28 / 127
服を買おう
しおりを挟む広場を抜けて大通りに出る。
人が多くて迷子になってしまいそうだ。
大通りには屋台などはなく、お店がいっぱい並んでいる。
ちなみに、町並みはヨーロッパ風だ。
日本ではまず見ることが出来ないであろう、隙間のない敷き詰められた家々を見て、毎回感動せずにはいられない。
いやぁ、いつ見ても美しい町並みだ。
「外国だぁ。」
「がいこくって何~?」
「がいこくっていう場所にいったことがあるのか?」
「んー。行ったことはないんだけど…ちょっとね。」
「「ふーん。」」
服屋を探していると、視界に靴屋の看板が目に入った。
おもむろに自身の履いている靴に目をやると、ところどころに穴が空いていて、靴底は酸を踏んだ際に溶けており、ボロボロの状態であった。
ジンとウォッカは…って、靴履いてないじゃん!
気付かなかったよ。
擦り傷とかは付いてないみたい。
でも、安全の為には必要だよね。
「2人とも、服を買う前に靴屋さんに寄ろう。」
「えー。」
「靴か。俺は別に必要ないのだが。」
あれ?好感触を期待してたんだけど…。
何でだろ。
…。
ま、いっか。
「入るよー。」
「…うん。」
「…おう。」
ガチャ
「いらっしゃいませ。」
爽やかな笑顔を浮かべた店員さんが迎えてくれる。
店には様々な靴が置かれていた。
スニーカー
ローファー
ブラッチャー
サンダル
コーン・ヒール
スリッポン …etc
プーレーヌまで置いてあった。
「好きな靴を選んでおいでー。」
「「はーい。」」
嫌がってた割には、楽しそうに自分に似合う靴を探す2人。
微笑ましい光景だ。
さて、私も靴を選びに行こう。
初心者装備のこの靴にはお世話になった。
だけど、これで街を歩くにはちょーっと頂けない。
履くなら黒の靴がいいなぁ。
時間を掛けて、ジンが選んだ靴は、基本白に紫の線が入っているスニーカーだ。
お値段、銀貨8枚。
ウォッカの選んだ靴は、基本黒に赤の線が入っているスニーカーだ。
お値段、上と同じく銀貨8枚。
私が買った靴は、ボタンアップ・ブーツだ。紐ではなく、複数のボタンで留めあげるブーツで、色はモチのロンで黒だ。お値段、金貨2枚。
総額、金貨3枚と、銀貨6枚。
私が一番高いのは、気のせいだと思う。
うん、気のせいだ。
早速新しい靴を履いて、店を出る。
2人は少し歩きにくそうにしている。
「僕、靴なんて履いたことないから、変な感じがするよ。」
「俺も初めて履いたけど、なんかこう、締め付けられる感じがするな。でも、足の裏が汚れないのはいいことだと思うぞ。ありがと、るし。」
そうか、2人とも元はゴブリンだったから靴を履く習慣がないんだね。
うんうん、初体験て感じのやつだね。
「るしー。服屋さん見つけたよー。」
「おー!ありがと!」
そのまま服屋さんの看板が掛けてあるお店に入った。
「いらっしゃいませ。」
「「「…っおお。」」」
ものすごーく驚いた。
一瞬見ただけだけど、品揃えが豊富だったし、何より、可愛い服からかっこいい服、渋い服までが置いてあるのが見えた。
だがしかし、驚いた本命はこっちだ。
店員さんに、驚いた。
身体はムッキムキで、身長は2mをゆうに超えており、その身体にピチピチに貼りついている白いTシャツ。
そして、青い短パン。
角刈りの髪に、厳ついのに、何故か爽やかさを醸し出している笑顔。
第一印象が強すぎだ。
「どうされましたか?お客様。」
「はっ…。いえ、すみません。大丈夫です。」
「「です。」」
「そうですか。では、ごゆっくり。」
あまりの衝撃にフリーズしてしまっていたようだ。
横を見ると、ジンとウォッカも固まっているのがわかる。
「ジ…ジン、ウォッカ、服を選んでおいで。」
「…ムキムキ。」
「お…おう。あの兄ちゃんいい体してるな。俺もムキムキになりてぇ。」
店員さんのことは一回置いといて、服を選ぶのに戻ろう。
黒いのがいいなぁ。
「るしー。これどーお?」
ジンが、グリーンワームのシルエットが入った、緑色のTシャツを持ってきた。
「…元の場所に戻しておいで。」
「えー。…分かった。」
少ししょんぼりしながら服を元の場所に戻し、新たな服を探し始めるジン。
なんでグリーンワームなんかを選んだのだろう。
不思議だ。
もしかして、グリーンワーム好きなの?
