増幅使いは支援ができない

aaa

文字の大きさ
上 下
4 / 100
日常から、異世界へ

宣言

しおりを挟む

俺は、何が起こったかわからないまま、瞑っていた目を開けていた。

大理石?か何かの白く美しい素材で出来た建物で、ステンドガラスのようなものから入る光はとても美しい。見渡してみると、この建物の巨大さがわかる。雰囲気も見た目も、本で見た大聖堂とそっくりだ。

俺たちは、台座のような場所に全員集まっており、みんな呆然として辺りを見回している。

見るからには、あの教室にいた全員が巻き込まれてしまったようだ。
一部が、これ異世界召喚じゃねみたいな事を楽しそうに言っているが、よくわからん。
そういえばバックとかもこっちにあるみたいだ。よかった、親父の形見もちゃんとある。

まずこの状況を把握するためには、俺たち以外の人間を探す必要があるのだが……いた。

台座の前に、いかにも王女様って感じの美人が一人、そして見るからに神官な人が十人という感じだ。両方ともなにかすごく喜んでるのが見える。

「よくおいでくださいました、勇者様、そしてお仲間の皆様。」

こんなことを言われても、まだこちらは呆然とするばかりだ。王女様の美貌に魅せられている男子もいるが……

また、「テンプレか?」「テンプレだな」なんて声も聞こえる。よく分からんが余裕があるのはいいことだ。

そんなこんなで、騒ぎが少し収まったところで、

「申し訳ない、僕たちに何が起こったのでしょうか?」

隼人が言いたい事を言ってくれた。
分かっていたかのように王女は小さく頷くと、

「貴方方には私たちを救っていただきたいのです。詳細は国王が話しますので、ついてきてくださいますか?」

隼人もとりあえず従うことにしたようだ。他も隼人に同じかな。

「待ってください。私たちは元の所へ帰れるのですか?」

と、声をあげたのは雫だ。うん、確かに気になるな。

「そのことについても、国王がお話いたしますので……」

雫はそれを聞いて分かりましたと言うと、それ以降は誰も質問はなかった。

そうやって、俺達は、たどたどしくも王女と神官についていったのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


歩く事10分程、俺達は、長い机とイスがある、大広間に通された。
壁には、歴代の国王の似顔絵が並んでいる。

こんなのアニメぐらいでしか見た事ないが、実際に見るとすげーな……

そして、国王と思われる人物が出てきたのだが、いい感じのおじい様って感じだ。

「始めまして、皆様。混乱されているとは思いますが、全部説明させていただきますので、お聞きくだされ。」

と、国王はすべて話してくれたのだが、要約するとこうだ。

この世界は、サテトと呼ばれており、ファンタジーでよくある魔人族と獣人族、精霊族、他多種族が人間以外にいる。

このおじい様は、人間の中で一番権力を持つ国である、『王国ヴィクトリア』の国王で、名をグスタフ・アドルフ。

案内してくれた王女の名は、マーリンという。

人間は、魔法を使うために必要な、魔力と呼ばれる魔法を発動させるためにいるエネルギー的なものの貯蔵量が少なく、あまり数を打てない。また、強力な魔法を打てる人物は少なく、使える人間が限られている。しかし、数では他の種族より圧倒的に多い。

魔人族は人間と比べ、肉体も強靭、魔力も平均的にかなり上で、人間一人では魔人族一人にはまず勝てないといわれているが、種の数が人間より少ない。

獣人族は魔力が他と比べ少ないが、肉体が他の種族とは一線を越えている。魔力が少ない分、それで補っているといった感じだ。
こちらも人間より数が少ない。

地理的な面では、陸が多いが海もあり、環境は地球と一緒らしい。

人間は東を支配し、魔人族は西を支配している。

獣人族は、南に存在する世界樹と呼ばれる大きい樹を中心に、生活をしているらしい。

精霊族は各地で細々と生活しており、その姿を見るものは、そうそういないとされている。

北は、海を挟んで巨大な島となっているが、大地では作物は実らず、空はずっと曇った状態という、劣悪な環境であるために誰も住んでいない。このことは大昔からそう言われており、かれこれ千年は誰も足を踏み入れていない。

動物は普通に地球と同じような形をしたものも生息しているが、魔物とよばれる、異形の生物もおり、それらはダンジョンと呼ばれる魔力のたまり場から生まれてくるとされているが、正体は分からないようだ。

