運極さんが通る

スウ

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武器を買おう

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ログインすると、ジンがトテトテッと寄ってきた。
「おはよう、ジン。」
「Gehi。」
挨拶を返してくれるとは、やっぱりジンは頭がいいようだ。
私が起きたのを確認したジンは、自分のベッドに戻ってコロコロと転がる。
微笑ましい…微笑ましい?光景だ。
そんなにベッドが気に入ったの?なら良かった。
今日は土曜日だから、一日中ログイン出来るっ!
ジン~今日はずっと一緒に居るからね~。
   

さて、昨日確認出来なかったアイテムを見るとしよう。

    
アイテム                      〈入手順↓〉
○スライムジュエル  ×3  ☆1             
○幼虫糸  ×11  ☆1
○ゴブリンの耳  ×1  ☆1
○石  ×3  ☆1
   
武器/防具
○闇の追憶  (装備中)  ×1  ☆8  ※紛失不可
○姫の王冠  ×1  ☆6  ※紛失不可

所持金
金貨3枚
銀貨5枚
銅貨9枚


アイテム増えたなあ。
うはははは、財布も潤いましたな~!
くるしゅうない!
   
おっと、浮かれてる場合じゃなかった。
性能の確認しなくちゃね。
   
○姫の王冠…装備者の現在のMNDを+40する。
                とある国のお姫様の冠。
                ※紛失不可               ☆6

おー!MNDを+40か。 
ありがたや~。
ちょうど困ってたんだよ。
早速装備しよう。

MND  0→40

アイテムボックスから取り出してみる。
黒い王冠だ、個人的には可愛いと思う。
私はそれを頭の上に乗せる。
「ジン、どう?可愛い?」
ジンはジッと私の頭に乗っているであろう王冠を見つめる。
数秒後、
「Ga!」
似合ってる!と言わんばかりに、手を叩く。
うへへへ。
そうかそうか、似合ってるか。
お世辞でもありがとね、嬉しいよ。
頭を撫でてやろう。
うりうり~。
「Ga?」
慣れるとジンの顔も可愛く見えて…は来ないけど、愛着度が上がるね。
   
そういえば、武器がボロボロになってたんだった。
ヒビ割れと、無数の亀裂が走ってるよ。 
剣よ…なんか、ごめんね。
そんなに荒く使った覚えは無いんだけど…。
だけど、何回かはスライムの強酸で溶けかけてたね。
本当にごめんね、もうちょっと優しく使ってあげたら良かった。
   
剣に謝ること数秒。
さて、アルザスさんのところに行こう。
鍛冶士だし、友達だし、格安で作ってくれるはずだ。
多分、公共の工房に居ると思う。
居て欲しいな。
いや、居てくれ。
   

   
   
   
工房の扉を開けた瞬間、モワッもわっとした熱気が押し寄せてきた。
まるでサウナに居るみたいだ。
よく脱水症状とかにならないな。
そういうスキルとかがあるんだろうか?  
公共の工房というだけあって、人が溢れかえっているな。
皆集中して、各々の武器や防具を作ってる。 
その技巧に 、ついつい見惚れてしまう。
だって、こういうの見たことないんだもん。
それにしても、音が心地いい。 
火花のパチパチッて音と、槌で防具や武器の形を整える音、カンっカンって音が刻みよく聞こえて、心が弾む感じがする。
…はっ。
アルザスを探しに来たんだった。
何処にいるんだろ。
うーん……残念なイケオジ…何処やねん。
当然、大声で名前を叫ぶ勇気はない。
だって、ね?
人見知りだし。
あと、集中して作っている人の迷惑になるからね。
目を凝らしていると、奥の方に居る人と目が合った。
あ、居た。
アルザスだ。
口を大きく開いて、
え…ダメダメダメ。
ここには仕事に集中してる人が沢山いるよ?
そんなことしたら……
「おーい!!るーしーさぁーん!!」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛。
大声で呼ぶのやめてっ!
他の人の迷惑になるよ!
作業をしていた鍛治士さんたちが顔を上げて、怖い顔してこっちを見てくる。
ご…ごめんなさいいいい!!!
おのれ…アルザス…覚えてろ。
外に出て、とジェスチャーを送ると、すぐに走ってきてくれた。
   
