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3巻 雪解けは枯木に愛の花咲かす
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一章 月花宮への里帰り
宗国の後宮には大小合わせて三十ほどの宮と呼ばれる妃の住まいが存在している。
それぞれに囲いと門があり、中には立派な邸宅がある。
屋敷の中には台所や寝所のほかにもいくつかの部屋が存在し、妃やその女官などが暮らしていた。
宮の位置や大きさこそが、妃の権力の象徴だ。
代々の皇后が暮らす鳳凰宮は最も立派で女官が十数人暮らせるほど広く大きい。皇帝の執務室にも一番近く、その宮に住まうことが後宮妃最大の名誉とさえ言われている。
現在、その鳳凰宮は閉ざされており住民はいない。皇后の位はいまだに空席のままだ。
「久しいわね」
後宮の奥まった位置にある月花宮は、最も小さい宮だった。
簡素な門をくぐれば、白い壁に囲まれた小さな前庭とこぢんまりとした屋敷があるのみだ。
「母上はここで育ったの?」
目を輝かせながら問いかけてくる翠に、雪花はとっさに返事ができなかった。
あまりの懐かしさに胸がいっぱいになったからだ。
「母上?」
「……ええそうよ。ここが私のふるさとよ」
雪花の世界はこの狭い月花宮が全てだった。ここで生まれ、ここで朽ちていくと信じていた頃があったなんて、今では信じられない。
雪花が降嫁した後も手入れを欠かしていないのか、庭木は美しく剪定されているし、汚れたり寂れたりしている様子はない。むしろ磨き上げられているようにすら見えた。
「以前も一度だけ来ましたが……美しい場所ですね」
林杏を腕に抱いた蓮が雪花の横に立ち、月花宮をともに見上げる。
「……ええ」
もっと悲しみや苦しみに襲われるかと思ったのに、不思議なほど心は落ち着いていた。
むしろ、帰ってきたという安堵さえ感じている。
「あのときはろくに中を見られなかったので、案内してもらえますか?」
「ええ。翠もおいで」
「うん」
嬉しそうに駆け寄ってくる翠の手を取り、雪花は久方ぶりにかつての住まいへと足を踏みいれたのだった。
***
「美しい場所ですね。奥さま、荷物はどこに置きましょうか」
大きな葛籠を抱えた夕嵐が珍しそうに室内を見回している。
「奥に納戸があるわ。その横が炊事場で、その続き間に私の女官が使っていた部屋があるの」
「では私はそこを使いますね」
てきぱきとした動きで奥に向かった夕嵐を見送り、雪花は翠と手を繋いだまま一番広い客間へ向かう。使い込まれた机と椅子以外はなにもない部屋だが、やはり埃ひとつない。
「食事はここで。この奥に私の母さまが使っていた部屋があるのよ」
「母上の母さまってことは……僕のおばあさま?」
「そうよ。あとでご挨拶に行きましょうね」
「うん」
雪花の母が使っていた部屋の寝台は真新しい上質な布が敷き詰められており、大きな籐のゆりかごも用意されていた。風通しがよく、とても居心地がいい。
「母上の部屋は?」
「こっちよ」
母の部屋と渡り廊下を挟んだ先にあるのが、雪花の部屋だ。
寝台と鏡台、そして小さな箪笥がぽつんとある部屋は降嫁する前となにひとつ変わっていなかった。
箪笥の中には真新しい衣類が揃えられており、普剣帝の深い気遣いがそこかしこに感じられる。
「母上の匂いがする」
「そうだな」
「ええ?」
翠と蓮の言葉に、雪花は顔を赤らめる。
ここを出てもう四年も過ぎているのにそんなことがあるわけないと否定するが、夫と息子はどこかしたり顔でうなずき合う。
「雪花がここで暮らしていたのがわかる」
「なんですか、それ」
「僕、こっちで寝たい」
「ここで?」
「うん。林杏も一緒に。だめ?」
「翠がいいならいいけれど……」
ここよりも先ほどの部屋のほうがよいのではないかと思ったが、どうやら翠はこの部屋が気に入ったようだ。林杏も蓮の腕の中で嬉しそうに手足をばたつかせている。
「ならば、あとでゆりかごをこちらに運ばせよう。俺たちはあちらの部屋を使えばいい」
「そうですね」
あっというまに滞在する間の部屋割りが決まってしまった。