人間と魔人族は、昔から戦争をしていたのだが、これまでは人間が数で勝ち、魔人族側が質で勝っていたため、お互い拮抗していた。

だが最近になって、魔人族側の動きが活発になっており、数でも押されかけている。

さらには、魔物が人間の領土に攻撃するという自体も発生しており、このままでは人間の存続が危ないという。

そんな時、神官の一人が、人間が崇めている神『ヴィナレスト』から『神託』を聞いたと言う。それは、古より封印されてきた召喚魔法を使用せよ、とのこと。

この召喚魔法は、違う上位の世界の人間を召喚するという魔法である。
上位の世界の人間が召喚されると、その人間は強い力を持った『勇者』となる。

しかしこの魔法は異世界への道を開くことと同じであり、リスクも大きい。この魔法に失敗した場合術者は死亡し、またこの魔法は王家のものでしか行えないというものであった。

大昔、この召喚魔法を行った時は、失敗してしまい王家の人間が亡くなった。
それからは封印されてきたのだが、神託が王家の人間に伝えられたとき、王女がこのまま種が滅ぶならばと志願し、術者として魔法を行ったのである。

そうした経緯で行い成功したのだが、こんな若い、それに大人数を召喚出来た事は大変喜ばしい事であるらしい。

……うん、こんなものか?勝手にこっちへこさせて、さらには俺達に戦争をしろと言ってるんだな。

案の定、クラスメイトが戦争とか冗談じゃないとか、早く帰せよと騒いでいる。

というか元の世界へは戻れ……

「すいません、質問があるのですが……ここが私達の住んでいる場所ではない事は分かりました。私達は、元の世界に帰れるのですか?」

ナイス雫!雫が質問した後、場内の騒音が一瞬で静かになった。皆、同じことを思っていたようだ。

「行った召喚魔法については、帰す方法は記しておりませんでした。また、分かったとしても今回はヴィナレスト様の神託によっての補助がありましたので、成功したようなものです。分かったとしてももう一度ヴィナレスト様のお力を借りる事が出来るかどうか……」

うん、確かに人間の力で行えるとも思えない魔法だしな…正直帰れないのは薄々分かっていた。
しかしまあこれを聞いた生徒達は……

「おい!ふざけるな!」

「なんで俺達が戦わなきゃいけないんだよ!」

「私こわい……」

「なんでよりによって金曜に呼んだんだよ!」

「死ね!」

あーあーこうなっちゃったよ、というか好き放題言い過ぎだ…王女様が困った顔をしておる……

王様はなんか見るに耐えないという様子で、俺達のことを軽蔑している?そんな感じ。


騒ぎが収まらないまま5分程経った後、隼人が机を場内全体に聞こえるように叩いた。
一瞬で静まり返るクラスメイト達。それを確認した隼人は、静かに皆を見渡しながら言った。

「聞いてくれみんな。……僕は、この世界の人達と戦おうと思う。この世界の人間が滅亡の危機にあって、それを救うには僕達の力が必要なんだ。王女様が命をかけてまで呼んだのに、それを放っておいて助けにならないのは駄目だと僕は思う。それにだ、人間を救うために神様に召喚されたなら、助けてしばらくしたら、もう一度神様が力を貸して、元へ帰れるはずだ。」

まだ場内は静かだが、明らかに雰囲気が変わった。すると王様が言う。

「たしかに、召喚しておいてそのままとはなりますまい。ヴィナレスト様もそんな事はしないでしょう…」

「だそうだ皆、それに俺達は強い。ですよね?」

「そうですなあ。貴方達は強い。鍛錬すれば、英雄クラスまで上り詰めることができるでしょう。」

「よし、それならきっと大丈夫!皆も僕についてきてくれないか?人々を救って、家に帰ろうじゃないか!皆でこの世界を守って、英雄になるんだ!」

彼のカリスマがフルパワーで発揮され、次々と立ち上がっていくクラスメイト達。
皆活気が溢れ出し、元の元気な姿へとなっていっている。
隼人はもともと女子人気は凄まじかったのだが、女子の半数以上が、隼人に熱い目線を送っているようだ。

「私もやるわ。帰れる方法は多分それしかないんだしね。」

「雫!一緒に頑張ろうな!」

「おいおい俺達も忘れるなよ。頑張ろうぜ隼人」

「俺もやってやる!」

「わたしもがんばる!」

隼人グループが次々と賛同していく中、それ以外も賛同の声をあげているようだ。

なんだかんだで皆やる気になったようだが、本当にこれでいいのか?まあやるしかないか…
ちらっと王様を見ると、満足気に笑っており、こうなることを分かっていたかのような感じだ。
王女様も似たような様子であり、雰囲気が少し怪しいが、誰もそれには気づいていない様子。

戦争ということを忘れたかのように騒いでいるが、この調子で持つのだろうか……



そうして俺達は、人間のために戦うことになった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

処理中です...