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可愛い双子の愛が怖い(後編)

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 選択肢的にはとりあえず②! ②でしょ!!
 流されて受け入れちゃダメでしょ!?

 いくら私がチョロインだって、ちゃんとそこはほら手順踏まなきゃ!

 そうそう、いくら獣人が快楽に弱いからって流されちゃ――アッ――ちょ、お前ら、こっちが真剣に考えてる時に変なところ舐めるな、触るな、吸い付くなああぁぁ!!!

 だ、だだだ、だって、確かにこんなに私を想ってくれてる双子っていうのは可愛いよ。それに、この世界では重婚も認められてるよ? 基本的に大きな法律なんてものはないけど、共通認識で『より強い子孫を残すためにはいいよね』的な内容で! でもさ、双子のことは好きだけど、まだ自分の気持ちが分からない今の状況。

(ダメに決まってるでしょ――!!!)

 私は先へ先へと進もうとする双子に大きな声を出す。

「やっぱり待った――!!! ちょっと待って、本当に待って!!!! お願いだから待ってくだしゃい!!!」

 最後の方はやめてくれない彼らに涙目にながらも頼み込むような形になってしまったし、噛んだ……うぅ、自分が情けない。私の懇願に、双子達は私の真意を探るようにその翡翠色の瞳を細めた。

「さ、さささ、さすがに初めてで三人とかは、ほら、ちょっと私もアレだから、もうちょっと考え――」

「大丈夫だよールチア、体力あるし」

「いや、まあ、そうだけどね、そうだけどもね!? そういう問題じゃなくですよ!?」

「うんうん、それに、もうおさからの了承得てるし」

「はい!?」

 おさというのは私の父親のことだ。一応、この獣人の一族を取り仕切っちゃったりなんかしている。まあ、いつも母さんの尻に敷かれているので、ぶっちゃけ母の方が一族のおさのような気がしてならないけど……。

(――っていうかさ、娘に内緒で何しちゃってんだよ、お父さん……)

 確かにこの世界では強い子孫を残すのが一番の目的であるため、強い者同士を交配させ、より強い子供を残そうとする。その点に関してだけ言えば、私とこの双子は一族の中で唯一、新世校しんせいこうという選ばれた精鋭だけが通える場所へと行けた者達……ということで、父が一族の安泰のためにうちの娘を――と言うのはまあ、当然かもしれない。

 でも、双子を恋愛的な目で見たことがなかった私は現在かなり困惑している。できればもう少し見極め期間とやらが欲しい。

「あのね、二人共、ちょっと待っ――」

「もう、待てないよ……」

「だって、充分待ったもん、ボク達……」

「は? へ――?」

 双子の告白に、私は再び目を白黒させてしまう。

「ずっとずっと、ルチアだけが好きだった」
「ずっとずっと、ルチアだけを想ってた」

「ルチアが村にいる時は、ルチアに気がある奴ら全員力でねじ伏せてきたし――」

「ルチアが新世校に行くから、ボクらも成人するのと同時に行けるようすっっごく頑張ったし――」

「え、え――?」

(つーか、前半なにしてくれちゃってんの!? 可愛く言ってるけど、めっちゃ怖いよ!?)

 ウルウルと潤む彼らの大きな瞳に、驚きだけが続く。

「ええと、ごめん――いつから?」

「……恋愛的に好きになったのは5歳の頃だよ」

「ルチアの頑張り屋なところに惹かれた」

「ルチアの諦めない強さに惹かれた」

「「ボクらに――無条件で愛を注いでくれることが嬉しかった」」

 双子が嬉しそうに言う言葉に、私は申し訳なく思いながらも、本当の事を話す。

「でも、それはいとこだから面倒見てただけで――」

「知ってるよ。でも、ボクらはルチアの大雑把なところも」

「お姉さんぶってても、案外抜けてるところも」

「「全部ひっくるめて大好きなんだ」」

(――ウッ、ひ、卑怯だ、卑怯すぎる!! 二人共可愛すぎるんだよ!!! つーか、君ら5歳で覚醒してたの!? 早すぎない!? でも、おかしいな――なんかキュンッてしちゃってる自分がいるよ!? やっぱ、私ってチョロイン? チョロインなの!?)

 スルリとレナートが私の右頬を撫で、レオーネがキュッと私を抱きしめる力を強くする。

「ねぇ、ルチア――愛してる」

「5歳の時からずっと、ずっと――こうしたかった」

「ずっと、ずっと――今日みたいな関係になりたかった」

「はい、ちょっとストップ」

 双子の言葉にどうしても聞き流せない単語が混じってた。

「? どうしたの、ルチア?」

「なんだか顔色が悪いよ?」

「いやいや、可愛い顔でとぼけないでくれるかな、お二人さん? あんた達が5歳っていうと、一緒にお風呂入ったりしてたよね?」

「うん、そうだね」

「なんだかやたらと体の洗いっこしようって甘えてきてたけど――まさか?」

「うん、あの頃は最高だったよね!」

「うんうん、すぐにルチアから禁止令だされちゃったけどね……」

「いや、だってアレはあんた達が発情期で――」

 そこまで言い、やっと気付く。そう、双子とお風呂に入らなくなった理由は、双子が私に発情して襲われそうになり、私がうっかり双子を持ち前の怪力で吹っ飛ばし大怪我を負わせてしまったからだ。あ、もちろん、私は発情した彼らに噛まれたぐらいで終わったが、彼らは即刻村の医者の元へと搬送された。