「で、るしさん。何か用ですかい?」
そんなキラキラした笑顔向けても許さないぞ。
「…実はアルザスに、剣を作ってもらいたくて来たんだよ。」
アルザスは更に顔を輝かせたが、すぐに暗い表情になった。
どうしたのかな。
「るしさん…俺もできればるしさんに剣を作ってやりてぇ。だけどよ、俺たち鍛治士は自分の工房を持てるような1人前になるまでは、プレイヤーに武器や防具、オーダーメイドを作ってはいけないっていうルールがあるんだ。…本当にすまねぇ。俺は命を助けて貰った見だってのに。」
そうだったのか。
鍛治士も大変だね。
他に当たるしかないか…
「ただ、変わりと言っちゃぁなんだが、オススメの武器屋を紹介させて貰いてぇ。これぐらいしないと…な。そこの武器屋の店長は、NPCなんだが、とてもいい奴で、売り出している武器がこう…なんていうか…輝いて見えるんだ。だから、その…な?武器はそこで買って欲しい。」
アルザスや。
そんな悲しい顔しなさんな。
鍛治士ルールは大事だからね、仕方ないよ。
「分かりました。武器はそこで買いましょう。」
「そうか、それは良かった…。」
良かった…って、全然そんな顔してないじゃん。
はぁ、仕方の無いやつだなぁ。
「アルザス、自分の工房を持てるようになったら、言ってください。その時は、格安で私とジンの武器を打って下さいね。それで今回の件はチャラで。」
ふっ、どうだ?
「…っ分かった!!そん時は、俺がるしさんと、ジンさんの武器を格安で作る!何が何でも作ってみせるぞ!」
おっしゃ!言質はとったからな!
アルザスの調子も元に戻ってよかった。
   
かくして私はアルザスから教えて貰った武器屋に向かうのでした。




いつもは通らないような曲がりくねった細い道を進む。
周りの建物が日の光を遮ってて目の前の道を遠くまで見渡すことが出来ない。
道なりに進んで来たが、人の気配がまったくしなくなった。
私とジンが歩く音しか聞こえない。
暗いし、お化けが出そうな雰囲気がある。
ゲームだし、幽霊なんていないよね、そうだよね。
……居て欲しくない。
 私の嫌いなものランキングの、ベスト2位にお化けがランクインしてる。
1位はもちろん幼虫である。
いわずとも、わかるであろう?
「gehii….。」
ビクッ
ジンさんや…そんな低くて小さい声を漏らさないで頂けないでしょうか…。
私の心臓が悪くなりそうです。
   


アルザスから貰った地図を見ると、だいたいこの辺にある筈なんだけど…。
さっきから何回も同じ場所を通っている気がするのは気のせい?
「Gehi!」
ジンが見つけてくれたみたいだ。
気のせいだったみたい。
なにせ、同じような建物が敷き詰められてたからね…。

