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本編
第四十六話 想いに目を向けて②
しおりを挟む「マーサさん、こんにちは」
「お、アリアちゃんじゃないか!相変わらず今日も綺麗だねぇ、本当に目の保護になるよ。あ、そうそう、来週また新作のパンを販売するから気が向いたら寄っておくれよ!いつものようにおまけするからさ♪」
「本当ですか?嬉しい!必ず買いに行きますね」
「ああ!待ってるよ!」
マーサさんはこの区画1番の古株だそうで、彼女に知らない事は一つもないと言われるくらいこの市場の事を知り尽くしていると聞いた事がある。
そんなマーサさんのパン屋を通り過ぎると、次に見えてきたのはローガンさんというお爺さんが営んでいる果物屋だった。
「アリアちゃん、今日は買い物かい?」
「こんにちは、ローガンさん。ええ、今日は本屋に用事があるんです」
「そうかい!なら今日ちょうど食べ頃のフルーツ達が入ってきてるからよかったら後で見て寄ってくれ!」
「本当ですか!じゃあ買い物が終わって時間があるようなら寄りますね」
「そうしてくれ!あ、それと本屋はここから近いけどアリアちゃんは美人さんだから気をつけて行くんだよ!」
「ふふっ、ありがとうございます」
年齢を感じさせないローガンさんのお店を通り過ぎると次はジェームズさんが営んでいる花屋がある。
本当だったらここでマーサさんやローガンさんのように挨拶をするべきなのかもしれない、でもどうしても躊躇してしまう自分がいた。
どうしようか考えていると、ちょうどジェームズさんが店から出てくる所で自然と目が合った。
「アリアさん、こんにちは」
「こ、こんにちはジェームズさん」
「今日はどこかへ買い物かい?」
「ええ、ちょっと本屋に用事があるんです」
「……そうか。アリアさんが最近うちに寄ってくれないからどうしているのか心配だったんだよ。でも元気そうで良かった」
「え、えっと……」
「いや、いいんだ。分かってるから」
私はジェームズさんのその言葉にどう返答していいか分からず言葉を失ってしまった。
困って固まっている私にジェームズさんは照れたように笑いながら言葉を続けた。
「アリアさん、またうちの花屋に是非遊びに来て下さいね。俺待ってますから」
「え、ええ、そうですね……」
私の返答が失礼な事は分かっている。
でも私はどうしてもジェームズさんが苦手だった。
思い返せば初めて花屋へ行った時から、ジェームズさんが私へと向けるあのまとわりつく様な暗い視線が苦手だった。
最初は気のせいだと思っていたけれど、会う度にあの暗い瞳を向けられ、花を受け取る際に手が触れ合った時は悲鳴をあげそうになった事もあった。
その時は何とか悲鳴を飲み込んでその場を後にしたけれど、今思い返しても身体が震えそうになる。
花屋を後にしてもいつまでもジェームズさんの暗い視線に跡を付けられているように感じ、私は早足で本屋へ向かった。
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