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誰が殺した悪役令嬢
誰が殺した悪役令嬢-2
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もちろん問い詰めたよ。でもセイナは頑なに認めなかった。そんなことしてないって。
どうして信じなかったのか? だってこれまでのことがあったんだ、信じられるわけがない。
セイナはずっとルビーにひどい態度を取っていたし、きっとパーティのパートナーに選ばれなかったのが屈辱だったんだろう。
セイナは越えてはいけない一線を越えてしまった。
僕も悪かったと思う。もっとうまく立ち回るべきだったのに、ルビーを悲しませたからね。
ダンスパーティのあと僕は考えたんだ。やはり婚約破棄しかないって。
でもなかなかうまくいかなかった。
セイナは僕が婚約破棄を進めようとしていることを察したんだろう。僕を徹底的に避け続けた。
二人きりになる機会なんてなかったんだ。
面白いだろ? 婚約者だっていうのに。
だから卒業パーティで僕は婚約破棄を告げたんだ。
そうするしかないと思った。人前での宣言なら、セイナだってもう逆らうわけにはいかないし。
うん……うん……そうだね、今になって思えば、短慮だった。
父上たちにもとても叱られたよ。相談するべきだったって。母上にも泣かれた。
でも僕はああするしかないと、思い込んでいたんだ。
もちろん、婚約破棄したあとのことはしっかり面倒を見るつもりだった。
もうセイナはこの国の社交界ではやっていけないだろうから、僕の妹が嫁いだ隣国に留学させて、そこの貴族と縁づかせる計画だってあったんだよ。
セイナを助けるにはそうするしかないって。
愛情がないわけじゃなかったんだ。セイナは僕にとっては大切な妹だからね。
幸せになってほしかったのは嘘じゃない。
王太子妃という重荷を捨てて、どこか遠くで、一人の女性として……今さら僕がそんなことを言っても、全部言い訳にしか聞こえないな。
セイナの死を知った時は……僕を驚かせるための嘘だって、最初は思ったんだ。
でも事実だった。悲しかったし、ショックだったよ。
これじゃあ僕が悪者みたいじゃないか。
だから僕はまだどこかでセイナが生きているんじゃないかって思うんだ。
ん? わかってるよ。王家の医師が死亡を確認したんだ。わかってる。わかってるんだ。
でも、やりきれないじゃないか。
死ぬ必要なんてなかったのに。
うん? これから? ルビーと婚約するのかって?
はは。まさか。彼女とはそんな関係ではないと言っただろう。
セイナの喪も明けていないのに次の婚約者なんて考えられるわけがない。
もういいのかい? そうか。またなにか聞きたいことがあれば声をかけてくれ。
ああ、遠慮はいらないから。
宰相にもよろしく伝えてくれ。
それじゃあ。
ルビー・フィット 一
ごきげんよう。ええとアリア、様でしたかしら?
はい。私がルビー・フィットですわ。
はじめまして、ですわよね? すみません、学園の皆さまの顔を覚えていなくて。
え? アリア様は学園に通っていなかったんですか!? どうしてです?
貴族の方はみんな、あの学園に入るものだと思っていたので驚きました。
もしかして、なにかご事情が……?
えっ、そうなんですね。ふーん。学園に通わずご自宅でお勉強を。へぇ。宰相様のお嬢様ともなるとそういうことも可能なのですね。
あっ……ごめんなさい。失礼でしたよね。
私ずっと領地で暮らしていたので、礼儀作法に疎くて。
サイラス様にも色々教えていただいたんですがなかなか覚えられなくて。
礼儀を欠くようなことがあればすぐに言ってください。私、頑張って覚えますから。
ええとぉ……セイナ様についてのお話をしたいとのことですが、私はあまりセイナ様とは交流がないので詳しいことは存じ上げないのですがよろしいですか?
