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本編
第五十三話 思わぬ再会⑤
しおりを挟む「お嬢様、一つだけ本心で答えていただけますか?」
「……分かったわ」
「お嬢様は、今幸せですか」
――幸せ。
胸に手を当てて自分の心に問いかけてみる。
家を出て一年、悔しかった事も悲しかった事もたくさんあった。
でもそれ以上に毎日がとても充実していて、私はあの貴族令嬢だった頃よりも幸せだと今なら胸を張って言う事が出来る。
「私、今とても幸せよ」
「お嬢様……」
「この思いに偽りはないわ。でもノーラにしてしまった事は本当に申し訳ない事をしたと今になって心からそう思うわ。ノーラ、本当にごめんなさい」
「お嬢様!」
私はノーラに頭を下げ謝罪した。
本当に私は相手の気持ち一つとっても、何も理解出来ていなかった。
「お嬢様、私なんかに頭を下げないで下さい!」
「違うわノーラ。“私なんか”じゃないわ。私が貴女に酷い事をしたのよ。悪い事をしたのに、立場が上とか下は関係ないわ。それにもう私は貴族ではないのよ」
「確かにそうかもしれません。でも私にとってはお嬢様は永遠にお嬢様なんです。だからこそ謝罪はきちんと受け取ります。私にはお嬢様を恨む気持ちはありません。生きていてくれた……その事実が何よりも嬉しいんです」
「ノーラ」
どこまでも私を慕ってくれる優しい彼女の言葉に、気付けば私の目から自然と涙が溢れていた。
それから私達はお互いの近況の話をした。
「ノーラは今も侍女を続けているの?」
「いえ、お嬢様の葬儀が終わった後にお暇を頂きました。あ、決して解雇された訳ではないですからね!私がお嬢様の思い出の中で仕事をするのが辛かっただけなので、そこは誤解しないで下さいね」
「でも、侍女を辞めてしまって生活はどうしているの?」
「私の実家は酒場なので、今は両親と一緒に店に出ています」
「良かった」
ノーラが生活に困っていないようで私はほっと胸を撫で下ろした。
それに侍女を辞めた事も解雇などではなくて本当に良かった。
「ところでお嬢様はランタンを飛ばされたんですか?」
「いいえ、私は飛ばしていないわ。ノーラはランタンを飛ばしたの?」
「はい、お嬢様とお会いする前に空に飛ばしました!あ、そう言えば、お嬢様はどうして道の真ん中に一人でいたんですか?もしかして例の協力者の方ですか!?」
「え、ええ、そうね」
「じゃあきっとお嬢様を探しているかも。さっきの広場まて戻りましょう!」
ノーラにそう言われ、慌ただしく店を後にした私達は早足で広場に向かった。
広場に行き、先程ノーラと出会った場所でノアを待つ事にした。
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