだ減らすっ!!日本一はまだ遠いぞっ!!』
『さぁて、選手(プレイヤー)の皆様っ!!場内に上がってくださーい!!』
2回目の試合だ。
強い人たちが集まってきているのだろう。
ドキドキが止まらない。
大観衆の目が恐いよ…。
『全員上がったな?じゃあカウントを、開始する!』
きた…。
『5』
武器を握る手に汗が染み出す。
『4』
出来るだけ、隅に寄ろう。
『3』
見渡す限りにはあの魔術士はいないみたいだ。
『2』
心臓が早鐘を打つ。
『1』
覚悟を決めろっ!!
『go!!!』
「「「「ウォォォォォォォォォ!!!」」」」
ゴゴゴゴゴッ
突如として、遠くの方で地面からゴーレムが生えてきたのが見えた。
多分錬金術士の仕業だろう。
近づかないでおこう。
ドガァァンッ
拳1振りで数人のプレイヤーをノックアウトさせているのが見えた。
うっわぁ。
ご愁傷様です。
私もあれ食らったら一気に体力が削られそうだ。
「スティール・ラック!!」
ゴーレムに圧倒された、近くにいたプレイヤーの首を狩る。
どんなに防御力が高くとも、それは防具の力であることが多い。
その為、殆どの場合は首を目掛けて思いっきり振ると、一撃で倒せることが出来る。
だが、たまに、倒せないやつもいる。
それが、今私が相手をしているプレイヤーだ。
種族はヒューマン。
多分だけど、防御力に極振りしている。
全然刃が通らない。
こういう奴は場外に吹っ飛ばすべきなのだが、生憎私の攻撃力が足りない。
満月(みちづき)を使えば楽勝なのだが、予選で使う気は無い。
相手も私と同様で、敏捷力が低いのか、追ってくるスピードも遅い。
てことで、ここは戦略的撤退だ。
他のプレイヤーのところに行こう。
「おい、待て。逃げるのか?」
ここは普通に、
「逃げる。」
こんな奴の相手はしてられないのだ。
隅を移動しながら運を盗んでいく。
急に辺りが暗くなった。
周りのプレイヤー達が逃げていく。
はて、どうしたのやら、と上を見上げると、ゴーレムでした。
「ふぁっ!!」
全力で逃げましたとも。
えぇ、全力で。
後でヴィネに殺されるね。
トホホ。
逃げ遅れた数人のプレイヤーが薙ぎ倒されていく。
あー、恐ろし。
ふと前を見ると、防御極振り君の所まで戻ってきていた。
「やぁ、さっきぶり。」
「ゴーレムから逃げてきたのか、ダッセェ。」
なんだコイツ、憎たらしい。
「俺だったらあんな奴倒せるけどな。」
ほぅ、有言実行だな、はよ行け。
「アイツを倒すにはアンタの力が必要だ。」
「はぁっ!?」
コイツ、何を言い出すかと思えば、共闘だと?
怪しい。
「俺はアンタを殺さない。アンタも俺を殺さない。これでどうだ?」
ここはコイツの案に乗るしかないな。
あのゴーレム倒さないと、勝ち越せなさそうだし。
「…わかった。で、どうやって倒すんだ?」
コイツには隙を見せられないな。
背中を刺されそうだ。
「アンタ、騙されやすそうだよな…。まず、俺があのゴーレムの攻撃を受け止める。んで、俺が止めている間にアンタがゴーレムのコアを破壊する。」
「コア?」
「そうだ。あのゴーレムの胸元に、宝石が埋まっているのが見えるだろ?あれがコアだ。あれを破壊すると、ゴーレムは動かなくなる。分かったな?」
「ほーん。何で君がそれを知っているんだ?」
極振り君はニヤリと笑う。
「俺、初めての役職、錬金術士だったんだよね。」
なるほど。
なら納得できる。
「じゃ、鎧さん、行くぞっ!」
「わかったよ。行くよっ極振り君!」
2人は駆け出した。
今もてる全力疾走で。
全然早くないけど。
ゴーレムの攻撃が迫ってくる。
ドゴンッ
それを極振り君が受け止めた。
「俺のことは放っておけ!後は任せたぞっ!!」
そのフラグ立ちそうな言葉言ってみたかったんでしょ?
ニヤニヤしてるよ。
「任せてっ!」
私は大太刀をコアの部分に突き刺す。
なかなか刃が通らない。
「まだかっ!?」
「まだっ!!」
「俺、他のプレイヤーにも攻撃されてて辛いんだけど。」
振り返ると、極振り君が魔法やら何やらを食らって、体力を少しずつ減らされているのが見えた。
「ぐあっ!!」
極振り君の悲鳴が上がる。
ありがとう。
「君の死は無駄にしないよ!」
「死んでねぇっ!!」
ありゃ、さいですか。
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ピキッ
「もう少しで行けそう!」
「頼む!俺ちょっとやばいかも。」
極振り君の体力が半分を切っていた。
これは急いだ方が良さそうだ。
大太刀でコアを突く。
突く。
突く。
突く。
ピキキッ
「やめろぉぉぉぉ。」
ゴーレムの中から声が聞こえる。
ははーん、なるほど。
術者は中にいるってことか。
なら、
「せいっ!」
渾身の力で大太刀で突く。
ピキキキッ
パリンッ
ガラガラガラ
ゴーレムが崩れた。
中から中年で小太りのオッサンが。
「ひぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!」
容赦なし。
慈悲なし。
「そいっ!!」
首を狩る。
ふー、これでもう大丈夫だな。
他のプレイヤーを狩りに行こう。
「おい、助けろっ!!」
おっと、極振り君のこと忘れてた。
「ごめん、忘れてた。」
「おおいっ!?」
極振り君を襲っているのはおよそ3人。
内ひとりは魔術士か。
厄介だ。
まずは、剣士から。
私は大太刀を構えて剣士に突っ込んで行く。
まさか極振り君を助けるとは思っていなかったようで、動揺している。
「スティール・ラック!!」
剣で相手の剣を弾き、腹部に一撃。
【運盗み】が効いたようで、魔術士の魔法に自ら当たりにいった。
「おいっ!避けろっ!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「お前、何しやがった!!」
「いや、その人がフラフラして貴方の魔法に飛び込んでいっただけじゃないですかっ。」
これで1人は片付いた。
もう1人の方は極振り君が何とか頑張っているから、残るは魔術士のみだ。
大太刀を構えて魔術士に突撃する。
「やめろっ!降参だっ!!降参っ!」
こういう手の奴は後から、「嘘だよー」とか言って、背中を指してくる種の奴だ。
ここは確実に首を跳ねておかなくては。
「やめっ、やめっ!!ひぎゃぁっ!!」
首が飛んでいく。
私が1番痛みを感じさせずに殺す方法がこれだ。
仕方ない。
極振り君の方はどうかというと、かなりの僅差で勝ったようだ。
ポーションをゴクゴク飲んでいるのが見える。
周りを見ると、残り私を含めて6人になっていた。
うち2人はタイマンで戦っており、他の4人は遠目の観戦をキメている。
真剣勝負を害するような人はいないようで何よりだ。
『しゅーりょぉぉおう!!本日予選第三試合目、ご苦労様でしたっ!!いよいよ明日は本戦出場をかけた最後の戦いだぁ!!!』
『皆様っ!!明日のためにも英気を養っておいて下さいね!!それでは、本日11試合目は午後2時からになっております!!10分後、またお会いしましょう!!アデュー!』
帰ってから、ヴィネにコッテリと絞られました。
1
お気に入りに追加
1,321
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる