平穏な日常に悪魔はいらない

雪音鈴

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12魔 ☆ 目的合致?

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 青天の霹靂とはこのことだろう。一瞬放心状態になりかけたが、プリプリと怒る彼が俺の手を振り払ったことで我に返る。

「まあ、上級悪魔の主になるなんて君みたいな平凡な人間には荷が重いだろうし、その点、天才美少年の僕にかかれば今後の魔法界の発展への貢献は計り知れないからね!」

「おっしゃる通りです」

「手放し難いのは分かるけど、君のためにも――はあ?」

「そう、俺みたいな普通で平凡な人間には、全くもってあの悪魔は必要ありません」

「あ、え、そうなの?」

「はい。ですので、是非とも! 一刻も早く!! あの悪魔を引き取っていただけませんか!?」

 グッと彼に迫ると訝しげに眉をひそめ、一歩後ろに引かれた。少し警戒されてしまったようだ。

 しかし、冷静にならなければと思いながらも、奴と離れられるのならばこのチャンスを逃せないという思いがせめぎ合っていて、少し圧が強くなってしまったのは仕方がないことだと思う。

「わ、わあ~、なんだか予想外の反応。え、本当にいらないの? あの悪魔がいれば、なんでも思いのままなのに?」

「俺は平凡な人生を送る平凡な人間なので」

「ああ、そうなの? 君、変わって――いや、うん。まあ、良いや。それなら話は早いし、本題に入ろう。まずは自己紹介が必要だね。天才魔法使いであり、美少年でもあるこの僕の名前はユキヤだ」

 握手を求められ、手を握る。彼の手は雪の様に冷たい。彼が言うように魔法界からやってきたのなら、こちらの世界に併せた偽名なのだろうか。漢字があるかも分からないが、全体的に青く儚げな印象を与える容姿は確かに雪の妖精のようで、ユキヤという名前は彼にピッタリだと思った。

「改めて、俺は平凡な人間の真壁永です」

 握手したままニッコリとお互いに微笑む。彼と握手を交わしてから、何故か頭に警鐘が鳴り響いている。

「それじゃあ、名の提示も終わったことだし、早速君の悪魔がほしいな」

 なかなか手を離してくれない彼から半ば逃げるように無理矢理握手を終わらせて一歩下がったが、手が霜焼けのようになっていて少しジンジンする。

「つかぬ事お聞きしたいんですけど、どうやって譲渡するんですかねぇ?」

「アハハ、簡単だよ~」

 俺の嫌な予感は外れたことがない。目だけ笑っていない彼は、楽しげな声を上げる。

「僕のために死んでくれる?」

 彼の言葉が終わった瞬間、眩い光が弾け、四方八方から窓ガラスが割れる壮絶な音が響いたのだった……。
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