 獣人の発情期は通常思春期である10歳くらいから始まるものだったため、異常に早く表れたものだと当時は驚いていたが、まさか――

「あの時は我慢が効かなくて首筋に噛み付いちゃってごめんね?」

「痛かったよね――でも、今はちゃんと制御できるから安心して?」

「じゃ、じゃあ、やっぱり――あの時から!?」

 双子の長すぎる片想いに驚きが隠せない。正直、痛い思いをしたのは怪我の重症さを考えると彼らの方な気がするが、それでも謝ってくる彼らに愛おしさが込み上げてくる。

「うん……だからね、ルチア――拒まないで?」

「ボクらを――受け入れて?」

 黒い猫耳をペタンと垂れさせ、上目使いでこちらを見つめてくる双子は私の心に抜群の効果を発揮していた。

「うぅ――あ――」

 あまりに恥ずかしすぎる双子の真摯な告白も相まって(今の格好的にはもうすでに強姦だが)、私はもう双子が可愛くて――愛おしくてしょうがない気持ちでいっぱいになってしまう。

(ああ、もう、いいや――うん、流されてもいいよ。この二人なら……)

 最初から②なんていう選択肢はあってないようなものだったのかもしれない。だって、私の心はもう、決まっていたんだ。

(うん、受け入れよう。この双子の愛を――)

「ああ、もう、分かった! 認める、認めるよ!! 私もあんた達のことが好きだって!!!」

 私が顔を真っ赤にして大声で言うと、彼らはキョトンとした顔をした。

「ちょっと、なんでそんな顔になるの!?」

「だって、ルチアはボクらのこと受け入れてくれないって思ってたから――」
「だって、ルチアはボクらのこと男として見てくれないって思ってたから――」

「じゃあ、なんでこんなことしたかな!!!」

 双子のその考えに、思わずツッコミが飛んでしまう。

「ボクらを見てほしかったから」
「ボクらを意識してほしかったから」

「ああ、はいはい、すみませんでしたね、鈍感で!!! ああ、でも、別に快楽に流されたわけじゃないから!! その――さ、ちゃんと考えた上で、やっぱ二人が好きだなあって思ったから、だから、ええと――まあ、こうなっちゃうのは少し早いような気もするけど……うん、良いよ、二人なら……」

 まだレナートが私の足の間にしっかりと陣取っているので足が閉じられず思わずモジモジしてしまう。とうのレナートは目をぱちくりしながら私を見つめてきているが、後ろにいるレオーネも同じように目をぱちくりしているのだろうか?

「た、ただね……その、わ、私はさ、ははは初めてだからその色々とや、やり方とか分からないから――えっと――だから、お、お願いします?」

(うっわ、恥ずかしい! 何これ、何言っちゃってんの私! で、でも、初めてだからほら、い、色々と――)

「「ああ、もう!! ルチア可愛い!!!」」

「うわ!!! ちょ、アッ――」

 足を広げた状態で一糸まとわぬ胸にはレナートがそのフワフワの頭を擦り付けてきて、背中にも同じようにフワフワの頭が擦り寄せられて、敏感になった身体が変に反応してしまう。

「うんうん、ルチア、絶対大事にする!!」
「うんうん、ルチア、絶対可愛がる!!」

「あ、ありがとう、だからヒッ、ウン――ヤッ――アア!」

 別に先程のような艶かしい行為ではなく、ただ単に双子が嬉しさを表して行っているスリスリ攻撃なのだが、今の私には刺激が強すぎて、それだけで絶頂に達しそうだ。快楽に弱い自身の身体が恨めしい……。

「まあ、もちろん、ボクらを選ぶ以外の選択肢なんて存在しなかったんだけどね!」

「うんうん、ルチアが素直に堕ちてきてくれて良かったよね!」

「――はい?」

 思わず、快楽のことすらどこかへ吹っ飛び、頭が冷静になる。

「たとえボクらを選ばなくても、ルチアはボクらのだよ」

「誰にもあげない」
「誰にも触れさせない」

「その声も、視線も、髪の毛ですら――」
「その肌も、瞳も、爪の欠片ですら――」

「「全部全部ボクらの――ボクらだけのルチア」」

 ウットリとつぶやかれ、双子のあまりの執着ぶりに一瞬でゾワリと肌が粟立つ。

(あ、あれ? 私――もしかして、かなり早まった?)

「ねぇ、ルチア――ボクらが好きだって言って?」
「ねぇ、ルチア――ボクらを愛してるって言って?」

 スルリと身体を撫でられ、両耳を柔く噛まれ、電気が走ったかのような感覚が再びやってくる。

「ンッ――好き――あ、愛して――るよ、レオーネ、レナート……」

 双子の狂愛(?)っぷりが少々怖いが、まあ、好き合ってる分には問題はない――はずだ。はずだよね?

 とりあえず、私は二人に与えられる快楽に身を任せるのだった……。
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