【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。

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本編

第四十ハ話 想いに目を向けて④

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「……っけて、助けてノアっ‼︎」
「っい⁉︎」

 私がノアの名前を叫ぶと同時にジェームズさんに掴まれていた腕が自由になった。それと同時にふわりと香るベルガモットの優しい香りに包まれた私は、いつの間にか先程まで強く逢いたいと願っていたノアの腕の中にすっぽりと収まっていた。

「……ノア?」
「リア、もう大丈夫だ」

 そう言って抱きしめてくれるノアに、気付けば私は自然と自分の腕を彼の背中に回していた。

「いってぇ……くっそ、お前は誰なんだ!俺とアリアさんの邪魔をするな!」
「嫌がる女を力ずくで押さえ付けるのがお前のやり方なのか?」
「なっ!?た、確かに強く握ってしまったかもしれないが、アリアさんは嫌がってない、アリアさんそうだろう!?」

 未だに地面に伏せていたジェームズさんは私に助けを求める様に目線を合わせてきたが、先程強引に掴まれた腕が未だに痛み、恐怖からノアに縋り付いているとジェームズさんは怒鳴り声を上げ始めた。

「リアの態度が全てだろうが。お前さ、嫌がられてるのが理解出来てないのかよ」
「さっきから聞いてれば、お前こそアリアさんの何なんだ‼︎」
「リアと俺は家族だ。俺にはリアを守る権利もあるし義務もある」
「か、家族って……」
「はぁ、お前さ、さっきから見てて分かんねーの?」

 そう言ってノアは抱きしめていた腕を解き、私の瞼にそっと口付けを落とした。

「ア、アリアさんにそんな関係の人が……」
「何だまだいたのか。それとも続きが気になるとか?」

 そう言いながらも以前も見た事のある全ての人をを魅了する魅惑的な笑みを浮かべた。

「くそっ!覚えてろよ」
「リア、腕痛いだろ?可哀想に……ひとまず家に帰ろう。このまま転移するから俺に捕まっててくれ」

 ノアはそう言ったと同時にパチンと指を鳴らし、気付けば家のリビングのソファーにノアと一緒に腰掛けていた。

「アリア手当しよう。こんなに真っ赤になって、相当痛かっただろ?ごめんな、やっぱり付いていくべきだった」
「それは違うわ!ノアは悪くない、悪いのは私なの……」

 そこまで言って私は続く言葉を言う事が出来なかった。
 対するノアは魔法で私の赤くなっている手首を癒してくれ、もう怪我は治ったはずなのに私の手首をずっと離さないでいる。

「……ノア、あの」
「リアはいつからあの男に言い寄られてたんだ?」
「い、言い寄られた事は一度もないわ。ただ……何回かジェームズさんの花屋に行った時にまとわりつくような視線を向けられただけよ、本当よ嘘じゃないの!」

 ノアに信じてもらえないかもしれないと焦った私は、普段なら絶対にしない大きな声を出しその場で勢い良く立ち上がってしまった。

「リア大丈夫だから。俺はリアの言う事信じるよ」
「ほ、本当に?本当に信じてくれるの?」
「勿論だ。大方あの男が勝手に暴走しただけだろう。でも困ってる事があるならもっと早く話して欲しかった。俺に相談するのは嫌だったか?」

 ノアは苦しそうに眉を歪め、そう問いかけてきた。

「私は……私の勘違いかもしれないって思って。ただの勘違いなら騒ぐ事じゃないって自分に言い聞かせてて……決してノアに相談したくなかったからじゃないの。ただそんな事くらいで迷惑かけたくないって思ったわ」
「迷惑なんかじゃない。リアはもっと俺を頼ってくれ。俺は必ずリアを守る、例えどんな事があってもだ」

 もうこれ以上は無理だった。
 このまま自分の気持ちを偽って生きていく事は私にはもう出来そうにない。

 (私ノアが好き……大好き)
 (このままずっとずっと一緒にいたい)

 一度認めてしまえば今まで抑えていた分どんどん気持ちが溢れてくる。
 あの日私が頼んだからノアは二年間だけ猶予をくれ、日々私の我儘に付き合ってくれているだけなのに……。
 それなのに、浅ましい私は“それ以上”を求めてしまいそうになる。

 ……約束の日まであと一年。
 一年後に私は約束通りノアに魂を差し出す事になる。
 だからずっとこうやって一緒にいる事は叶わない。

「……っ、うっ、くっ……ノア、っ、ノア」

 何も言わずただ泣きじゃくる私をノアはそっと抱きしめてくれた。

「俺はここにいる。ずっとリアの側にいるから」

 抱きしめてくれるノアに私は縋る様に腕を回し目を瞑った。
 ノアのくれた言葉が、例え泣き続ける私を慰めてくれるものなのだとしても、もうそれだけで十分だった。

 ――ノア、私心から貴方を愛してる。

 それでもこの想いをノアに伝えるつもりはない。
 禁忌を犯した私に、これ以上の幸福を望む事もノアとの未来もきっと訪れる事はないだろうから。

 女神様、この罪は私が永遠に背負ってまいります。
 だからどうか、今この瞬間だけは浅ましい私を許して下さい――。
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