もちろん色々ありましたから、知らない仲とは言いませんけど……
はっきり言って私セイナ様のことが苦手だったので、学園ではあまり関わらなかったんです。
だってあの方すごく綺麗じゃないですか。しかも公爵家のお嬢様。成績だってとても優秀で、周囲にはいつもキラキラした人がいて、違う世界の女性というか。
サイラス様の婚約者だとお聞きした時は納得しましたもん。
世の中って不公平だなぁって思ったんです。
見た目も、才能も、生まれも全部持ってる、完璧な人っているんだなぁって。
ほら、私って子どもの頃から身体が弱くてお医者様に十歳まで生きられないって言われてたから、羨ましくて。
父と母は王都にあるタウンハウスで暮らしていたのですが、私はずっと領地で育ったんです。
空気もいいし、健康にもいいからって。
領地での暮らしは幸せだったんですよ? 静かで穏やかで自然がいっぱいで。
私、ずうっと、あの狭い箱庭で暮らすんだと思ってました。
でも、神様っているんですね。
私はこうやって健康になって、王都に来ることができたんです。
それで、せっかくだから勉強してはどうかってことになって学園に入ったんですよ。
ふふ。人生ってなにが起こるかわからないものですね。
王都って本当になんでもあって、私びっくりしました。
領地とはなにもかもが違って楽しくて……
あ、関係ない話でしたね。ごめんなさい。
そんな事情もあって、私ちょっとだけセイナ様のことが苦手だったんです。
ほら、私とは全然違う人だから。
普通に学園で生活しているだけじゃ関わることもないだろうって思ってたんですけどね。
はい。そうです。私、出会っちゃったんですよねサイラス様に。
サイラス様って素敵ですよね。キラキラの金の髪に青い瞳。子どもの頃から何度も見た王子様そのもので、私とってもびっくりしたんです。
だからはじめてお会いした時うっかり「王子様だ!」って言っちゃって。うふふ。
まさか本当に王子様だとは思いませんでした。あ、王位継承者だから王太子様っていうのが本当の呼び方なんですよね。
でもサイラス様は王子様って呼ばせてくれたんです。
素敵ですよね。見た目だけじゃなくて中身も王子様で。
なにを聞いても優しく答えてくださるから、つい甘えちゃって……だって王子様とお話できる機会なんて学園に在籍しているうちだけですよね。
セイナ様には悪いなと思ったんですけど、彼女はそのうちサイラス様と結婚するんだから少しくらい私に譲ってくれていいんじゃないかなって……思っちゃったんです。
駄目ですよね。はい。わかってます。ごめんなさい。
セイナ様すごく怒ってました。
婚約者のいる異性と親しくしちゃだめだとか、サイラス様の立場を考えるなら慎むべきだって。
でもサイラス様は気にしなくていいっておっしゃったんです。
優しいんですサイラス様は。私がセイナ様に叱られるたびに庇ってくださって。
ほんと、完璧な王子様ですよね。
でも、セイナ様も悪いと思うんです。
もっとサイラス様とお話しすればいいのに。
セイナ様って周囲の評判がすごく悪かったじゃないですか。
いつも怒ってるし、余裕がないっていうか。
せっかくあんなに綺麗ですごい婚約者もいて両親も揃ってるのに、なにが不満だったんですかね。
私、セイナ様のことがちっともわかりませんでした。
だってもったいなくないですか? 私がセイナ様ならもっと人生を楽しんだと思います。
あんなに恵まれているのに学園にいる間のサイラス様のことまで縛って……ずるいなって……
ご本人に? 言ってませんよ、そんなこと。
反論なんてしたら面倒くさいじゃないですか。
とにかく関わらないようにするので精一杯でしたよ。なるべく顔を合わさないようにするとかそういうことしかできませんでしたけど。
ダンスパーティの件? ああ、あれですね。
私もびっくりしたんです。
あの日、馬車に乗り込んですぐに妙な音がしたからおかしいなって思って馬車を降りました。
そしたら車輪がすぐに壊れてしまって。
我が家にあるのは壊れてしまったその馬車一台だけだったので、大慌てで別の馬車を呼んでもらって会場に駆けつけたんです。
だってサイラス様と約束をしてたし、綺麗なドレスを見せたかった。
ダンスだって……ぐすっ……ごめんなさい思い出しちゃって。
結局、私がついた時には全部終わってて……悲しくて泣いちゃいました。
私、サイラス様に申し訳なくて。
犯人、ですか? ええと……わかりません。
もう車輪が壊れた時には頭が真っ白で。
なんとか会場についた時はとにかくサイラス様に謝らないとって必死で、そのあとのことはほとんど覚えてないんです。
あとからあれば事故じゃなくて誰かが細工したものだって聞かされて、すごく驚いたんですよ。
怖かったです。一体誰があんなこと……
でも、犯人が誰かなんてどうでもいいんです。
私はこうして無事でしたし、サイラス様にドレス姿も見せられましたし。
セイナ様を疑っていないのかって?
正直、よくわからなくて。
でもパーティが近づくにつれ、セイナ様は毎日私を怖い顔で睨んでいました。
すっごく怖くて……きっと私が選ばれたのがお気に召さなかったんですよね。
申し訳ないなって思います。
サイラス様たちはずっとセイナ様を疑ってて……でも結局犯人はわからなかったと聞いています。
なにも見つからなかったですし。
婚約破棄の時も特にあらぬ罪を着せたわけじゃないし、いいと思うんですけど、駄目なんですか?
そうそう。婚約破棄のことですね。
うーん。これから話すことって秘密にしてもらえます? あ、駄目。そっか。そうですよね。
隠してもバレちゃうと思うので正直に言うと、私、婚約を破棄したらどうかってサイラス様に言ってしまったんですよね。
あっ、怒らないでください! そんな真面目にお願いしたわけじゃないんですってば。
実は私、ずっとセイナ様のことがかわいそうだなって思ってたんです。
さっきも言いましたけどセイナ様ってずっと苦しそうだったんですよね。
あんなに綺麗で家柄もよくて才能もあるのに、いつもなにかを怖がってるようで、見ていて痛々しいというか。
私は知らないんですけど、セイナ様って学園に入学するまでは大人しくて可憐な方だったんでしょう? そんな話を聞きました。
それが学園に入った頃からガラッと変わったのなら、きっと周囲の期待が重荷だったんだろうと思うんですよね。かわいそうに。
だからサイラス様に言ったんですよ。
セイナ様は王太子妃になるっていうプレッシャーで苦しんでいるんじゃないかって。いっそ解放して差し上げたほうが幸せになれるんじゃないかって。
そうしたらサイラス様ったら「そうか」って妙に納得されて、それであの日に。
だからちょっと責任を感じてるんです。私が余計なことを言わなかったら婚約破棄になんてならなかったのかなって。
でも死ぬことはないと思うんです。
セイナ様くらいすごい人だったら、どんな人生だって歩み放題じゃないですか。
別の方と結婚してもいいし、結婚しなくても生きていくだけの財産くらいあったはずなのに。
たかが婚約破棄くらいで死ぬなんて馬鹿じゃないですか。人生は長いのに。
自分に一番良い道を選べばよかったのに。
選べたくせに。
セイナ様が死んだせいで、私ずっとここに閉じ込められているんです。
あの、私がいつ頃ここから出られるかってわかりますか?
そうですか、知らないですか。ちぇっ。
お父様はすぐにでも出してくれると言っていたし、サイラス様も悪いようにはしないとおっしゃってくれたのに。
あなたが来てくれてすごく楽しかったです。ありがとうございます。
またいつでも遊びに来てくださいね。
はい。ごきげんよう。
イゾルデ公爵 一
ようこそイゾルデ公爵家へ。
私が当主だ。これは妻になる。
君があの宰相殿のご息女か。お噂はかねがね。
とても優秀だそうだね。自慢の娘御を持って宰相殿も鼻が高いだろう。羨ましい限りだ。
我が家はご覧の通り、娘を失って灯が消えたようだよ。
悲しいことだ。ほら、お前、客人の前だぞ泣くんじゃない。
ああ……ああ……お気遣いに感謝する。
話をするまえに少し聞いておきたいのだが、宰相殿は我が家のことについてなにか言っていたかな?
その、補償のことだ。娘は婚約破棄されたとはいえ、王太子妃になるべく人生を費やした。今回の死に関して王家が補償をするという話などは……いや、聞いていないのならいいんだ。
セイナのことについて話を聞きたいんだったね。
もちろん。むしろぜひ聞いてほしい。
セイナが生まれたのは私と妻が結婚して八年ほど経った頃だ。なかなか子どもを授からなくて。色々と苦労をしてようやく授かった、たった一人の娘だった。
とても美しい娘が生まれてくれたと、私たち夫婦はとても喜んだものだ。
それにタイミングもよかった。我が家が国に貢献したことはご存じだろう? 我が家の資産が役に立って光栄だったよ。
我がイゾルデ公爵家は、長い歴史のある名門でね。
私の祖母は先々代の王女だったのだ。
とても美しい方だった。まさに王族とはかくあるべきという存在を体現したような神々しさで、祖父は常に祖母を王女として敬っていたよ。
祖母の息子であった父は忙しさを理由に祖母から距離を置いていたが、私は祖母が寂しくないように常にそばにいた。
祖母は、幼い私に高貴な血統とはなんなのかを教えてくれた。おかげで私は今こうして当主として采配を振るえているのさ。
父は凡庸な男であったため公爵家を維持するだけで精一杯だったようだが、私は違う。
イゾルデ公爵家を大きく盛り立て、これまで以上に地位や名誉、そして財産を築いていく必要があるのだ。
その先駆けとしてセイナをサイラス殿下と婚約させられたことは幸運だった。
公爵家の跡継ぎは傍系から養子を迎えればいいのだからな。
だというのに……まさかこんなことになるなんて。
思えばあの子は幼い頃から要領の悪い子だった。