短い間とはいえ、困らぬようにと各々荷物を片づけていると、すっかりこの場に馴染んだ様子の夕嵐が、お茶の用意ができたと声をかけてきた。
「水瓶に新鮮な水が入っていましたし、薪や茶葉までたくさんありましたよ。冬が明けたばかりだというのに炭もたくさん。さすがに後宮ですね」
ほくほくとした笑みを浮かべる夕嵐の言葉通り、月花宮はかつて雪花が暮らしていたとき以上にものに満ちていた。炊事場にはあらゆる食材が用意されており、滞在している間に困ることはなさそうだ。
かつて使っていた椅子に座り、見覚えのある白磁の湯飲みに注がれたお茶を飲むと、まるであの頃に戻ったような懐かしさで目がくらみそうになる。
それでも心が乱れないのは、隣に愛しい家族がいるからだろう。
「母君の祭壇はどこに?」
どこか遠慮がちな蓮の問いかけに雪花は頬を緩ませる。いつだって蓮は雪花を気遣い、慈しんでくれるのだ。
「裏庭に新しく廟を作ってくれているそうです」
雪花の母を祀るための祭壇が建てられた場所は、かつて小さな四阿があった場所だ。そこで、雪花と母と皇子だった普剣帝はよくお茶を飲みながらたくさん話をしていた。
あの頃は、ふたりが時折交わす優しい視線の意味がわからなかったが、今の雪花にはその切ない恋情が痛いほど理解できた。
普剣帝が、そこに母の霊廟を建てた意味もだ。
母と父にとって、この月花宮は唯一と言ってもよい幸せの象徴だったのだろう。
悪辣な策略により引き裂かれ、添い遂げられなかったふたり。だからこそ、雪花が去った後も手入れを欠かさず、新たな妃に明け渡すこともしなかった。
(ここはそもそも冷宮だからというのもあるのでしょうけれど)
予感でしかないが普剣帝の御代のうちは、月花宮はずっとこのままのような気がしていた。
(もし、お父さまがいつか誰かを愛せる日が来たら)
翠や林杏に笑いかけている蓮へ視線を向けると、すぐに雪花にも優しい笑顔が向けられる。
愛しさが心を満たす。愛した人に愛される喜びや微笑みかけてもらえる幸せは、なににも変えることができないことを雪花は知ってしまった。
傲慢で身勝手な願いだとはわかっているが、どうか普剣帝にも幸せになってほしいと雪花は願ってやまない。
そんな風に思いながらお茶を楽しんでいると、後宮までの旅路で疲れたのか、話をしている間に翠と林杏は目をこすりはじめた。
雪花たちがどこかに行く気配を察して翠は少しぐずったが、夕嵐が抱きかかえるとすぐに眠ってしまった。
育ったように思えてもまだまだ子どもだと頬を緩ませた雪花は、同じく自分の腕の中で眠ってしまった林杏をゆりかごに降ろすと、夕嵐にあとを頼み、蓮と連れだって裏庭へ向かった。
「まあ……」
思わず感嘆の声がこぼれた。
以前はとりあえずという形で整えられていた裏庭だったのに、今ではたくさんの花木が植えられており、皇居の庭園に劣らぬほどの美しさになっていた。
その中央には真新しい白壁の廟があり、青銅と金で装飾された両開きの扉が取りつけられていた。
取っ手を掴み重たい扉を開くと、中には小さな蝋燭がいくつも煌々と輝いていた。燭台にたまった溶けた蝋から、いつも火を絶やさぬようにしているのがわかった。
「雪花、これが君の?」
「……ええ」
祭壇には大きな絵が飾られていた。ふんだんに色を使った美しいその絵を見ていると、視界が涙で滲んでいく。
「お母さま」
在りし日の母が、そこにいた。たおやかで優しく、愛らしい女性。
これを描いた、いや、描かせた人の愛が伝わってくるような美しい絵だった。いっとう好きだった桃色の服をまとい、命を落とした日にもつけていた白梅の簪をつけた、母。少女のような微笑みを浮かべて誰かを見つめていた。
(お父さま)
喉が詰まり、うまく言葉が出てこない。
あの頃の雪花にとって世界の全てだった母は、父にとっても全てだったのだろう。この世を去ってもう十年以上の月日が流れたというのに、母への愛は衰えていないのだとわかった。
「……陛下は……本当に、君の母上のことを……」
「ええ」
溢れる涙をぬぐいながら雪花は何度もうなずく。
