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本編
第二十五話 突然の知らせ②
しおりを挟むあの日アリアから聞いた時は勘違いだろうと思い気にも留めなかったが、アイザックの相手はよりにもよってアリアの従姉妹であるエミリーだと書かれていた。
二人はあの日、抱き合いながら愛していると囁き合っていたそうだ。
一体私はどこで間違えたのだろう。
レスター侯爵家嫡男アイザックはアリアを心から愛している。これは親目線だからとかではなく、誰の目から見ても明らかだった。
常に娘を第一に考え、あの子が笑ってくれるなら。側に居てくれるなら。どんな事でも苦にならない、そんな青年がアイザックだった。
必ずアリアは幸せになれる。アイザックとの婚約が娘にとって私がしてやれる最も正しい選択だった。
あの日、私にアイザックの不貞を報告してきた娘はきちんと私の意図している事が伝わったはずだ。
それに何かあればまた言ってくるだろう。
その後すぐに執務が忙しくなりアリアとゆっくり話す時間が取れなかった私は少し心配していたが、久しぶりに共に食事を取った夜、普段マナーを守るあの子が珍しく大きな声で呼び止めてきた。
その事に驚いているとあの子は大きな瞳に涙を溜めて、「お父様、私幸せです」と言った。
その姿を見て、やはり正しかったのだと心から安堵した。
今日アイザックが来ていたから二人で上手く話し合えたんだろう。やはり私の判断に間違いはなかった。
これでアリアは幸せになれる。
そう思っていたのに……。
どうして、教えてくれなかったんだ……知っていたら!!
違う……そうではない。私が聞こうとしなかったんだ。あの時、アリアは必死で何かを伝えようとしていた。
それなのに遮ったのはこの私自身だ。すぐには無理でも話をする時間は十分あったのに。私はアリアと向き合う事をしなかった。
あの子は一体どれだけ苦しかったのだろう。どれだけ悩んだのだろう。
「あぁ私が、」
娘を死に追いやったのか——。
今更気付いた重すぎる事実に、気付けば私は膝から崩れ落ちていた。
「……っ、うっ、くっ……アリアっ、すまなかったっ……すまなかったっ……」
だがどれだけ後悔しても、あの時の言動を悔やんでも。償いたい相手に、この思いが届く事は二度とない。
私がそうさせてしまった。
「アリアっ!目を覚ましてくれ……お願いだアリアっ」
愚かな私を許してくれ……アリア、どうか目を覚めしてくれ……!!
腕の中で幸せそうに眠る娘を抱きしめ、どれだけ許しを乞うても愛しい我が子が返事をしてくれる事は二度となかった。
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