せっかく恵まれた容姿を持ちながら、いつも部屋にこもって本ばかり読んでいてね。たくさんの経験をさせてやろうとあちこち連れていっても、人形のようについてくるばかりだった。
意外かね? だが事実なのだよ。
セイナが優秀だと周囲に認めてもらえるようになったのは、ひとえに私の努力の賜物なのだ。
優秀な家庭教師を揃え、ありとあらゆる英才教育を施した。
王太子妃になるのだから当然だろう? 子どもが恥をかかぬように尽くすのが親の義務というものだからな。
おかげで勉学やマナーなどは及第点というところで、サイラス殿下にも気に入っていただけたようで安心していた。
だがどういうことか一向にサイラス殿下との距離が近くならなくて気を揉んだよ。
見た目は悪くないと思うのだが、どうも殿下の嗜好に沿った育ち方をしなかったらしい。本当に空気の読めない子だった。
だから私があの子のドレスを揃え、振る舞いを指導してやったのだ。呑み込みが悪く、なかなか覚えが悪かったが、印象はだいぶ変わった。
そのおかげでサイラス殿下もよくセイナを構うようになったし、私は正しかったのだよ。
悪女? ああ、あのしょうもないやっかみのことか。
セイナに勝てない小娘どもが嫉妬して流した噂だよ、あんなもの。
たとえセイナを引きずり降ろしたところで自分たちが成り代われるわけでもないのに、滑稽なことだ。
だがこちらにとっては好都合だったよ。どのようなかたちであれ、あの子の名が広まるのは良いことだからな。
だが学園に入ってからのあの子は本当に駄目だった。
殿下の心を射止めるどころか、わけのわからん田舎娘にしてやられるなど。
やはりどれほど手をかけても無駄だったのかと思ったよ。なんとかして殿下の心を取り戻すように言っても失敗ばかり。
まったく不甲斐ないばかりだ。強引にでも関係を進めておけばこんなことには……っ、失礼。なんでもない忘れてくれ。
私が手をこまねいている間にとうとう婚約破棄までされてしまった。
あの子は我が家の歴史に泥を塗った。祖母が誇りに思っていたこのイゾルデ公爵家の歴史にな。
殿下も殿下だ。内々に相談してくだされば、あの小娘を妾としてそばに置くことくらい納得させたのに。
セイナもだ。殿下の心を掴めぬならば、小娘を籠絡して自分の下につければよかったものを。
話を聞いた時は最悪の気分だったよ。今思い出しても腹立たしい。
そういえばあの小娘……いや、子爵家の令嬢がやはり殿下の次の婚約者なのか? どうなんだ? 外部に漏らすつもりはない。ここだけの話として教えてくれないか。
知らない? ふん、まあそういうことにしておいてやろう。情報があれば教えてくれ。悪いようにはしない。
ふう……ああ、話の続きだな。
私は婚約破棄されたセイナを我が家に連れ戻した。
自分のしでかしたことの重大さを理解させる必要があるからな。
幸いにも婚約破棄は殿下の独断だったようで、陛下たちが帰国なされたら撤回することができるはずだったのだ。
だからセイナには殿下の熱が冷めるまでの間にわからせるつもりだったのに。
まさかあんな選択をするなんて。
なんだ? 泣くんじゃない。まったくみっともない。……すまないが、妻を休ませてくる。
…………
………………
……………………
お見苦しいところをお見せした。近頃はああやってすぐ泣くのだ。
まあせっかく産んだ娘が死んだのだ。母親とはそういうものなのだろう。
セイナが死んだ時のことだったな。
私が知らせを聞いたのは昼過ぎのことだ。
昼食を済ませ、いつものように書斎で本を読んでいると、家令が部屋に駆け込んできて、セイナの様子がおかしいというのだ。
見に行った時、セイナはベッドで眠るように息を引き取っていたよ。
昼食を食べたあと、珍しく紅茶を飲みたがったのでメイドが食器を下げるついでに食堂に行って、帰ってきたらもう息をしていなかったそうだ。
急いで医者を呼んだが駄目だった。あの子が息を吹き返すことはなかった。
その後のことは君も知っていると思うが、王家から医師やら調査官が派遣されてきて私は蚊帳の外だ。
ここは私の屋敷だというのに無礼な連中だった。
しまいにはセイナの亡骸まで持ち出していったぞ。
死因を正確に調査するという話だったが、そこまでする必要があるのか……まあいい、もうどうせあの子に用はない。
せっかくあそこまで育ててやったのに勝手に死ぬなんて、本当に役に立たない娘だった。
しかし、悪くない終わり方だった。
だってそうだろう?