嗚咽をこぼさないようにするだけで精一杯だった。手を合わせ、長く会えなかったことを詫び、言葉をつかえさせながらも蓮と結婚したことや、翠と林杏という可愛い子らに恵まれたことを伝えた。
「あとで子どもたちも連れてくるわ。とても、とても可愛い子なのよ」
もし母が生きてここにいてくれたらどんなに幸せだっただろうか。そう願わずにはいられないほど母が恋しくなる。
「雪花」
蓮の大きな手が、雪花の手を握ってくれた。
「母君に俺も挨拶させてください」
ゆるゆるとうなずくと、蓮が祭壇に向かって深く頭を垂れた。
「ご挨拶が遅くなりました。雪花の夫となった焔蓮と申します。あなたの雪花は、この俺にとってなによりも尊く愛しい人です。あなたに代わり、誰よりもなによりも大切にすることを我が先祖の名にかけて誓います」
よく通る声だった。まっすぐな意志のこもった言葉に再び涙が出る。雪花の手を包む手のひらの熱さに、溶けてしまいそうだった。
この手が、自分を生かしてくれる。そう、心から信じられた。
何度も祭壇に頭を下げ、雪花たちは廟の外へ出た。
外はわずかに日が陰っており、泣きすぎて火照った頬に夕暮れ時の風が心地よい。
「ひどい顔になってしまったわ」
このまま戻ったら夕嵐や翠たちを心配させてしまうと手巾で顔を押さえていると、蓮が隣で小さく笑った気配がした。
「俺の妻は、本当に泣き虫だな」
「……まあ、ひどい」
本気ではなかったが拗ねた振りをして頬を膨らませてみせると、蓮がすまないと言いながらわざとらしく手を合わせてくる。
「君を泣かせているのがバレたら陛下に殺されるな」
「あら、じゃあ泣き虫はもう卒業しないと」
「そうしてくれると助かる」
「ふふ」
こんな風に、普通の夫婦のような軽口を交わせるようになった幸せを、なにに例えたらいいのだろう。
「少し歩いてから戻ろう」
「ええ」
優しい夫に甘えるようによりそいながら、雪花は後宮の空を見上げた。
かつては狭く思えていたこの空の外には広く自由な世界が広がっていると、もう知ってしまった。
(お母さま。私、強くなるわね)
もう泣き虫で小さな雪花ではないから安心してねと、雪花は亡き母にもう一度だけ手を合わせた。
***
翌日。
朝餉を済ませた雪花のもとに、数名の文官を伴った拍太監がやってきた。
「ご無沙汰しております、公主さま」
深々と頭を下げる拍に雪花は目元を緩めた。
拍は普剣帝に仕える太監で、雪花が幼い頃からなにかと気にかけてくれた数少ない官吏だ。
「拍太監、久しいですね。私はすでに降嫁した身、公主ではありません」
「いいえ、公主さまはいつまでも公主さまですよ。お元気そうでなによりです」
目尻に皺を作り笑う拍は、最後に顔を合わせたときよりもずいぶん老けたように思う。
後宮を出てからまだたった四年しか経っていないのに、時の流れの速さを感じてしまった。
「蓮さまもお久しゅうございます」
「やめてください。俺はそのように畏まられる立場ではありません」
深々と頭を下げる拍太監に蓮が苦笑いを浮かべる。
「いえいえ。蓮さまにはいつも並々ならぬご尽力をしていただいております。公主さまの件もですが、我らは皆、蓮さまに感謝しておるのですよ」
「まいったな」
照れくさそうに頭をかく蓮の姿に、雪花が小さく笑った。
「公主さま、暮らし向きに不便はございませんか。事前に手は入れさせてもらったのですが」
「十分すぎるほどです。お気遣い感謝いたします」
どうやら月花宮が整っていたのは拍の手配だったらしい。
心遣いに深く感謝をすると、拍はいやいやと首を振った。
「いいえ。私はかつて公主さまがこの月花宮にお住まいだった頃、お助けすることができませんでした。罪滅ぼしにもならないでしょうが、滞在中はどうぞ仕えさせてください」
当時のことを思い返しているのか、拍太監は沈痛な面持ちをしている。
「よいのです。あなたになんの咎がありましょう」
後宮は麗貴妃とその一派が掌握していた。皇帝である普剣帝ですら最低限の口出ししかできなかったのだ。皇帝に仕える太監とはいえ、拍にできたことは少ない。
「ありがとうございます。公主さまは本当にお優しい……年々、母君に似てこられますな」
「母に、ですか」