例の武器屋さんは、建物の壁と壁の間に挟まれていて、ひっそりと佇んでいる。
趣があると思います。
少しも錆びていないドアノブに手をかけて、ゆっくり回す。 
                        
      ギィッ

恐る恐る暗い店内に足を入れる。
その瞬間パッパッパッと店の明かりが灯る。
外見からは想像出来ない広さに驚いた。
空間そのものが拡張されているような感じだ。
壁には美しい剣が飾ってあり、樽の中にはチュートリアルで渡されたような剣がいっぱい刺さってた。
気になったので【鑑定】して見る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種類  ロングソード  ☆1
ATK攻撃力  10
VIT耐久値  18   …必要STR0~
QUA品質  A
……初心者専用の最初に持つべき武器。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ほほう。
耐久値は18だったか。
どおりで強酸性攻撃で溶けた訳だ。
でも、チュートリアルでもらった剣と比べてキラキラ度が高い。
多分、品質が高いからだと思う。
確かに、アルザスの言ってたとおり剣の1本1本がキラキラしている。
全部品質が高いようだ。
「ほぇ~。」
刀身の色が青い剣や、装飾が凝っているものもある。
飾ってある剣に思わず見とれてしまう。
ここなら何時間でもいれそうだし、剣を見つめていても飽きないだろう。
リアルにこういう場所ってきっとないだろうからね。
   
「見ない顔だな。何か用か?」
店の奥からずっしりとした人が出てきた。
その人は髭がモジャモジャで腕が太く、身長が150cmあるかないかの人だった。
この人こそが、私の思い描いてたドワーフだ。
良かった…ドワーフ本当にいたんだ。
居ることは知ってるよ?アルザスだってドワーフだし。
でも、ドワーフっていう体型じゃないから、私にとってはドワーフモドキなのだ。 
体重重そうだな…
筋肉かな?それとも脂肪が詰まって…?
「お前さん、失礼なことを考えていただろ?冷やかしにでも来たのか?」
「い…いえ!友達のアルザスに紹介されてきました。私と、ゴブリンのジンの武器を購入したいのですが。」
ここで、アルザスが友達であるということを匂わせておくのがいいと思う。
信頼関係を築くのは最初が大事っていうからね。
「ほう…。アイツの紹介か。なら、悪いやつでは無さそうだな。俺はダンデスだ。宜しくな。」
ほらね。
思惑通りだ。
お名前を聞くことが出来たのは思わぬ収穫だ。
「私はるしっていいます。今日は宜しくお願いします。」
「おう。で、るしさんのジョブはなんだ?それと、そこのゴブリン、ジンの使う武器はなんだ?」
「ジョブは剣士です。ジンの武器は……。」
ジンの使う武器は何なんだろう。
棍棒とかかな?
「ジン、何か使いたい武器ある?」
ジンはトコトコと、武器探しに行った。
そして、壁に掛かっていた二振りの剣を指した。
棍棒じゃなかったんだね…。
先入観に囚われていたよ。
しかしその剣、お値段がなかなかお高そうですね。
「あの武器がいいそうです。」
「ほぅ…。ジンは双剣を選ぶのか。なかなかやるな。だが、それはちと高いぞ?」
ダンテスさんは面白いと言わんばかりに目を光らせる。
「ちなみにいくら位ですか?」
「金貨5枚と銅貨3枚だ。」
「…武器の種類はこれで、安いものを。あと、予算は二人合わせて金貨3枚でお願いします。」
高い!高すぎるよ!
全財産をかけても足りないよ。
「了解した。ちょっとそこで待ってろ。」
いそいそと店の奥の方に行き、4本の剣と、3組の双剣を持ってきた。
   4本の剣は形状、大きさ、重さ、そして色が若干違う。
   3組の双剣は、全て同じに見えるのは私の目が悪いからかな?
   「さて、まずはるしさんからだ。どれがるしさんに合ってるのか俺には分からん。堕天使という種族は初めて見たからな。だから、質量や形状の違う剣を奥から持ってきた。勝手に【鑑定】した事については謝っておく。だが、武器屋としては、買ってくれるやつに合わせてどんな剣をチョイスしたらいいか教えるためにしたことなんだ。だが、さっきも言った通りるしさんの種族は見たこともないからな。どの剣を選ぶかはお前さん次第ってことだ。取り敢えず、1本ずつ試しぶりをしてみてくれ。」
ダンテスさん…【鑑定】を使うとは、出来る人だ。
お客さんを大事にしてるってことが分かった。
アルザスの言う通り、いい人だ。
   


