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バベルの塔と欲望の巡礼者
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ピエロから出してもらったバベルの塔の説明からの抜粋。
欲望の巡礼達。バベルの塔の一部であり、白い街の骨格を支えるもの。人間の体から出発し、シデの川、もしくは三途の川を過ぎて、バベルの塔とその麓に点在する白い街に行き着く。この場所において各々の欲望を好きなだけ成就するさせる。バベルの塔は彼らの聖地である。
バベルの塔のなかでは、巡礼者は元の紙の姿に戻り、整理整頓された収納箱に入り、そのなかで他の巡礼者達と結びつく。その結びつきが本来不可視である、バベルの塔と白い街を確固たる存在として生み出す。白い街において全ての欲望は成就される。一日に一度、欲望の巡礼者は己に刻まれた、欲望を白い街において叶えることが掟である。叶われた欲望はすなわち、架空の果たされた欲望となり、架空の思い出となり、バベルの塔を出たときに可視性の特性をもって、巡礼者の手元に確かに存在する。
正しい巡礼者とは常に欲望を、全ての者と隔たりなく共有でき、またそれによって新たな欲望を自らのうちに書き込むことが出きる者である。よって架空の思い出は集落によって売買されなければいけない。
バベルの塔の最上階に君臨するのは、現世の人間を支配する概念達である。その王座に数世紀もの間、君臨し続けるのは金銭欲。また金銭欲の眷属には民主主義や社会主義などが控えている。王座の隣、女王の座には運命という女が君臨している。王と王妃の家臣達には、性欲、物欲、食欲、睡眠欲、惰性、憤怒、嫉妬、労働、支配、名誉、生命、永遠、未来、過去、宗教などがいる。これらの家臣の下には、それぞれの歴史における象徴的な有像無形の文化、出来事、秩序、事件である。王と家臣を含む不可視の肉体の大きさは、巨大という語では足らず、大きさではなく、むしろ広さを持ち、それぞれ一つが一つの惑星に匹敵するほどの広大さを有している。また彼等を通して人間は、ここから隔たりのある現世で存在している。概念達の不可視の目を覗きこむことができるのなら、その先に広がる無数の人達の日常を見守る、三人の女神が見えるはず、日常という女神、日々(歴史)という女神、生活という女神。これらの女神が手に持ち、紡ぐ見えない糸は切れることはない。人間社会という祖神によって守護されている。
巡礼者に寿命という劣悪なしきたりはない。しかし時というものは存在し巡礼者の内側、いやバベルの塔の内部にまで蔓延っている。時間に侵され続けた巡礼者は、いくら新鮮な架空の思い出を満喫しても、喜びで満たされることがなくなり、次第に新たな欲望を抱くことも、刻むことも不可能になり、やがてはあらゆる姿を維持することも出来なくなる。そうなるとバベルの塔にも白い街から消え去ってしまう。色褪せ、小さくなり、皺がより、どこかの街路にて吹き飛ばされる古紙という最後を迎える。
欲望の巡礼者が時間によって古紙という最後を迎える以外に、もう一つ古紙になる道がある。それは不可解な道ではあるが、現象として認知されているので記載しなければならない。欲望の巡礼者は、それぞれの欲望にその身を浸し続け、快楽に溺れている。快楽は幸せである。幸せは満足である、なので常に充たされ不足はない。現実とは違い、制約、規制はない。背徳とされる欲求も充たされる。しかしなぜか突然にして、飽くことのない欲望の器を空にしてしまい、うつろになり、枯れ花のように萎れ、ついには枯紙(古紙と同意義)になり死んでしまう。
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つまりバベルの塔は様々な概念が住まう、扉的な性質をはらんだ建築物である。
欲望の巡礼達。バベルの塔の一部であり、白い街の骨格を支えるもの。人間の体から出発し、シデの川、もしくは三途の川を過ぎて、バベルの塔とその麓に点在する白い街に行き着く。この場所において各々の欲望を好きなだけ成就するさせる。バベルの塔は彼らの聖地である。
バベルの塔のなかでは、巡礼者は元の紙の姿に戻り、整理整頓された収納箱に入り、そのなかで他の巡礼者達と結びつく。その結びつきが本来不可視である、バベルの塔と白い街を確固たる存在として生み出す。白い街において全ての欲望は成就される。一日に一度、欲望の巡礼者は己に刻まれた、欲望を白い街において叶えることが掟である。叶われた欲望はすなわち、架空の果たされた欲望となり、架空の思い出となり、バベルの塔を出たときに可視性の特性をもって、巡礼者の手元に確かに存在する。
正しい巡礼者とは常に欲望を、全ての者と隔たりなく共有でき、またそれによって新たな欲望を自らのうちに書き込むことが出きる者である。よって架空の思い出は集落によって売買されなければいけない。
バベルの塔の最上階に君臨するのは、現世の人間を支配する概念達である。その王座に数世紀もの間、君臨し続けるのは金銭欲。また金銭欲の眷属には民主主義や社会主義などが控えている。王座の隣、女王の座には運命という女が君臨している。王と王妃の家臣達には、性欲、物欲、食欲、睡眠欲、惰性、憤怒、嫉妬、労働、支配、名誉、生命、永遠、未来、過去、宗教などがいる。これらの家臣の下には、それぞれの歴史における象徴的な有像無形の文化、出来事、秩序、事件である。王と家臣を含む不可視の肉体の大きさは、巨大という語では足らず、大きさではなく、むしろ広さを持ち、それぞれ一つが一つの惑星に匹敵するほどの広大さを有している。また彼等を通して人間は、ここから隔たりのある現世で存在している。概念達の不可視の目を覗きこむことができるのなら、その先に広がる無数の人達の日常を見守る、三人の女神が見えるはず、日常という女神、日々(歴史)という女神、生活という女神。これらの女神が手に持ち、紡ぐ見えない糸は切れることはない。人間社会という祖神によって守護されている。
巡礼者に寿命という劣悪なしきたりはない。しかし時というものは存在し巡礼者の内側、いやバベルの塔の内部にまで蔓延っている。時間に侵され続けた巡礼者は、いくら新鮮な架空の思い出を満喫しても、喜びで満たされることがなくなり、次第に新たな欲望を抱くことも、刻むことも不可能になり、やがてはあらゆる姿を維持することも出来なくなる。そうなるとバベルの塔にも白い街から消え去ってしまう。色褪せ、小さくなり、皺がより、どこかの街路にて吹き飛ばされる古紙という最後を迎える。
欲望の巡礼者が時間によって古紙という最後を迎える以外に、もう一つ古紙になる道がある。それは不可解な道ではあるが、現象として認知されているので記載しなければならない。欲望の巡礼者は、それぞれの欲望にその身を浸し続け、快楽に溺れている。快楽は幸せである。幸せは満足である、なので常に充たされ不足はない。現実とは違い、制約、規制はない。背徳とされる欲求も充たされる。しかしなぜか突然にして、飽くことのない欲望の器を空にしてしまい、うつろになり、枯れ花のように萎れ、ついには枯紙(古紙と同意義)になり死んでしまう。
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つまりバベルの塔は様々な概念が住まう、扉的な性質をはらんだ建築物である。
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