「はい。私はここに仕えて長いですからね。母君のことも、入宮した頃から存じ上げておりますよ」
「そうなんですね」
「いずれ、その頃のことを話す機会もございましょう」
懐かしいものを見るように目を細める拍には、亡くなった母の姿が見えているのだろう。
母は凶事に巻き込まれて命を落としたこともあり、封じられたあとは誰もが母について語ることを避けてきた。だから、拍がこうやって母について話すことは意外だった。
生きている頃の母の記憶はおぼろげだ。誰かに聞かせてもらえるという事実に、胸が躍る。
「陛下もお会いするのを楽しみにしていることでしょう」
感慨深げにうなずく拍の表情から、普剣帝と雪花の本当の関係を知っていることが伝わってきた。
「昼餉のあとにまたお迎えに参ります。準備をしてお待ちください」
「わかりました」
「女官を少し置いておきますから、なにか不足があれば遠慮なくお申し付けください」
拍の言葉に応えるように、文官の後ろから年嵩の女官がふたりほど歩み出てきた。どちらも見覚えのない顔だ。
「彼女たちは、皇太后さまの宮からお借りしている者たちです。ご安心ください」
雪花が後宮に暮らしていた頃、麗貴妃に追従した後宮の女官たちに虐げられていたことを知っている拍は、古参の女官ではなく皇太后の宮から女官を連れてきた。
普剣帝の母である皇太后は、先帝の死後は寺院に身を寄せていたが、麗貴妃が失墜して後宮の管理者がいなくなったことで戻ってきているのだという。
「皇太后さまも、雪花さまにお会いしたいとおっしゃっておりました」
「私もぜひご挨拶したいです。ご予定を聞いておいてくださると助かります」
「かしこまりました」
そうして拍は深々と頭を下げ、月花宮から出ていった。
残された女官たちはてきぱきと働きはじめた。
翠や林杏の姿に頬を緩ませている様子から、頼っても問題なさそうだと雪花は胸を撫で下ろす。
「助かりました。意気込んではいましたが、後宮はお屋敷とはあれこれ勝手が違うので」
「そうでしょうね」
喜んだのは夕嵐だ。後宮は普通の住まいとは細部が異なり、やはり不便だったのだろう。女官たちに教えを請いながら、なるほどといちいち歓喜の声を上げていた。
そうこうしている間にあっというまに昼餉の時間になり、雪花たちは急いで身支度を整えると皇帝の住まう本殿へ向かった。
途中に見かけた後宮の光景はやはり以前とは異なっていて、雪花は不思議な気持ちだった。
雪花に腕を引かれ、後宮の大道を歩いていた翠が周りを見回しながら物珍しそうに瞬いている。
「後宮とは広いところなのですね」
どこもかしこも壁と門だらけで、どこへ行くにも迷路のような道を歩く必要があるのが後宮だ。広く長く感じるのは当然だろう。
林杏は蓮の腕の中ですうすうと寝息を立てている。大人しくしてくれて一安心だ。
本殿に入り、奥にある皇帝の執務室へ向かう。
中では、普剣帝が机に向かって筆を走らせている最中だった。
「陛下」
その隣に控えていた拍が声をかけると、普剣帝がゆっくりと顔を上げた。
「おお、雪花」
ふわりと微笑んだ普剣帝の姿に、雪花も思わず笑みを返す。
最後に会ったのは林杏がお腹にいるときにこっそりと訪ねてきたとき以来なので、一年は経っているだろうか。
(顔色は心配していたほど悪くはないようだけれど、やはりお疲れのようね)
「陛下にご挨拶いたします」
家族揃って膝を折ると、普剣帝はよいよいと言いながら立ち上がる。
「お前たちにまでかしずかれたくはない。気楽に致せ。蓮、翠、お前たちも元気そうでなによりだ」
「恐悦至極に存じます」
「ええと……陛下にはいつも格別のお引き立てにあずかり、厚くお礼申し上げます」
蓮に続き、翠がどこかたどたどしく挨拶を口にすると、普剣帝が愛しげに目を細めた。
血の繋がりはないが、普剣帝は翠のことをとても可愛がってくれている。
雪花の子なら自分の孫も同然だと、あれこれ貴重な書物などを送ってくれていた。
翠もそんな普剣帝にとても懐いており、久しぶりに会えたことが嬉しくてたまらない様子だ。
「翠は少し見ぬ間に立派になった。これからも両親の愛情に恥じぬよう、努力するのだぞ」
「はい」
「さて、そろそろ可愛い赤子の顔を見せてくれ」
