恋するつま先~オネェさんネイリストは甘やかし体質~

マチバリ

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「んぅ、むうっ、ちぅ」

キス、されている。

足のマッサージをされていた筈なのに、何故か太股を舐められて、涙まで舐められて、キスされている。
何を言っているのかわからないが、私も何を言っているのかさっぱりわからない。

最初は軽く触れるだけだった珀人さんの唇が、角度を変えて何度も何度も私の唇を奪う。恥ずかしくて混乱しているけど抵抗なんてできなくて、重なる唇の気持ちよさにうっとりしていたら、生暖かくて濡れた舌先が私の口の中に滑り込んできた。

「んんっうう」

舌の絡むキスなんてまともにした事が無い。
一度、元彼に無理矢理そういうキスをされた時、怖くて気持ち悪くて舌を噛んでしまって怒られたのを思い出す。血の味の舌あのキスはトラウマだ。
珀人さんの舌を傷つけるのが怖くて大人しく舌を受け入れたら、珀人さんがちょっとだけ鼻で笑った気がした。

――えっちな子だと思われたらどうしよう。

何故こんなことになっているのか理解できていないし、このキスの意味がなんなのかもわからないけど、嫌われたり呆れられるのは嫌だなぁとぼんやり思う。

珀人さんの舌は経験不足の私を弄ぶように口の中を舐めまわしていく。歯の裏側や口蓋を舌の先でくすぐる様に舐められると、逃げ出したいようなくすぐったさと体の奥がぐずぐずになるような熱っぽさがこみあげてくる。他人の熱なんて味わった事のない舌を舐められて吸われて、私は呼吸もままならない。みっともなく鼻で呼吸して苦しくて、珀人さんの肩を掴んで小さく爪を立ててしまった。

「あぅうん」

ぴちゃ、と唾液が溢れる音がしてようやく唇が解放される。酸素が足りなくてぽわぽわしてる私は珀人さんをぼんやりと見上げた。綺麗な顔が私をじっと見つめている。

「ルリちゃん、本当に可愛い」

言われ慣れない言葉で褒められると、どうしていいか分からない。うっとりと細まったやさしい垂れ目が私に近寄って、瞼に優しいキスが落ちてきた。

「気持ちよくしてあげるわね」

瞼から耳たぶに滑り落ちた唇が、とんでもない事を呟いた。駄目よ逃げなきゃ、と起き上がろうとした身体は、のしかかってくる珀人さんの身体で封じ込まれてしまう。綺麗なオネェさんでも体つきは間違いなく男の人で、非力な私は身じろぎするのが精いっぱい。首筋に珀人さんの顔が埋まって私の鎖骨を鼻先が撫でていく。

「や、やだぁ」

恥ずかしくて顔や耳が痛いほどに熱い。珀人さんの手が私の太ももを撫でまわして、必死に閉じている足を開こうと指先を差し込んでくる。さすがに駄目だと必死で足に力を入れるが、膝をくるりと爪でくすぐられると、体の力が抜けてしまう。その隙をついて滑り込んできた指先が、敏感なうちももの皮膚を弄ぶように撫でたり摘まんだりしていく。

「あっ、ああ、あっん」
「かわいい声。もっと聞かせて」

服の上から私の胸に顔をうずめていた珀人さんが楽しげに呟く。珀人さんの熱い呼吸が服越しに肌をくすぐって落ち着かない。やだやだと甘えた声で叫ぶのが精いっぱいで、本気で嫌がる事も出来てない。

太股の内側を散々撫でまわした手が、奥へは進まずに下へと撫で降りていくのに少しだけ安心して力を抜く。ちょっとだけ物足りない気がして胸の奥がしゅんとしおれるが、私をじっと見ていた珀人さんがそれに気が付いたみたいな意地悪な顔をするものだから、恥ずかしくて浅ましい自分が嫌になる。

「ルリちゃんの足、ほんとに可愛くておいしそう」

ふくらはぎまで降りた珀人さんの掌が、右足を救い上げるように持ち上げた。

「ひえっ」

大きく足が開く体勢になって急いでスカートの裾を押さえて足の間を隠すが、きっと珀人さんには丸見えだっただろう。

「あら可愛い。そっちは後でいっぱい可愛がってあげるけど、いまはこっちね」
「え、え、え?」

言われている意味を理解したくなくて目をぐるぐるさせていると、私の足元にひざをついた珀人さんが持ち上げていた右足の先をぱくりと口に含んだ。

「きゃっ!!」

そんなところを!信じられない!!衝撃で目を丸くした私に珀人さんは瞳で笑って、ちゅうっと指を吸い上げた。

「あああんっ」

未知の感覚と痺れがつま先から全身に広がっていく。口の中に含まれた親指を飴玉でも舐めるように口の中で弄ばれて吸われて転がされる。指と指の間なんて、自分で触れる事もないのに、そこを他人の舌が舐めまわしているなんて信じられない。