まずは1本目。
この剣は刀身が黒く、大きさは2mほどある。
重さは20~30kgはあり、厚みは5cmほどかな。
さながらモン○ハンの大剣みたいだ。
【鑑定】を使ってみよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種類  重剣  ☆1
ATK  20
VIT  20  …必要STR0~
SPD  ー5
QUA  A
……初心者が次に進む段階に選ぶ大剣。攻撃力はあるが、大きく、重いため、SPDが下がる。

お値段…金貨1枚と銀貨7枚
   
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

振り上げると、ブォン  って風を切る音が鳴る。
これを食らったらすごく痛そうだ。



2本目。
この剣も刀身が黒く、大きさは2mこそいかないものの、かなり大きい。
形状は刀に近い。 
いや、刀と言ってもいいのかもしれない。 
重さは15kgほどでら厚みは1cm。
1本目のやつよりかは軽い。
だから、折れないかどうかが心配だ。
「大丈夫だ。折れやすくはねぇよ。」
…ダンデスさん?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種類  大太刀  ☆1
ATK  18
VIT  16  …必要STR0~
QUA  A
……初心者が次に進む段階に選ぶ大太刀。バランスが良い刀である。だが、何故か不人気である。

お値段…金貨1枚と銀貨6枚

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

刀身の腹が反っていて、重剣よりも刃が鋭いから扱いには注意しなければいけなそうだ。
間違って自分を切ったらシャレではない。
「その剣は間違って自分を切っちまうやつが多くてなぁ。何でか売れないんだよ。」
…さいですか。
多分それが原因だと思います。



3本目。
こ…これは!レイピアじゃないか!!
すっごく軽い。
レイピアというと、突き刺すって感じがする。 
うーん、私は切る専門だからな…あってない気がする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種類  レイピア  ☆1
ATK  12
VIT  15  …必要STR0~
QUA  A
……初心者が次に進む段階に選ぶレイピア。主に突き出して攻撃する武器である。

お値段…金貨1枚と銀貨3枚

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

性能がさっきの2本と比べてすべてが劣って見えるのは気のせいだろうか?
「レイピアはな、さっきの2本と比べて性能が低い代わりに相手の急所を付きやすいんだ。これは、上級者向けだな。」
私は初心者なんで、遠慮しときます。
…ダンテスさん?心が読めるのかい?



4本目。
これは刀身が短いから、短剣だね。
短剣は刀身が短いから使いたくはないなぁ。
長い方がかっこいい気がするし、何より返り血をいっぱい浴びそうなんだよね。
ただ、手軽なのはいいと思うよ?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

種類  短剣  ☆1
ATK  11
VIT  15  …必要STR0~
QUA  A
……初心者が次に進む段階に選ぶ短剣。接近戦を主にする。

お値段…金貨1枚と銀貨3枚

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

性能はレイピアとどっこいどっこいだな。
「短剣も先に見た重剣と、大太刀より性能が低くて、レイピアとどっこいどっこいだ。だが、短剣は片手で持てて、かつ相手の懐に飛び込んだ際には技をかますことができる。絞め技とか、投げ技とかだな。まぁ、一口にいえば格闘技だ。」
ダンテスさんはこっちを見て、ニヤリと笑う。
確信犯だ…。
この人…心を読んでやがる!
「別に心を読んでるって訳じゃねぇ。るしさんの顔に書いてあるんだよ。」
そ…そうだったのか…
そんなに顔に出てたか…これからは気をつけなくては。
「そうだな。今度からは気をつけろよ?それで、使いたい武器は決まったか?」
…もう顔に出てたのか…。
「そうですね…。大太刀で行こうと思います。」
「そうか。るしさんはこれを選ぶのか。なかなかいい選択だな。」
ダンテスさんは嬉しそうに目を細める。
「おし、次はジンさんの番だ。」
   
  
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