普剣帝は足音を立てぬように気遣いながら蓮の腕の中にいる林杏を覗き込んだ。
宗国の後宮には大小合わせて三十ほどの宮と呼ばれる妃の住まいが存在している。
それぞれに囲いと門があり、中には立派な邸宅がある。
屋敷の中には台所や寝所のほかにもいくつかの部屋が存在し、妃やその女官などが暮らしていた。
宮の位置や大きさこそが、妃の権力の象徴だ。
代々の皇后が暮らす鳳凰宮は最も立派で女官が十数人暮らせるほど広く大きい。皇帝の執務室にも一番近く、その宮に住まうことが後宮妃最大の名誉とさえ言われている。
現在、その鳳凰宮は閉ざされており住民はいない。皇后の位はいまだに空席のままだ。
「久しいわね」
後宮の奥まった位置にある月花宮は、最も小さい宮だった。
簡素な門をくぐれば、白い壁に囲まれた小さな前庭とこぢんまりとした屋敷があるのみだ。
「母上はここで育ったの?」
目を輝かせながら問いかけてくる翠に、雪花はとっさに返事ができなかった。
あまりの懐かしさに胸がいっぱいになったからだ。
「母上?」
「……ええそうよ。ここが私のふるさとよ」
雪花の世界はこの狭い月花宮が全てだった。ここで生まれ、ここで朽ちていくと信じていた頃があったなんて、今では信じられない。
雪花が降嫁した後も手入れを欠かしていないのか、庭木は美しく剪定されているし、汚れたり寂れたりしている様子はない。むしろ磨き上げられているようにすら見えた。
「以前も一度だけ来ましたが……美しい場所ですね」
林杏を腕に抱いた蓮が雪花の横に立ち、月花宮をともに見上げる。
「……ええ」
もっと悲しみや苦しみに襲われるかと思ったのに、不思議なほど心は落ち着いていた。
むしろ、帰ってきたという安堵さえ感じている。
「あのときはろくに中を見られなかったので、案内してもらえますか?」
「ええ。翠もおいで」
「うん」
嬉しそうに駆け寄ってくる翠の手を取り、雪花は久方ぶりにかつての住まいへと足を踏みいれたのだった。
***
「美しい場所ですね。奥さま、荷物はどこに置きましょうか」
大きな葛籠を抱えた夕嵐が珍しそうに室内を見回している。
「奥に納戸があるわ。その横が炊事場で、その続き間に私の女官が使っていた部屋があるの」
「では私はそこを使いますね」
てきぱきとした動きで奥に向かった夕嵐を見送り、雪花は翠と手を繋いだまま一番広い客間へ向かう。使い込まれた机と椅子以外はなにもない部屋だが、やはり埃ひとつない。
「食事はここで。この奥に私の母さまが使っていた部屋があるのよ」
「母上の母さまってことは……僕のおばあさま?」
「そうよ。あとでご挨拶に行きましょうね」
「うん」
雪花の母が使っていた部屋の寝台は真新しい上質な布が敷き詰められており、大きな籐のゆりかごも用意されていた。風通しがよく、とても居心地がいい。
「母上の部屋は?」
「こっちよ」
母の部屋と渡り廊下を挟んだ先にあるのが、雪花の部屋だ。
寝台と鏡台、そして小さな箪笥がぽつんとある部屋は降嫁する前となにひとつ変わっていなかった。
箪笥の中には真新しい衣類が揃えられており、普剣帝の深い気遣いがそこかしこに感じられる。
「母上の匂いがする」
「そうだな」
「ええ?」
翠と蓮の言葉に、雪花は顔を赤らめる。
ここを出てもう四年も過ぎているのにそんなことがあるわけないと否定するが、夫と息子はどこかしたり顔でうなずき合う。
「雪花がここで暮らしていたのがわかる」
「なんですか、それ」
「僕、こっちで寝たい」
「ここで?」
「うん。林杏も一緒に。だめ?」
「翠がいいならいいけれど……」
ここよりも先ほどの部屋のほうがよいのではないかと思ったが、どうやら翠はこの部屋が気に入ったようだ。林杏も蓮の腕の中で嬉しそうに手足をばたつかせている。
「ならば、あとでゆりかごをこちらに運ばせよう。俺たちはあちらの部屋を使えばいい」
「そうですね」
あっというまに滞在する間の部屋割りが決まってしまった。
短い間とはいえ、困らぬようにと各々荷物を片づけていると、すっかりこの場に馴染んだ様子の夕嵐が、お茶の用意ができたと声をかけてきた。