あのまま生きていても王太子から婚約を破棄された傷ものの娘として生きていくしか、あの子には道がなかった。
しかし死を選んだことで今やあの子は悲劇の令嬢だ。
我が家を散々非難してきた連中も手のひらを返したように媚びを売ってきたくらいだよ。
ある意味、我が家は王家に大きな借りをつくることができた。
手塩にかけて育てた娘を王太子の気まぐれで失ったのだからな。
ずっと役に立たない娘だと思っていたが、最後の最後で役立ってくれたと思う。
ようやく自慢の娘になってくれた。
…………
君、宰相閣下によろしく伝えてくれたまえ。
必要であればいつでも会談に応じるとな。
ああ、頼む。
もう話は終わりか? ならば失礼させてもらう。
最近は面会の依頼が多くてね。君のようにセイナの話を聞きたがるのだよ。
忙しくてかなわん。
どうして信じなかったのか? だってこれまでのことがあったんだ、信じられるわけがない。
セイナはずっとルビーにひどい態度を取っていたし、きっとパーティのパートナーに選ばれなかったのが屈辱だったんだろう。
セイナは越えてはいけない一線を越えてしまった。
僕も悪かったと思う。もっとうまく立ち回るべきだったのに、ルビーを悲しませたからね。
ダンスパーティのあと僕は考えたんだ。やはり婚約破棄しかないって。
でもなかなかうまくいかなかった。
セイナは僕が婚約破棄を進めようとしていることを察したんだろう。僕を徹底的に避け続けた。
二人きりになる機会なんてなかったんだ。
面白いだろ? 婚約者だっていうのに。
だから卒業パーティで僕は婚約破棄を告げたんだ。
そうするしかないと思った。人前での宣言なら、セイナだってもう逆らうわけにはいかないし。
うん……うん……そうだね、今になって思えば、短慮だった。
父上たちにもとても叱られたよ。相談するべきだったって。母上にも泣かれた。
でも僕はああするしかないと、思い込んでいたんだ。
もちろん、婚約破棄したあとのことはしっかり面倒を見るつもりだった。
もうセイナはこの国の社交界ではやっていけないだろうから、僕の妹が嫁いだ隣国に留学させて、そこの貴族と縁づかせる計画だってあったんだよ。
セイナを助けるにはそうするしかないって。
愛情がないわけじゃなかったんだ。セイナは僕にとっては大切な妹だからね。
幸せになってほしかったのは嘘じゃない。
王太子妃という重荷を捨てて、どこか遠くで、一人の女性として……今さら僕がそんなことを言っても、全部言い訳にしか聞こえないな。
セイナの死を知った時は……僕を驚かせるための嘘だって、最初は思ったんだ。
でも事実だった。悲しかったし、ショックだったよ。
これじゃあ僕が悪者みたいじゃないか。
だから僕はまだどこかでセイナが生きているんじゃないかって思うんだ。
ん? わかってるよ。王家の医師が死亡を確認したんだ。わかってる。わかってるんだ。
でも、やりきれないじゃないか。
死ぬ必要なんてなかったのに。
うん? これから? ルビーと婚約するのかって?
はは。まさか。彼女とはそんな関係ではないと言っただろう。
セイナの喪も明けていないのに次の婚約者なんて考えられるわけがない。
もういいのかい? そうか。またなにか聞きたいことがあれば声をかけてくれ。
ああ、遠慮はいらないから。
宰相にもよろしく伝えてくれ。
それじゃあ。
ルビー・フィット 一
ごきげんよう。ええとアリア、様でしたかしら?
はい。私がルビー・フィットですわ。
はじめまして、ですわよね? すみません、学園の皆さまの顔を覚えていなくて。
え? アリア様は学園に通っていなかったんですか!? どうしてです?
貴族の方はみんな、あの学園に入るものだと思っていたので驚きました。
もしかして、なにかご事情が……?
えっ、そうなんですね。ふーん。学園に通わずご自宅でお勉強を。へぇ。宰相様のお嬢様ともなるとそういうことも可能なのですね。
あっ……ごめんなさい。失礼でしたよね。
私ずっと領地で暮らしていたので、礼儀作法に疎くて。
サイラス様にも色々教えていただいたんですがなかなか覚えられなくて。
礼儀を欠くようなことがあればすぐに言ってください。私、頑張って覚えますから。
ええとぉ……セイナ様についてのお話をしたいとのことですが、私はあまりセイナ様とは交流がないので詳しいことは存じ上げないのですがよろしいですか?
もちろん色々ありましたから、知らない仲とは言いませんけど……
はっきり言って私セイナ様のことが苦手だったので、学園ではあまり関わらなかったんです。
だってあの方すごく綺麗じゃないですか。しかも公爵家のお嬢様。成績だってとても優秀で、周囲にはいつもキラキラした人がいて、違う世界の女性というか。
サイラス様の婚約者だとお聞きした時は納得しましたもん。
世の中って不公平だなぁって思ったんです。
見た目も、才能も、生まれも全部持ってる、完璧な人っているんだなぁって。
ほら、私って子どもの頃から身体が弱くてお医者様に十歳まで生きられないって言われてたから、羨ましくて。
父と母は王都にあるタウンハウスで暮らしていたのですが、私はずっと領地で育ったんです。
空気もいいし、健康にもいいからって。
領地での暮らしは幸せだったんですよ? 静かで穏やかで自然がいっぱいで。
私、ずうっと、あの狭い箱庭で暮らすんだと思ってました。
でも、神様っているんですね。
私はこうやって健康になって、王都に来ることができたんです。
それで、せっかくだから勉強してはどうかってことになって学園に入ったんですよ。
ふふ。人生ってなにが起こるかわからないものですね。
王都って本当になんでもあって、私びっくりしました。
領地とはなにもかもが違って楽しくて……
あ、関係ない話でしたね。ごめんなさい。
そんな事情もあって、私ちょっとだけセイナ様のことが苦手だったんです。
ほら、私とは全然違う人だから。
普通に学園で生活しているだけじゃ関わることもないだろうって思ってたんですけどね。
はい。そうです。私、出会っちゃったんですよねサイラス様に。
サイラス様って素敵ですよね。キラキラの金の髪に青い瞳。子どもの頃から何度も見た王子様そのもので、私とってもびっくりしたんです。
だからはじめてお会いした時うっかり「王子様だ!」って言っちゃって。うふふ。
まさか本当に王子様だとは思いませんでした。あ、王位継承者だから王太子様っていうのが本当の呼び方なんですよね。
でもサイラス様は王子様って呼ばせてくれたんです。
素敵ですよね。見た目だけじゃなくて中身も王子様で。
なにを聞いても優しく答えてくださるから、つい甘えちゃって……だって王子様とお話できる機会なんて学園に在籍しているうちだけですよね。
セイナ様には悪いなと思ったんですけど、彼女はそのうちサイラス様と結婚するんだから少しくらい私に譲ってくれていいんじゃないかなって……思っちゃったんです。
駄目ですよね。はい。わかってます。ごめんなさい。
セイナ様すごく怒ってました。
婚約者のいる異性と親しくしちゃだめだとか、サイラス様の立場を考えるなら慎むべきだって。
でもサイラス様は気にしなくていいっておっしゃったんです。
優しいんですサイラス様は。私がセイナ様に叱られるたびに庇ってくださって。
ほんと、完璧な王子様ですよね。
でも、セイナ様も悪いと思うんです。
もっとサイラス様とお話しすればいいのに。
セイナ様って周囲の評判がすごく悪かったじゃないですか。
いつも怒ってるし、余裕がないっていうか。
せっかくあんなに綺麗ですごい婚約者もいて両親も揃ってるのに、なにが不満だったんですかね。
私、セイナ様のことがちっともわかりませんでした。
だってもったいなくないですか? 私がセイナ様ならもっと人生を楽しんだと思います。
あんなに恵まれているのに学園にいる間のサイラス様のことまで縛って……ずるいなって……
ご本人に? 言ってませんよ、そんなこと。
反論なんてしたら面倒くさいじゃないですか。
とにかく関わらないようにするので精一杯でしたよ。なるべく顔を合わさないようにするとかそういうことしかできませんでしたけど。
ダンスパーティの件? ああ、あれですね。
私もびっくりしたんです。
あの日、馬車に乗り込んですぐに妙な音がしたからおかしいなって思って馬車を降りました。
そしたら車輪がすぐに壊れてしまって。
我が家にあるのは壊れてしまったその馬車一台だけだったので、大慌てで別の馬車を呼んでもらって会場に駆けつけたんです。
だってサイラス様と約束をしてたし、綺麗なドレスを見せたかった。
ダンスだって……ぐすっ……ごめんなさい思い出しちゃって。
結局、私がついた時には全部終わってて……悲しくて泣いちゃいました。
私、サイラス様に申し訳なくて。
犯人、ですか? ええと……わかりません。
もう車輪が壊れた時には頭が真っ白で。
なんとか会場についた時はとにかくサイラス様に謝らないとって必死で、そのあとのことはほとんど覚えてないんです。
あとからあれば事故じゃなくて誰かが細工したものだって聞かされて、すごく驚いたんですよ。
怖かったです。一体誰があんなこと……
でも、犯人が誰かなんてどうでもいいんです。
私はこうして無事でしたし、サイラス様にドレス姿も見せられましたし。
セイナ様を疑っていないのかって?
正直、よくわからなくて。
でもパーティが近づくにつれ、セイナ様は毎日私を怖い顔で睨んでいました。
すっごく怖くて……きっと私が選ばれたのがお気に召さなかったんですよね。
申し訳ないなって思います。
サイラス様たちはずっとセイナ様を疑ってて……でも結局犯人はわからなかったと聞いています。
なにも見つからなかったですし。
婚約破棄の時も特にあらぬ罪を着せたわけじゃないし、いいと思うんですけど、駄目なんですか?
