【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。

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本編

第五十七話 俺には運命であり必然だった・ノア視点①

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「私の可愛い子供達に、貴方は一体何をしてくれたのですか!?」
「別に。少し酩酊状態にして判断を鈍らせただけだろ」
「それが問題だと言っているのです‼︎」
「俺はこんな所に呼び出されて、説教される程の事はしてない。それに、約定に反いた強い魔法は使ってないだろ」
 
 この無駄に白くて光っている空間が俺は昔から苦手だ。寒気さえしてくるこの場所にいつまでも長居したくなくて、涙ながらにもこちらを睨んでくる相手を俺は雑にあしらった。
 ビービーと泣いてはいるがこの程度で傷付く程やわな相手ではない。未だ泣き止まず先程から俺を睨みつけてくるこいつは、一応だが人間が女神と崇める存在だ。

「人間は皆平等に愛すべき存在。それを……あのようにまともな人生を送れなくなるまで追い込むなんて‼︎貴方には慈悲の心がないのですか!?」
「はっ、笑わせんなよ。んな綺麗事言っても、お前らも都合が悪い存在がいると俺達に押し付けてくるだろうが。俺からしたらお前らの方がよほど慈悲の心なんて持ち合わせてないだろ」

 事実を言われた目の前の相手は、ただ静かに顔を歪ませボロボロと涙を流した。その無駄に明るい輝く瞳を真っ直ぐこちらに向けて。
 俺は昔からこいつの無駄に明るい瞳と、その薄ら寒い演技のような態度が苦手だった。そう、例えるなら見知らぬ相手に全身を許可なくベタベタ触られ、あまつさえ耐え難い程の吐き気を強制的に催さなけれならない、そんなレベルの不快感を感じるんだよな。

「……私達には平等に役割がある事を、貴方も十分承知している筈です」
「平等な役割ねぇ。お前らの言う平等ってのはお気に入りは自分達の加護を与え、それ以外の基準に満たない者の処理を俺達にさせる事を指すんだな」

 こいつとは昔から話が合わないから、可能な限り近づきたくない相手だった。
 それでもこうして対峙しているのは、俺が人間界に干渉したという事実と、それをこいつに約定違反だと指摘され責任を追求されたからだった。
 嫌々ながらも今日この場に足を運んだのは今回の一連の出来事に関し、俺への責任の追求と落とし所を話し合う目的があったからだ。
 
「まだ小さな子供達をあのような目に合わせて……貴方は心を失くしたあの方と同じだわ‼︎」
「は?全然違うだろうが。てか、あいつと一緒にされるのは心外だ」
「心外?笑わせないで。貴方は最も悪魔らしい悪魔だわ」
「……」
「それで?今回の目的はなんだったのかしら?」
「俺がリアを欲しいと思った。それ以上の理由はない」
「だからってこんな真似!」

 あ゛ーだるすぎ。
 本当にこいつは自分が少しでも気に入らないと、毎度ギャーギャー泣いて騒ぐから心底うんざりする。
 とは言えいつまでも喚き散らす目の前の存在を無視する事も出来ない。仮にこのまま放っておいたら、間違いなく永遠に泣き続けるだろう。これは言葉の文ではなく本当に永遠に……そんなの御免だ。
 俺は一秒でも早くリアの元に戻りたい。
 それにいい加減俺のストレスが限界を迎えそうなので、空気を読んで相手が望んでいるであろう事を口にする。
 
「はいはいっと。約定に反いてすみませんでしたね。ってわけできちんと謝罪はしたし、今回は処理対象を上限なしで受け入れる。これならそっちも満足だろ」
「…ひっ、ぅ……いいでしょう、今回だけ貴方を許します。ですが約定に関しては、ひいおばあ様の代からの大切な決まり事。いい加減貴方も守ってください」
「……うっざ」
「何か言いました?」
「チッ、何も言ってねーよ。じゃ、後でルークをこっちに寄越す。到着次第、即廃棄人を回収するからそっちも準備しとけよ」
「廃棄だなんて失礼だわ!これは子供達にとって乗り越えなければならない試練なのよ、決して廃棄ではないわ!」
「あーはいはい。んじゃ要は済んだし、俺帰るわ」
「待ちなさい!まだ話は終わってません!」

 嫌いな奴に待てと言われて、素直に待つ奴がどこにいる。そんな奇特な奴どう考えてもいないだろうに。
 長い説教の末頭痛がしてきたが、城に帰れば愛しい存在が俺を待っていてくれる。
 だからこの苦行の時間も何とか耐えられたんだ。
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