「水瓶に新鮮な水が入っていましたし、薪や茶葉までたくさんありましたよ。冬が明けたばかりだというのに炭もたくさん。さすがに後宮ですね」
ほくほくとした笑みを浮かべる夕嵐の言葉通り、月花宮はかつて雪花が暮らしていたとき以上にものに満ちていた。炊事場にはあらゆる食材が用意されており、滞在している間に困ることはなさそうだ。
かつて使っていた椅子に座り、見覚えのある白磁の湯飲みに注がれたお茶を飲むと、まるであの頃に戻ったような懐かしさで目がくらみそうになる。
それでも心が乱れないのは、隣に愛しい家族がいるからだろう。
「母君の祭壇はどこに?」
どこか遠慮がちな蓮の問いかけに雪花は頬を緩ませる。いつだって蓮は雪花を気遣い、慈しんでくれるのだ。
「裏庭に新しく廟を作ってくれているそうです」
雪花の母を祀るための祭壇が建てられた場所は、かつて小さな四阿があった場所だ。そこで、雪花と母と皇子だった普剣帝はよくお茶を飲みながらたくさん話をしていた。
あの頃は、ふたりが時折交わす優しい視線の意味がわからなかったが、今の雪花にはその切ない恋情が痛いほど理解できた。
普剣帝が、そこに母の霊廟を建てた意味もだ。
母と父にとって、この月花宮は唯一と言ってもよい幸せの象徴だったのだろう。
悪辣な策略により引き裂かれ、添い遂げられなかったふたり。だからこそ、雪花が去った後も手入れを欠かさず、新たな妃に明け渡すこともしなかった。
(ここはそもそも冷宮だからというのもあるのでしょうけれど)
予感でしかないが普剣帝の御代のうちは、月花宮はずっとこのままのような気がしていた。
(もし、お父さまがいつか誰かを愛せる日が来たら)
翠や林杏に笑いかけている蓮へ視線を向けると、すぐに雪花にも優しい笑顔が向けられる。
愛しさが心を満たす。愛した人に愛される喜びや微笑みかけてもらえる幸せは、なににも変えることができないことを雪花は知ってしまった。
傲慢で身勝手な願いだとはわかっているが、どうか普剣帝にも幸せになってほしいと雪花は願ってやまない。
そんな風に思いながらお茶を楽しんでいると、後宮までの旅路で疲れたのか、話をしている間に翠と林杏は目をこすりはじめた。
雪花たちがどこかに行く気配を察して翠は少しぐずったが、夕嵐が抱きかかえるとすぐに眠ってしまった。
育ったように思えてもまだまだ子どもだと頬を緩ませた雪花は、同じく自分の腕の中で眠ってしまった林杏をゆりかごに降ろすと、夕嵐にあとを頼み、蓮と連れだって裏庭へ向かった。
「まあ……」
思わず感嘆の声がこぼれた。
以前はとりあえずという形で整えられていた裏庭だったのに、今ではたくさんの花木が植えられており、皇居の庭園に劣らぬほどの美しさになっていた。
その中央には真新しい白壁の廟があり、青銅と金で装飾された両開きの扉が取りつけられていた。
取っ手を掴み重たい扉を開くと、中には小さな蝋燭がいくつも煌々と輝いていた。燭台にたまった溶けた蝋から、いつも火を絶やさぬようにしているのがわかった。
「雪花、これが君の?」
「……ええ」
祭壇には大きな絵が飾られていた。ふんだんに色を使った美しいその絵を見ていると、視界が涙で滲んでいく。
「お母さま」
在りし日の母が、そこにいた。たおやかで優しく、愛らしい女性。
これを描いた、いや、描かせた人の愛が伝わってくるような美しい絵だった。いっとう好きだった桃色の服をまとい、命を落とした日にもつけていた白梅の簪をつけた、母。少女のような微笑みを浮かべて誰かを見つめていた。
(お父さま)
喉が詰まり、うまく言葉が出てこない。
あの頃の雪花にとって世界の全てだった母は、父にとっても全てだったのだろう。この世を去ってもう十年以上の月日が流れたというのに、母への愛は衰えていないのだとわかった。
「……陛下は……本当に、君の母上のことを……」
「ええ」
溢れる涙をぬぐいながら雪花は何度もうなずく。
嗚咽をこぼさないようにするだけで精一杯だった。手を合わせ、長く会えなかったことを詫び、言葉をつかえさせながらも蓮と結婚したことや、翠と林杏という可愛い子らに恵まれたことを伝えた。
「あとで子どもたちも連れてくるわ。とても、とても可愛い子なのよ」
