17 / 71
本編
第十七話 運命だった・アイザック視点②
しおりを挟むしかしそれ以来、夜会やアリアと一緒にいる時に偶然遭遇する頻度が上がった。そして何故かその度に何度も目配せしてくるようになった。
何を伝えたいのかは分からなかったが、未知の生物に全身を犯されているような感覚に陥り、恐怖で何度も叫び出しそうになった。
だけどアリアには言えなかった。
まさか私がエミリー嬢に対して、『未知の生物を見た時と同じ恐怖心』を抱いているから、彼女と仲良くしないでくれなんて言えるわけなかった。
エミリー嬢に酷い態度を取って彼女との仲が悪くなったらと想像し、とてもじゃないがそちらの方が私には耐えられなかった。
どうせ一時の気の迷いだ、すぐに落ち着くだろうと思っていたあの頃を悔やんでも悔やみきれない。
あの日、以前から約束していたアリアとの茶会は、突然現れたエミリー嬢によって妨害された。
何故か先触れもなく突然押しかけてきたエミリー嬢に、我が家の使用人も皆不思議そうにしていた。
こんな所を万が一アリアに見られて勘違いされたら困ると思い、すぐに人目につかない場所へ移動した。
そしてそのまま裏口から、速やかに帰ってもらうつもりだった。
移動中どうして突然我が家に来たのか問いただせば、不安だったからだと言ってきた。
一体何が不安なのかよく分からず、まるで言葉も通じない別の生き物のように思え、早く帰ってほしい旨を伝えると突然、『抱きしめて愛していると言ってほしい』と泣かれ、アリアとの約束の時間が迫っていた私は焦り、一秒でも早く帰ってほしくて乱暴な言い方と雑な抱擁で愛してると希望通りにした。
こんな事をしている間も、アリアとの大切な時間が削られていくのかと思うと、邪魔ばかりするこの女が心底憎かった。
だから私は、その現場を予定時刻より早く到着した、何よりも大切なアリアに見られていた事も、 その光景をアリアがどんな気持ちで見ていたかなんて、何一つ気づいていなかった。
先程の会話でエミリー嬢とのやり取りを見られたのかと肝を冷やしたが、アリアの様子はいつもと変わらなかった。
確かに少し顔色は悪かったがそれは応接室に入ってきた時からずっとだった。
アリアとのやり取りで多少の不安はあったが、婚姻まであと少し。
婚姻したら時間の許す限り共に過ごしたらいい。
私たちはこれから共に長い時間を過ごして行くのだから。
この時の私はアリアに愛してると言われ、酷く浮かれていた。
31
お気に入りに追加
2,255
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
愛されない花嫁はいなくなりました。
豆狸
恋愛
私には以前の記憶がありません。
侍女のジータと川遊びに行ったとき、はしゃぎ過ぎて船から落ちてしまい、水に流されているうちに岩で頭を打って記憶を失ってしまったのです。
……間抜け過ぎて自分が恥ずかしいです。
傲慢令嬢にはなにも出来ませんわ!
豆狸
恋愛
「ガルシア侯爵令嬢サンドラ! 私、王太子フラカソは君との婚約を破棄する! たとえ王太子妃になったとしても君のような傲慢令嬢にはなにも出来ないだろうからなっ!」
私は殿下にお辞儀をして、卒業パーティの会場から立ち去りました。
人生に一度の機会なのにもったいない?
いえいえ。実は私、三度目の人生なんですの。死ぬたびに時間を撒き戻しているのですわ。
貴方への愛は過去の夢
豆狸
恋愛
時間は過ぎる。人は変わる。
私も恋の夢から醒めるときが来たのだろう。
イスマエルへの愛を過去の記憶にして、未来へと──でも、この想いを失ってしまったら、私は私でなくなってしまう気がする。それなら、いっそ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる