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本編
第三十一話 それぞれのその後・アイザック視点②
しおりを挟む「アリア……?」
急いで香りがした方向を見ると、そこにはずっと会いたくて堪らなかった彼女が、自室のバルコニーに静かに佇んでいた。
「っ……アリア、そんな所にいたんだね。でもそこは危険だから。さぁ、こっちへおいで。それにアリアはまだ病み上がりだ。また体調を崩してしまったら大変だ」
ゆっくり彼女に近づきながら、私は震える手をそっと差し出す。
そんな私の手にアリアの小さな手が重なり、気付いたら私はアリアを思いきり抱きしめていた。
「アリア!会いたかった。心配したんだ。……すまない、そうじゃないんだ……君を傷つけて本当にすまなかった。私はアリアを愛してる、ずっとずっとアリアだけを愛してるんだ!嘘じゃない。信じてくれ!!」
無様に泣いて許しを請う私を、アリアはそっと抱き締め返してくれた。
「二度と君を傷つけないと誓う!だから、ずっと一緒にいてくれ。お願いだアリアっ」
ああ、ようやく私の元にアリアが帰ってきた。やはり、自死なんて悪い夢だったんだ。
だって今、私の腕の中には確かに愛しいアリアがいる。そしてこの事実こそが正しい現実なのだから。
おかえり、アリア。
不甲斐ない婚約者で本当にごめんね。君を傷つけて、その事に気がつかない私は人としても、婚約者としても失格で最低だった。でももう二度と間違えない。永遠の愛を君に誓うよ。死がふたりを別つまで……いや例え死が私達を引き離しても、何度でもアリアを愛すと誓おう。
ようやく腕の中に帰ってきた最愛の彼女をもう一度強く抱き締め、そして改めてアリアと向き合う。
目の前の彼女は、やはりいつもと同じ瞳で私を見上げる。その事に安堵した私は彼女の前に跪き、手の甲に口付けを落とす。
「——ずっと一緒だ。永遠に愛してるよアリア」
ここまで来るのに何度も過ちを犯し、アリアを傷付けてしまった私だけど、ここへ来てようやく本来の形に戻れたんだ。
私の心は歓喜で震え、自然と口元にも笑みが溢れる。
悪い夢を見て以来こんな風に心から笑うのも久しぶりだった。
アリアがこうして側に居てくれるだけで私は私であり続ける事が出来る。
だからもう大丈夫。私はこの先、何があっても幸せだ。だって隣にはアリアがいるのだから——。
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