もし母が生きてここにいてくれたらどんなに幸せだっただろうか。そう願わずにはいられないほど母が恋しくなる。
「雪花」
蓮の大きな手が、雪花の手を握ってくれた。
「母君に俺も挨拶させてください」
ゆるゆるとうなずくと、蓮が祭壇に向かって深く頭を垂れた。
「ご挨拶が遅くなりました。雪花の夫となった焔蓮と申します。あなたの雪花は、この俺にとってなによりも尊く愛しい人です。あなたに代わり、誰よりもなによりも大切にすることを我が先祖の名にかけて誓います」
よく通る声だった。まっすぐな意志のこもった言葉に再び涙が出る。雪花の手を包む手のひらの熱さに、溶けてしまいそうだった。
この手が、自分を生かしてくれる。そう、心から信じられた。
何度も祭壇に頭を下げ、雪花たちは廟の外へ出た。
外はわずかに日が陰っており、泣きすぎて火照った頬に夕暮れ時の風が心地よい。
「ひどい顔になってしまったわ」
このまま戻ったら夕嵐や翠たちを心配させてしまうと手巾で顔を押さえていると、蓮が隣で小さく笑った気配がした。
「俺の妻は、本当に泣き虫だな」
「……まあ、ひどい」
本気ではなかったが拗ねた振りをして頬を膨らませてみせると、蓮がすまないと言いながらわざとらしく手を合わせてくる。
「君を泣かせているのがバレたら陛下に殺されるな」
「あら、じゃあ泣き虫はもう卒業しないと」
「そうしてくれると助かる」
「ふふ」
こんな風に、普通の夫婦のような軽口を交わせるようになった幸せを、なにに例えたらいいのだろう。
「少し歩いてから戻ろう」
「ええ」
優しい夫に甘えるようによりそいながら、雪花は後宮の空を見上げた。
かつては狭く思えていたこの空の外には広く自由な世界が広がっていると、もう知ってしまった。
(お母さま。私、強くなるわね)
もう泣き虫で小さな雪花ではないから安心してねと、雪花は亡き母にもう一度だけ手を合わせた。
***
翌日。
朝餉を済ませた雪花のもとに、数名の文官を伴った拍太監がやってきた。
「ご無沙汰しております、公主さま」
深々と頭を下げる拍に雪花は目元を緩めた。
拍は普剣帝に仕える太監で、雪花が幼い頃からなにかと気にかけてくれた数少ない官吏だ。
「拍太監、久しいですね。私はすでに降嫁した身、公主ではありません」
「いいえ、公主さまはいつまでも公主さまですよ。お元気そうでなによりです」
目尻に皺を作り笑う拍は、最後に顔を合わせたときよりもずいぶん老けたように思う。
後宮を出てからまだたった四年しか経っていないのに、時の流れの速さを感じてしまった。
「蓮さまもお久しゅうございます」
「やめてください。俺はそのように畏まられる立場ではありません」
深々と頭を下げる拍太監に蓮が苦笑いを浮かべる。
「いえいえ。蓮さまにはいつも並々ならぬご尽力をしていただいております。公主さまの件もですが、我らは皆、蓮さまに感謝しておるのですよ」
「まいったな」
照れくさそうに頭をかく蓮の姿に、雪花が小さく笑った。
「公主さま、暮らし向きに不便はございませんか。事前に手は入れさせてもらったのですが」
「十分すぎるほどです。お気遣い感謝いたします」
どうやら月花宮が整っていたのは拍の手配だったらしい。
心遣いに深く感謝をすると、拍はいやいやと首を振った。
「いいえ。私はかつて公主さまがこの月花宮にお住まいだった頃、お助けすることができませんでした。罪滅ぼしにもならないでしょうが、滞在中はどうぞ仕えさせてください」
当時のことを思い返しているのか、拍太監は沈痛な面持ちをしている。
「よいのです。あなたになんの咎がありましょう」
後宮は麗貴妃とその一派が掌握していた。皇帝である普剣帝ですら最低限の口出ししかできなかったのだ。皇帝に仕える太監とはいえ、拍にできたことは少ない。
「ありがとうございます。公主さまは本当にお優しい……年々、母君に似てこられますな」
「母に、ですか」
「はい。私はここに仕えて長いですからね。母君のことも、入宮した頃から存じ上げておりますよ」
「そうなんですね」
「いずれ、その頃のことを話す機会もございましょう」
懐かしいものを見るように目を細める拍には、亡くなった母の姿が見えているのだろう。