「るし、俺のはどうだ?」
どれどれ。
ウォッカが持ってきたのはグリーンワームが敷き詰めて描かれている虹色のTシャツだ。
「OUT。」
「えー。」
これまたしょんぼりした顔で服を戻しに行くウォッカ。
その際に、ウォッカの口角が上がっているのを私は見過ごさなかった。
コイツ…わざとだな。
覚えとけよ、ウォッカ。
最終的に選んだ服は
ジンが、フードの付いた白のポンチョに青いズボン。
お値段、金貨1枚と銀貨6枚。
ウォッカは、猫耳フードがついた黒のポンチョに青の短パン。
お値段、金貨1枚と銀貨8枚。
私は、黒のタンクトップに黒のズボン。
お値段、金貨2枚。
総額、金貨5枚と銀貨4枚。
…。
すいません。高いの買っちゃいました。
いそいそと店内で新しい服に着替える。
ボロボロの初心者装備と、2人の服をアイテムボックスにしまう。
これは思い出が詰まった大切なものだからね。
「皆様とても似合ってますね。」
店員さんがニカッと白い歯を見せる。
厳ついはずなのに、爽やかに感じるのは何故ですか?と聞きたいけど、聞いたらダメだろう。
そう思いながら店を出た。
「またのご来店お待ちしております。」
「今日はもう帰ろ?」
「うん。この服チクチクしないから好きー。」
「おう。俺もチクチクしないから好きだな。ギムレットさんが待ってるし、早く帰ろうぜ。」
「うん、てか、ウォッカの猫耳可愛い!」
「僕は?僕は?」
「ジンも可愛いよー。」
グリーンワームの服の仕返しに猫耳を触ってやろう。
「ちょっ、やめろよっ!やめろって。耳触んな!」
はぁ~、可愛い。
「るし!おい、ジン助けろっ。」
「ずるいー。」
「可愛いよーウォッカー!」
「うわぁーーー!助けてぇぇ。」
ギュー
「やめてぇぇぇ。」
「嬉しいくせに~。」
ゴンッ
「~~~~っっ!!」
ウォッカに頭に拳骨を貰った。
私のHPバーが5分の1削られた。
思いっきり叩きやがってぇ。
「たこ焼き買え。」
コキコキと腕を鳴らしてウォッカが怖い笑みを浮かべながら、私の頭に拳を近づけようとする。
「はい。調子に乗りました。ごめんなさい。」
「あ、僕はクレープ!」
ジン…どさくさに紛れて何買ってもらおうとしてるのさ。
帰り道に広場に寄り、たこ焼き3個クレープ3個カステラ20袋買ってから、家に帰りました。
カステラのお値段は1袋銅貨2枚です。
「あ、防具買うの忘れてた。」
「「あ。」」
「明日でいっか。」
「そだね。」
「だな。」
心の喪失感は少し埋まった気がした。
0
お気に入りに追加
1,320
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おしとやかな令嬢だと思われていますが、実は王国内で私だけ無限にスキルを取得できるので、裏では最強冒険者として暗躍しています。
月海水
ファンタジー
表の顔はおしとやかな令嬢。
でも、裏の顔は赤いフードを被った謎の最強冒険者!?
エルバルク家の令嬢、キリナは他に誰も持っていない激レアスキル『スキル枠無限』の適正があった。
この世界では普通なら、スキル枠はどんな人間でも五枠。
だからできることが限られてしまうのだが、スキル枠が無制限のご令嬢は適正のあるスキルを全部取得していく!
そんなことをしているうちに、王国最強の人間となってしまい、その力を役立てるため、身分を隠してこっそりと冒険者になったのだった。
正体がバレないよう、こっそり暗躍する毎日です!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる