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アーロン視点
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僕は幼い頃に、幼馴染のフローラと婚約した。
お互い父親同士が親友という事と、僕たちも仲が良かった事もあり、この婚約も自然に交わされたものだった。
婚約者になった後も、フローラとは幼馴染の延長という感じだった。
彼女に対して燃えるような恋愛感情はなかったけど、二人の間には穏やかな時間が流れていた。
フローラといると家族に対する安心感というか、本当に心が落ち着く感じがしたんだ。
でも僕は落ち着きたいんじゃなくて、恋愛がしてみたかった。
相手を想い、夜も眠れず心をかき乱されるような……
この先フローラと結婚したら、恋愛をする事は叶わなくなる。
僕にはこのまま穏やかな時間がずっと続くのかと思っていた時、彼女と出会った。
学園に入学して少し経った頃に出会った相手が運命の相手、シエナだった。
彼女は学園に入学する少し前に男爵家に引き取られた庶子だった。
以前は平民として生活していたようで、貴族のしきたりやマナーをまるで分かっていなかった。
普段接した事のない元平民のシエナの突飛な行動や、物怖じしない言動に惹かれるのに時間はかからなかったと思う。
貴族の令嬢ではまずあり得ない口を開けて笑う行動も、喜怒哀楽がはっきりしている事も惹かれる大きな理由だった。
フローラは生粋の令嬢だから、口を開けて笑ったりなんてしないし、喜怒哀楽もはっきり表現しない。
だからと言ってそこに不満はなかった。
ただ、本当に少し物足りなさを感じただけ。
惹かれていても、元が庶子の男爵令嬢では婚姻する事は難しい。
フローラとはきちんと婚姻する。そんな事分かっていたから、せめて学園の中だけは自由にしたかった。
卒業したらシエナを忘れないといけない。
そんな時学園でフローラの事を、『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と言う噂が聞こえてきた。
フローラをお飾りだなんて考えた事もなかった僕は、内心とても驚いていた。
きちんとフローラに話をしないといけないと思ったけど、シエナがその話を聞いて婚約者のフローラから嫌がらせをされたらどうしたらいいのかと怯えていたから、ついフローラを後回しにしてしまった。
その時からシエナとは前よりも親密な関係になっていった。
そんな時、フローラから、彼女の事を聞かれた。
フローラに直接伝えた事はなかったし、シエナと会うのも人目につかないような場所で会っていたから、まさか直接聞きに来るとは思っていなかった。
だからつい、
「シエナとは何もない。いちいちそんな噂話を真に受けるな」
と強い口調で言ってしまった。
言ってすぐ後悔したけど、その時は結婚するのはフローラとなんだから好きにしたっていいじゃないかと、本気で思っていた。
そしてふと流れていた噂話を思い出しフローラは、
『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』
まさにその通りなのでは?と思い始めてしまった。
それからはまるで自分が、悲劇の主役になったかのように僕の中で悪者はフローラになった。
“フローラがいるからシエナと堂々と会う事が出来ない”
“フローラがいるからシエナと結婚が出来ない”
フローラがいるから……
フローラさえいなければ……
そしてあの日、フローラにまたシエナとの事を言われ頭にきた僕は、
「フローラしつこいよ。僕とシエナは何もないって前にも説明したよね?いい加減にしてくれないか?」
その時の僕はもうフローラに対して嫌悪感しかなかったから、その態度を隠しもせず、フローラに対して今まで以上に冷たい態度で言い放った。
これ以上追いかけられるのも面倒臭いし、フローラの傷ついたような顔を見るのも嫌で言いたい事だけ言ってシエナが待ついつもの場所へ向かった。
その結果どうなるかも分からずに……
お互い父親同士が親友という事と、僕たちも仲が良かった事もあり、この婚約も自然に交わされたものだった。
婚約者になった後も、フローラとは幼馴染の延長という感じだった。
彼女に対して燃えるような恋愛感情はなかったけど、二人の間には穏やかな時間が流れていた。
フローラといると家族に対する安心感というか、本当に心が落ち着く感じがしたんだ。
でも僕は落ち着きたいんじゃなくて、恋愛がしてみたかった。
相手を想い、夜も眠れず心をかき乱されるような……
この先フローラと結婚したら、恋愛をする事は叶わなくなる。
僕にはこのまま穏やかな時間がずっと続くのかと思っていた時、彼女と出会った。
学園に入学して少し経った頃に出会った相手が運命の相手、シエナだった。
彼女は学園に入学する少し前に男爵家に引き取られた庶子だった。
以前は平民として生活していたようで、貴族のしきたりやマナーをまるで分かっていなかった。
普段接した事のない元平民のシエナの突飛な行動や、物怖じしない言動に惹かれるのに時間はかからなかったと思う。
貴族の令嬢ではまずあり得ない口を開けて笑う行動も、喜怒哀楽がはっきりしている事も惹かれる大きな理由だった。
フローラは生粋の令嬢だから、口を開けて笑ったりなんてしないし、喜怒哀楽もはっきり表現しない。
だからと言ってそこに不満はなかった。
ただ、本当に少し物足りなさを感じただけ。
惹かれていても、元が庶子の男爵令嬢では婚姻する事は難しい。
フローラとはきちんと婚姻する。そんな事分かっていたから、せめて学園の中だけは自由にしたかった。
卒業したらシエナを忘れないといけない。
そんな時学園でフローラの事を、『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と言う噂が聞こえてきた。
フローラをお飾りだなんて考えた事もなかった僕は、内心とても驚いていた。
きちんとフローラに話をしないといけないと思ったけど、シエナがその話を聞いて婚約者のフローラから嫌がらせをされたらどうしたらいいのかと怯えていたから、ついフローラを後回しにしてしまった。
その時からシエナとは前よりも親密な関係になっていった。
そんな時、フローラから、彼女の事を聞かれた。
フローラに直接伝えた事はなかったし、シエナと会うのも人目につかないような場所で会っていたから、まさか直接聞きに来るとは思っていなかった。
だからつい、
「シエナとは何もない。いちいちそんな噂話を真に受けるな」
と強い口調で言ってしまった。
言ってすぐ後悔したけど、その時は結婚するのはフローラとなんだから好きにしたっていいじゃないかと、本気で思っていた。
そしてふと流れていた噂話を思い出しフローラは、
『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』
まさにその通りなのでは?と思い始めてしまった。
それからはまるで自分が、悲劇の主役になったかのように僕の中で悪者はフローラになった。
“フローラがいるからシエナと堂々と会う事が出来ない”
“フローラがいるからシエナと結婚が出来ない”
フローラがいるから……
フローラさえいなければ……
そしてあの日、フローラにまたシエナとの事を言われ頭にきた僕は、
「フローラしつこいよ。僕とシエナは何もないって前にも説明したよね?いい加減にしてくれないか?」
その時の僕はもうフローラに対して嫌悪感しかなかったから、その態度を隠しもせず、フローラに対して今まで以上に冷たい態度で言い放った。
これ以上追いかけられるのも面倒臭いし、フローラの傷ついたような顔を見るのも嫌で言いたい事だけ言ってシエナが待ついつもの場所へ向かった。
その結果どうなるかも分からずに……
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