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「うう、シオンの奴……心の準備ってものがあるのに何してくれちゃ――てか、何ここ? 地下?」

 じめじめとして、張り付くような独特の肌寒い空気に、思わず身震いする。暗闇にぼうっと浮かぶろうそくの火が心もとなげにゆらゆらと揺れている。

「半分正解ですが、完全解答ではありませんね」

 カンテラに火をつけたシオンが、辺りをより一層明るく照らす。

「ここはカタンコンベみたいなもんだ。まあ、いわゆる墓地だよ」

 石碑に背をもたれかけ、ギセルは髑髏しゃれこうべを手で弄んでいた。薄気味悪い雰囲気に、つい顔をしかめてしまう。

「なんかあんまり来たくない所ね……で? 暗号は?」

「あなたの目の前にあるでしょう? その石碑ですよ」

 シオンの言葉を受け、ギセルの横に立つと、石碑に文字が浮かんでいるのが見て取れた。

Level2


「サキを……見よ?」

 私はじいっと、石碑を見つめる。

(未来と書いて、わざわざ『サキ』と読ませているからには、何か理由があるはず……)

 そう考え文字の羅列を追っていると、ハッと閃いた。

「なんだ、そういう事か……ねぇ、これの答え【     】でしょ?」

「お、なんだ気付いたのか?」

 ギセルが髑髏を豪快に後ろに投げ、楽しそうに私の顔を覗き込んでくる。

 よっぽど衝撃が強かったのか、彼の背後で粉々に砕けた音が反響し、驚きのあまり一歩下がってしまう。





  ☆ ★ ☆

Level2 ヒント 

「え、ええ。文字を結んだサキを見れば良いんでしょう?」

  ☆ ★ ☆





「正解です」

 シオンの言葉に反応し、暗号の文字が輝き、今度はビー玉くらいの大きさの赤い球体が形成された。

(なんだか、ギセルの瞳みたいな色だなあ……)

 ふと、そんな事を考え、カンテラの灯りに透かして見る。

「はあ、あなたは何をしているのですか? すぐに次の場所に移りますよ。ここは空気が澱んでいて嫌いです」

 シオンがカンテラの灯りをふうっと吹いた瞬間、急に白い光が溢れ、私達はいつの間にか森の中に立っていた。

「うっっわ、何ここ――変なキノコがいっぱい……」

 青、赤、緑、白……そこには色とりどりのキノコがあちこちに生えていた。

「……なんていうか、毒々しい光景」

「間違っても食べないで下さいね。処理が面倒ですので」

 私はシオンの言葉を聞き、顔が引きつった。

「……やっぱり毒キノコなの?」

「まあ、これで死にはしねぇよ。ただ、食ってみるまで効果が分かんねーから……」

 ギセルがおもむろに赤に黒の斑点模様のキノコを差し出してきた。

「何よ」

「食ってみるか?」

「そんな話聞いて食べれるわけないでしょ!?」

「はあ……水鏡香、いちいち喚かないで下さい。それよりも……」

「はいはい、暗号解けって言うんでしょ」

 次の暗号は、どうやら看板に書かれているようだ。
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