そうそう。婚約破棄のことですね。
うーん。これから話すことって秘密にしてもらえます? あ、駄目。そっか。そうですよね。
隠してもバレちゃうと思うので正直に言うと、私、婚約を破棄したらどうかってサイラス様に言ってしまったんですよね。
あっ、怒らないでください! そんな真面目にお願いしたわけじゃないんですってば。
実は私、ずっとセイナ様のことがかわいそうだなって思ってたんです。
さっきも言いましたけどセイナ様ってずっと苦しそうだったんですよね。
あんなに綺麗で家柄もよくて才能もあるのに、いつもなにかを怖がってるようで、見ていて痛々しいというか。
私は知らないんですけど、セイナ様って学園に入学するまでは大人しくて可憐な方だったんでしょう? そんな話を聞きました。
それが学園に入った頃からガラッと変わったのなら、きっと周囲の期待が重荷だったんだろうと思うんですよね。かわいそうに。
だからサイラス様に言ったんですよ。
セイナ様は王太子妃になるっていうプレッシャーで苦しんでいるんじゃないかって。いっそ解放して差し上げたほうが幸せになれるんじゃないかって。
そうしたらサイラス様ったら「そうか」って妙に納得されて、それであの日に。
だからちょっと責任を感じてるんです。私が余計なことを言わなかったら婚約破棄になんてならなかったのかなって。
でも死ぬことはないと思うんです。
セイナ様くらいすごい人だったら、どんな人生だって歩み放題じゃないですか。
別の方と結婚してもいいし、結婚しなくても生きていくだけの財産くらいあったはずなのに。
たかが婚約破棄くらいで死ぬなんて馬鹿じゃないですか。人生は長いのに。
自分に一番良い道を選べばよかったのに。
選べたくせに。
セイナ様が死んだせいで、私ずっとここに閉じ込められているんです。
あの、私がいつ頃ここから出られるかってわかりますか?
そうですか、知らないですか。ちぇっ。
お父様はすぐにでも出してくれると言っていたし、サイラス様も悪いようにはしないとおっしゃってくれたのに。
あなたが来てくれてすごく楽しかったです。ありがとうございます。
またいつでも遊びに来てくださいね。
はい。ごきげんよう。
イゾルデ公爵 一
ようこそイゾルデ公爵家へ。
私が当主だ。これは妻になる。
君があの宰相殿のご息女か。お噂はかねがね。
とても優秀だそうだね。自慢の娘御を持って宰相殿も鼻が高いだろう。羨ましい限りだ。
我が家はご覧の通り、娘を失って灯が消えたようだよ。
悲しいことだ。ほら、お前、客人の前だぞ泣くんじゃない。
ああ……ああ……お気遣いに感謝する。
話をするまえに少し聞いておきたいのだが、宰相殿は我が家のことについてなにか言っていたかな?
その、補償のことだ。娘は婚約破棄されたとはいえ、王太子妃になるべく人生を費やした。今回の死に関して王家が補償をするという話などは……いや、聞いていないのならいいんだ。
セイナのことについて話を聞きたいんだったね。
もちろん。むしろぜひ聞いてほしい。
セイナが生まれたのは私と妻が結婚して八年ほど経った頃だ。なかなか子どもを授からなくて。色々と苦労をしてようやく授かった、たった一人の娘だった。
とても美しい娘が生まれてくれたと、私たち夫婦はとても喜んだものだ。
それにタイミングもよかった。我が家が国に貢献したことはご存じだろう? 我が家の資産が役に立って光栄だったよ。
我がイゾルデ公爵家は、長い歴史のある名門でね。
私の祖母は先々代の王女だったのだ。
とても美しい方だった。まさに王族とはかくあるべきという存在を体現したような神々しさで、祖父は常に祖母を王女として敬っていたよ。
祖母の息子であった父は忙しさを理由に祖母から距離を置いていたが、私は祖母が寂しくないように常にそばにいた。
祖母は、幼い私に高貴な血統とはなんなのかを教えてくれた。おかげで私は今こうして当主として采配を振るえているのさ。
父は凡庸な男であったため公爵家を維持するだけで精一杯だったようだが、私は違う。
イゾルデ公爵家を大きく盛り立て、これまで以上に地位や名誉、そして財産を築いていく必要があるのだ。
その先駆けとしてセイナをサイラス殿下と婚約させられたことは幸運だった。
公爵家の跡継ぎは傍系から養子を迎えればいいのだからな。
だというのに……まさかこんなことになるなんて。
思えばあの子は幼い頃から要領の悪い子だった。
せっかく恵まれた容姿を持ちながら、いつも部屋にこもって本ばかり読んでいてね。たくさんの経験をさせてやろうとあちこち連れていっても、人形のようについてくるばかりだった。
意外かね? だが事実なのだよ。
セイナが優秀だと周囲に認めてもらえるようになったのは、ひとえに私の努力の賜物なのだ。
優秀な家庭教師を揃え、ありとあらゆる英才教育を施した。
王太子妃になるのだから当然だろう? 子どもが恥をかかぬように尽くすのが親の義務というものだからな。