母は凶事に巻き込まれて命を落としたこともあり、封じられたあとは誰もが母について語ることを避けてきた。だから、拍がこうやって母について話すことは意外だった。
生きている頃の母の記憶はおぼろげだ。誰かに聞かせてもらえるという事実に、胸が躍る。
「陛下もお会いするのを楽しみにしていることでしょう」
感慨深げにうなずく拍の表情から、普剣帝と雪花の本当の関係を知っていることが伝わってきた。
「昼餉のあとにまたお迎えに参ります。準備をしてお待ちください」
「わかりました」
「女官を少し置いておきますから、なにか不足があれば遠慮なくお申し付けください」
拍の言葉に応えるように、文官の後ろから年嵩の女官がふたりほど歩み出てきた。どちらも見覚えのない顔だ。
「彼女たちは、皇太后さまの宮からお借りしている者たちです。ご安心ください」
雪花が後宮に暮らしていた頃、麗貴妃に追従した後宮の女官たちに虐げられていたことを知っている拍は、古参の女官ではなく皇太后の宮から女官を連れてきた。
普剣帝の母である皇太后は、先帝の死後は寺院に身を寄せていたが、麗貴妃が失墜して後宮の管理者がいなくなったことで戻ってきているのだという。
「皇太后さまも、雪花さまにお会いしたいとおっしゃっておりました」
「私もぜひご挨拶したいです。ご予定を聞いておいてくださると助かります」
「かしこまりました」
そうして拍は深々と頭を下げ、月花宮から出ていった。
残された女官たちはてきぱきと働きはじめた。
翠や林杏の姿に頬を緩ませている様子から、頼っても問題なさそうだと雪花は胸を撫で下ろす。
「助かりました。意気込んではいましたが、後宮はお屋敷とはあれこれ勝手が違うので」
「そうでしょうね」
喜んだのは夕嵐だ。後宮は普通の住まいとは細部が異なり、やはり不便だったのだろう。女官たちに教えを請いながら、なるほどといちいち歓喜の声を上げていた。
そうこうしている間にあっというまに昼餉の時間になり、雪花たちは急いで身支度を整えると皇帝の住まう本殿へ向かった。
途中に見かけた後宮の光景はやはり以前とは異なっていて、雪花は不思議な気持ちだった。
雪花に腕を引かれ、後宮の大道を歩いていた翠が周りを見回しながら物珍しそうに瞬いている。
「後宮とは広いところなのですね」
どこもかしこも壁と門だらけで、どこへ行くにも迷路のような道を歩く必要があるのが後宮だ。広く長く感じるのは当然だろう。
林杏は蓮の腕の中ですうすうと寝息を立てている。大人しくしてくれて一安心だ。
本殿に入り、奥にある皇帝の執務室へ向かう。
中では、普剣帝が机に向かって筆を走らせている最中だった。
「陛下」
その隣に控えていた拍が声をかけると、普剣帝がゆっくりと顔を上げた。
「おお、雪花」
ふわりと微笑んだ普剣帝の姿に、雪花も思わず笑みを返す。
最後に会ったのは林杏がお腹にいるときにこっそりと訪ねてきたとき以来なので、一年は経っているだろうか。
(顔色は心配していたほど悪くはないようだけれど、やはりお疲れのようね)
「陛下にご挨拶いたします」
家族揃って膝を折ると、普剣帝はよいよいと言いながら立ち上がる。
「お前たちにまでかしずかれたくはない。気楽に致せ。蓮、翠、お前たちも元気そうでなによりだ」
「恐悦至極に存じます」
「ええと……陛下にはいつも格別のお引き立てにあずかり、厚くお礼申し上げます」
蓮に続き、翠がどこかたどたどしく挨拶を口にすると、普剣帝が愛しげに目を細めた。
血の繋がりはないが、普剣帝は翠のことをとても可愛がってくれている。
雪花の子なら自分の孫も同然だと、あれこれ貴重な書物などを送ってくれていた。
翠もそんな普剣帝にとても懐いており、久しぶりに会えたことが嬉しくてたまらない様子だ。
「翠は少し見ぬ間に立派になった。これからも両親の愛情に恥じぬよう、努力するのだぞ」
「はい」
「さて、そろそろ可愛い赤子の顔を見せてくれ」
普剣帝は足音を立てぬように気遣いながら蓮の腕の中にいる林杏を覗き込んだ。
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