「だめだめ、やめてぇ、汚いよう」

羞恥と混乱で泣きながら悲鳴を上げれば、珀人さんがちゅぽんと音を立ててつま先を離してくれた。

「そんなに嫌?」
「だって、汚い…」
「汚くなんてないわよ」
「だめぇ」

どんなにお願いされても嫌だ。だって足だもん。恥ずかしい、と訴えれば、珀人さんは困ったような顔をして、じゃあ洗ってあげると言いだした。
いそいそとこの前と同じ足湯の機械が取り出され、中に水が貯められる。
この隙に逃げ出そうかと考えたけど、さっきのキスや散々触られたせいで、体に力が入らないし、気持ちも夢を見ているようにふわふわしてて、動く気力なんて残されてなかった。


なまぬるいお湯に足が沈められる。この前と違うのは一緒に珀人さんの足がお湯中で蠢いている事だ。

「やああんっ」

水の中で珀人さんの指が蠢いて、私の足先をなぶるように撫でたり引っ掻いたりを繰り返す。どこから出したのか、石けんが出てきて、塗り付けられた泡で指の間や爪の先まで洗われてしまった。歩くしか使い様がないと思っていた皮膚をこんなに人に触られるなんて、もう処理が追いつかない。
ひぃひぃと情けない声を上げる事しかできない私は、つるつるになった足をバスタオルで拭かれながら、ぐったりと浅い呼吸を繰り返した。

「綺麗になったわよ。じゃあ、もういいわよね」
「あ、まってぇ、ええっ」

駄目だと言う間もなく、またパクリとつま先を食べられる。柔らかい舌が指を一本一本舐めまわして指の間も丁寧に舐めあげていく。指の付け根の堅い部分から、窪みに沿って土踏まずにキスをされると、ふえん、と甘えたような声が口から勝手に漏れ出た。
その間にも珀人さんの掌がもう片方の足をも隙間なく撫でまわしていく。太股の裏側を爪先ですーっと撫でられると、腰が浮いてしまう。

「だ、めぇ、もう」
「逃げちゃ駄目。痛いのは嫌でしょう?」

逃げたら折る、と恐ろしい事を良いながら珀人さんは私の足首を強く掴む。言葉づかいや舌先は優しくて柔らかいのに、その力強さが、男の人なんだと嫌でも伝えてくるから、私はどうしていいのかわからずになすがままだ。

「なんでぇ、珀人さん、オネェさんなのに」

途切れ途切れに疑問を口にすれば、くるぶしを舐めまわしていた珀人さんがくすくす笑った。

「別にホンモノってわけじゃないの。口調は好きだから使ってるだけよ。職業オネェってやつね」
「うそぉ…」
「うそじゃないわよぉ。ほら、だってアタシのここ、ルリちゃんが可愛すぎてこんなになってる」

私の足を掴んで珀人さんは自分の股間部分を足裏に押し付けてくる。

「ヒエェェッ」

素足に触れるズボンの奥に硬くて熱いぴくぴくと脈打つ何かが存在を強く主張していて、私の思考は混乱の渦だ。

「そのまま触っててね」
「え?あ、あっ!」

右足で股間を押さえる体制を取らされたままの私に、珀人さんは圧し掛かってきた。ぐ、と体が近づくと、足の裏に伝わってくる存在の強さが強調されて恥ずかしい。

「ルリちゃん」

近づいてきた綺麗な顔が視界を埋めて唇を奪ってくる。何度目か分からないキスは甘くて激しくて、私はもうその舌使いに翻弄されっぱなした。

「んっっんむ、ちゅぅ」

唾液を絡められて呼吸の苦しさで暴れれば、足裏の珀人さんの熱が更に大きく硬くなっていくのが伝わってくる。痛くないのだろうか、と不安から足を引こうとすれば、許さないとでも言いたげに足首を掴まれて更に強く押し付けられる。
もう抵抗なんてできないと学んだ私が力を抜いて身を任せれば、珀人さんが嬉しそうに笑った気がした。


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