おかげで勉学やマナーなどは及第点というところで、サイラス殿下にも気に入っていただけたようで安心していた。
だがどういうことか一向にサイラス殿下との距離が近くならなくて気を揉んだよ。
見た目は悪くないと思うのだが、どうも殿下の嗜好に沿った育ち方をしなかったらしい。本当に空気の読めない子だった。
だから私があの子のドレスを揃え、振る舞いを指導してやったのだ。呑み込みが悪く、なかなか覚えが悪かったが、印象はだいぶ変わった。
そのおかげでサイラス殿下もよくセイナを構うようになったし、私は正しかったのだよ。
悪女? ああ、あのしょうもないやっかみのことか。
セイナに勝てない小娘どもが嫉妬して流した噂だよ、あんなもの。
たとえセイナを引きずり降ろしたところで自分たちが成り代われるわけでもないのに、滑稽なことだ。
だがこちらにとっては好都合だったよ。どのようなかたちであれ、あの子の名が広まるのは良いことだからな。
だが学園に入ってからのあの子は本当に駄目だった。
殿下の心を射止めるどころか、わけのわからん田舎娘にしてやられるなど。
やはりどれほど手をかけても無駄だったのかと思ったよ。なんとかして殿下の心を取り戻すように言っても失敗ばかり。
まったく不甲斐ないばかりだ。強引にでも関係を進めておけばこんなことには……っ、失礼。なんでもない忘れてくれ。
私が手をこまねいている間にとうとう婚約破棄までされてしまった。
あの子は我が家の歴史に泥を塗った。祖母が誇りに思っていたこのイゾルデ公爵家の歴史にな。
殿下も殿下だ。内々に相談してくだされば、あの小娘を妾としてそばに置くことくらい納得させたのに。
セイナもだ。殿下の心を掴めぬならば、小娘を籠絡して自分の下につければよかったものを。
話を聞いた時は最悪の気分だったよ。今思い出しても腹立たしい。
そういえばあの小娘……いや、子爵家の令嬢がやはり殿下の次の婚約者なのか? どうなんだ? 外部に漏らすつもりはない。ここだけの話として教えてくれないか。
知らない? ふん、まあそういうことにしておいてやろう。情報があれば教えてくれ。悪いようにはしない。
ふう……ああ、話の続きだな。
私は婚約破棄されたセイナを我が家に連れ戻した。
自分のしでかしたことの重大さを理解させる必要があるからな。
幸いにも婚約破棄は殿下の独断だったようで、陛下たちが帰国なされたら撤回することができるはずだったのだ。
だからセイナには殿下の熱が冷めるまでの間にわからせるつもりだったのに。
まさかあんな選択をするなんて。
なんだ? 泣くんじゃない。まったくみっともない。……すまないが、妻を休ませてくる。
…………
………………
……………………
お見苦しいところをお見せした。近頃はああやってすぐ泣くのだ。
まあせっかく産んだ娘が死んだのだ。母親とはそういうものなのだろう。
セイナが死んだ時のことだったな。
私が知らせを聞いたのは昼過ぎのことだ。
昼食を済ませ、いつものように書斎で本を読んでいると、家令が部屋に駆け込んできて、セイナの様子がおかしいというのだ。
見に行った時、セイナはベッドで眠るように息を引き取っていたよ。
昼食を食べたあと、珍しく紅茶を飲みたがったのでメイドが食器を下げるついでに食堂に行って、帰ってきたらもう息をしていなかったそうだ。
急いで医者を呼んだが駄目だった。あの子が息を吹き返すことはなかった。
その後のことは君も知っていると思うが、王家から医師やら調査官が派遣されてきて私は蚊帳の外だ。
ここは私の屋敷だというのに無礼な連中だった。
しまいにはセイナの亡骸まで持ち出していったぞ。
死因を正確に調査するという話だったが、そこまでする必要があるのか……まあいい、もうどうせあの子に用はない。
せっかくあそこまで育ててやったのに勝手に死ぬなんて、本当に役に立たない娘だった。
しかし、悪くない終わり方だった。
だってそうだろう?
あのまま生きていても王太子から婚約を破棄された傷ものの娘として生きていくしか、あの子には道がなかった。
しかし死を選んだことで今やあの子は悲劇の令嬢だ。
我が家を散々非難してきた連中も手のひらを返したように媚びを売ってきたくらいだよ。
ある意味、我が家は王家に大きな借りをつくることができた。
手塩にかけて育てた娘を王太子の気まぐれで失ったのだからな。
ずっと役に立たない娘だと思っていたが、最後の最後で役立ってくれたと思う。
ようやく自慢の娘になってくれた。
…………
君、宰相閣下によろしく伝えてくれたまえ。
必要であればいつでも会談に応じるとな。
ああ、頼む。
もう話は終わりか? ならば失礼させてもらう。
最近は面会の依頼が多くてね。君のようにセイナの話を聞きたがるのだよ。
忙しくてかなわん。
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