57 / 71
本編
第五十七話 俺には運命であり必然だった・ノア視点①
しおりを挟む「私の可愛い子供達に、貴方は一体何をしてくれたのですか!?」
「別に。少し酩酊状態にして判断を鈍らせただけだろ」
「それが問題だと言っているのです‼︎」
「俺はこんな所に呼び出されて、説教される程の事はしてない。それに、約定に反いた強い魔法は使ってないだろ」
この無駄に白くて光っている空間が俺は昔から苦手だ。寒気さえしてくるこの場所にいつまでも長居したくなくて、涙ながらにもこちらを睨んでくる相手を俺は雑にあしらった。
ビービーと泣いてはいるがこの程度で傷付く程やわな相手ではない。未だ泣き止まず先程から俺を睨みつけてくるこいつは、一応だが人間が女神と崇める存在だ。
「人間は皆平等に愛すべき存在。それを……あのようにまともな人生を送れなくなるまで追い込むなんて‼︎貴方には慈悲の心がないのですか!?」
「はっ、笑わせんなよ。んな綺麗事言っても、お前らも都合が悪い存在がいると俺達に押し付けてくるだろうが。俺からしたらお前らの方がよほど慈悲の心なんて持ち合わせてないだろ」
事実を言われた目の前の相手は、ただ静かに顔を歪ませボロボロと涙を流した。その無駄に明るい輝く瞳を真っ直ぐこちらに向けて。
俺は昔からこいつの無駄に明るい瞳と、その薄ら寒い演技のような態度が苦手だった。そう、例えるなら見知らぬ相手に全身を許可なくベタベタ触られ、あまつさえ耐え難い程の吐き気を強制的に催さなけれならない、そんなレベルの不快感を感じるんだよな。
「……私達には平等に役割がある事を、貴方も十分承知している筈です」
「平等な役割ねぇ。お前らの言う平等ってのはお気に入りは自分達の加護を与え、それ以外の基準に満たない者の処理を俺達にさせる事を指すんだな」
こいつとは昔から話が合わないから、可能な限り近づきたくない相手だった。
それでもこうして対峙しているのは、俺が人間界に干渉したという事実と、それをこいつに約定違反だと指摘され責任を追求されたからだった。
嫌々ながらも今日この場に足を運んだのは今回の一連の出来事に関し、俺への責任の追求と落とし所を話し合う目的があったからだ。
「まだ小さな子供達をあのような目に合わせて……貴方は心を失くしたあの方と同じだわ‼︎」
「は?全然違うだろうが。てか、あいつと一緒にされるのは心外だ」
「心外?笑わせないで。貴方は最も悪魔らしい悪魔だわ」
「……」
「それで?今回の目的はなんだったのかしら?」
「俺がリアを欲しいと思った。それ以上の理由はない」
「だからってこんな真似!」
あ゛ーだるすぎ。
本当にこいつは自分が少しでも気に入らないと、毎度ギャーギャー泣いて騒ぐから心底うんざりする。
とは言えいつまでも喚き散らす目の前の存在を無視する事も出来ない。仮にこのまま放っておいたら、間違いなく永遠に泣き続けるだろう。これは言葉の文ではなく本当に永遠に……そんなの御免だ。
俺は一秒でも早くリアの元に戻りたい。
それにいい加減俺のストレスが限界を迎えそうなので、空気を読んで相手が望んでいるであろう事を口にする。
「はいはいっと。約定に反いてすみませんでしたね。ってわけできちんと謝罪はしたし、今回は処理対象を上限なしで受け入れる。これならそっちも満足だろ」
「…ひっ、ぅ……いいでしょう、今回だけ貴方を許します。ですが約定に関しては、ひいおばあ様の代からの大切な決まり事。いい加減貴方も守ってください」
「……うっざ」
「何か言いました?」
「チッ、何も言ってねーよ。じゃ、後でルークをこっちに寄越す。到着次第、即廃棄人を回収するからそっちも準備しとけよ」
「廃棄だなんて失礼だわ!これは子供達にとって乗り越えなければならない試練なのよ、決して廃棄ではないわ!」
「あーはいはい。んじゃ要は済んだし、俺帰るわ」
「待ちなさい!まだ話は終わってません!」
嫌いな奴に待てと言われて、素直に待つ奴がどこにいる。そんな奇特な奴どう考えてもいないだろうに。
長い説教の末頭痛がしてきたが、城に帰れば愛しい存在が俺を待っていてくれる。
だからこの苦行の時間も何とか耐えられたんだ。
42
お気に入りに追加
2,414
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる